※本記事は、アース製薬株式会社の有価証券報告書(第102期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アース製薬ってどんな会社?
虫ケア用品や日用品の製造販売、工場や病院向けの総合環境衛生管理サービスを提供しています。
■(1) 会社概要
1925年8月に木村製薬所として設立され、1964年にアース製薬に商号変更しました。1970年には大塚グループが資本参加しています。2005年に東京証券取引所市場第二部に上場し、翌年第一部銘柄に指定されました。その後、2012年にバスクリン、2014年に白元アースを子会社化するなど事業を拡大しています。
現在の従業員数は連結で4,963名、単体で1,401名です。筆頭株主は事業会社の大塚製薬で、第2位は同じく事業会社の大塚製薬工場、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大塚製薬 | 10.06% |
| 大塚製薬工場 | 8.91% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.69% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性4名の計12名で構成され、女性役員比率は33.3%です。
代表取締役社長 CEO(兼)グループ各社取締役会長は川端克宜氏が務めています。
社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 川端 克宜 | 代表取締役社長 CEO(兼)グループ各社取締役会長 | 1994年同社入社。取締役ガーデニング戦略本部本部長等を経て2014年より代表取締役社長。バスクリンや白元アース等の取締役会長も歴任し、2021年より現職。 |
| 降矢 良幸 | 取締役 副社長執行役員 | 1985年同社入社。営業本部本部長、常務取締役、取締役専務執行役員社長補佐、取締役社長補佐執行役員経営全般担当等を歴任し、2024年より現職。 |
| 大塚 達也 | 取締役会長 | 1986年大塚製薬入社後、1990年同社入社。常務取締役、代表取締役専務取締役を経て1998年に代表取締役社長に就任。2014年より現職。 |
| 唐瀧 久明 | 取締役 最上執行役員管理部門担当 | 1979年同社入社。取締役中国総代表、管理本部本部長、常務執行役員などを経て、2023年より取締役最上執行役員。2024年より現職。 |
| 社方 雄 | 取締役 最上執行役員営業本部本部長 | 九州産業交通や久光製薬を経て2021年同社入社。常務執行役員営業本部本部長、最上執行役員セールス・マーケティング部門担当等を歴任し、2024年10月より現職。 |
社外取締役は、ハロルド・ジョージ・メイ(元タカラトミー社長)、三上直子(元シーボン副社長)、ジャーマン・ルース マリー(ジャーマン・インターナショナル社長)、岡俊子(元アビームM&Aコンサルティング社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「家庭用品事業」および「総合環境衛生事業」を展開しています。
■家庭用品事業
同事業は、虫ケア用品をはじめ、洗口液や入浴剤などの日用品、園芸用品、ペット用品などの製造販売を行っています。国内市場だけでなく、中国やASEAN諸国を中心とした海外市場でも積極的な事業展開を進めており、顧客の健康と快適な生活空間の向上に貢献する幅広い製品を提供しています。
収益は、主に一般消費者向け製品の販売代金から得ています。事業の運営は、同社を中心に、入浴剤等を手掛けるバスクリン、衣類用防虫剤等を扱う白元アース、ペット用品を扱うアース・ペットなどの国内グループ会社のほか、タイや中国、ベトナムなどの海外現地法人が担っています。
■総合環境衛生事業
同事業は、食品や医薬品の製造工場、病院、大規模建造物などを対象に、異物混入や汚染を未然に防ぐ総合環境衛生管理サービスを提供しています。防虫・防鼠、清掃、消毒のほか、各種異物検定や微生物検査、品質保証体制の構築に向けたコンサルティング、教育訓練など、専門性の高いサービスを展開しています。
収益は、法人顧客からの環境衛生管理の業務委託費や、コンサルティング料、検査・検定の手数料、Webラーニングサービスの利用料などから得ています。当事業の運営は主に子会社であるアース環境サービスが担い、顧客の品質保証活動をトータルでサポートしています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一時的な増減があるものの全体として拡大傾向にあり、当期は過去最高水準を記録しています。利益面では原材料価格の高騰などの影響を受けた時期もありましたが、価格改定や高付加価値品の販売増などが奏功し、当期は経常利益、当期利益ともに大幅な回復を見せています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,038億円 | 1,523億円 | 1,583億円 | 1,693億円 | 1,792億円 |
| 経常利益 | 114億円 | 81億円 | 68億円 | 74億円 | 89億円 |
| 利益率(%) | 5.6% | 5.3% | 4.3% | 4.4% | 5.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 71億円 | 53億円 | 41億円 | 35億円 | 52億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で堅調に増加しており、それに伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率も改善傾向にあり、価格改定や製品ミックスの良化が寄与していることが伺えます。営業利益は前年を大きく上回る水準を確保し、営業利益率も上昇するなど、収益性の向上が確認できる推移となっています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,693億円 | 1,792億円 |
