ヤマハ発動機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヤマハ発動機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するヤマハ発動機は、二輪車を中心としたランドモビリティや、船外機などのマリン事業をグローバルに展開しています。直近の連結業績では、マリン事業やアウトドアランドビークル事業の需要減少などの影響を受け、売上収益が減少するとともに営業利益も減益となりました。


※本記事は、ヤマハ発動機株式会社の有価証券報告書(第91期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ヤマハ発動機ってどんな会社?


二輪車や船外機をはじめとする多様なモビリティ製品を世界中で展開する輸送用機器メーカーです。

(1) 会社概要


1955年に日本楽器製造から分離独立し、ヤマハ発動機として発足しました。1961年の上場後、二輪車の製造を主軸に成長し、船外機や電動アシスト自転車など多角的に事業を拡大しています。2025年にはドイツ企業の自転車用ドライブユニット事業を買収し、電動化やロボティクス領域の強化も推進しています。

同社グループの従業員数は連結で55,176名、単体で12,082名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主の日本マスタートラスト信託銀行や第2位の日本カストディ銀行といった資産管理業務を行う信託銀行のほか、第3位には海外の機関投資家が名を連ねており、機関投資家の持株比率が高いことが特徴です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 17.83%
日本カストディ銀行(信託口) 5.06%
NORTHERN TRUST CO.(AVFC) RE SILCHESTER INTERNATIONAL INVESTORS INTERNATIONAL VALUE EQUITY TRUST 3.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性5名の計14名で構成され、女性役員比率は35.7%です。代表取締役社長 社長執行役員 CEOは設楽元文氏が務めています。取締役9名のうち5名が社外取締役であり、過半数を占めています。

氏名 役職 主な経歴
設楽 元文 代表取締役社長社長執行役員CEOコーポレート管掌管掌領域:ブランド、経営戦略、人事総務、リスク・コンプライアンス・法務・知財、企画・財務 1986年同社入社。マリン事業本部ME事業部長等を経て、インド子会社社長などを歴任。副社長執行役員CFOを経て、2025年より現職。
渡部 克明 取締役会長 1982年同社入社。ベトナム子会社社長や生産本部長などを歴任し、2018年に代表取締役副