| 売上総利益 | 690億円 | 747億円 |
| 売上総利益率(%) | 40.7% | 41.7% |
| 営業利益 | 64億円 | 81億円 |
| 営業利益率(%) | 3.8% | 4.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が212億円(構成比32%)、広告宣伝費が99億円(同15%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の家庭用品事業は、虫ケア用品やリニューアルした口腔衛生用品が好調に推移し、海外展開も貢献して増収増益となりました。総合環境衛生事業は、衛生管理ニーズの高まりによる契約拡大が寄与し、人件費等のコスト増をこなしつつ着実な増収増益を確保しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 家庭用品事業 | 1,376億円 | 1,453億円 | 50億円 | 65億円 | 4.5% |
| 総合環境衛生事業 | 317億円 | 339億円 | 15億円 | 15億円 | 4.4% |
| 連結(合計) | 1,693億円 | 1,792億円 | 64億円 | 81億円 | 4.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業となっています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 140億円 | 108億円 |
| 投資CF | -53億円 | -38億円 |
| 財務CF | -99億円 | -10億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「生命と暮らしに寄り添い、地球との共生を実現する。」という経営理念を掲げています。人々の健康と快適な生活の実現に真摯に向き合い、高品質な商品を提供し続けることで、社会と共に着実な成長を遂げることを目指しています。
■(2) 企業文化
経営理念の実現に向け、行動様式(アースポリシー)として「お客様目線による市場創造」「熱意・創意・誠意」「すぐやる・必ずやる・最後までやる」を定めています。また、価値観(アースバリュー)として「全員参画」「コミュニケーション」「人がすべて」を掲げ、多様な人材の活躍を支える組織文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年を最終年度とする中期経営計画「Act For SMILE COMPASS 2026」において、グループ再編などの構造改革に焦点を当て、収益性の改善に取り組んでいます。次期中期経営計画に向けても、持続的な成長と資本効率の改善を目指しています。
・売上高1,700億円
・営業利益70億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「ブランド・品目の選択と集中」や「ブランド価値の向上」による収益構造の改善を進めています。また、成長ドライバーとして海外展開を位置付け、ASEANや中国での積極展開と輸出事業の拡大を推進しています。総合環境衛生事業では、デジタル活用や組織強化による高付加価値化を図り、専門知識と技術力によるサービス向上に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人がすべて」という考えのもと、従業員を会社発展の原動力と位置づけています。「アース人財理念」に基づき、多様な人材が活躍できる職場環境の整備と、自律的なキャリア形成の支援に注力しています。健康経営を推進し、個々の成長を支援する教育研修や人事制度の整備を通じて、経営戦略の実現に必要な人材の確保と育成を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 42.3歳 | 13.6年 | 7,714,374円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.6% |
| 男性育児休業取得率 | 91.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.0% |
| 男女賃金差異(正規) | 67.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 78.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定期健康診断有所見率(32.1%)、プレゼンティーイズムによる生産性損失割合(19.5%)、有給休暇取得率(76.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 業績の季節性
同社の主力である虫ケア用品の需要期は主に4月〜8月に集中しており、売上高の大部分がこの期間に偏重しています。そのため、当該期の天候不順等により市場規模が縮小した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外展開におけるリスク
アジア地域を中心に積極的な海外展開を進めていますが、現地の法規制、政治経済情勢の変化、為替相場の変動などが計画の進捗に影響を与える可能性があります。特に、在外子会社の業績は円換算時の為替レートにより大きく変動するリスクがあります。
■(3) M&A等の実施による影響
事業領域や展開エリアの拡大を目的にM&Aを積極的に推進していますが、買収後に想定外の事象や環境変化が発生し、期待したシナジーや成果が得られない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 品質に関するリスク
医薬品や医薬部外品などを取り扱っており、高い品質管理水準が求められます。万一、製品不良や想定外の製品事故が発生した場合、ブランドイメージや社会的信用の低下を招き、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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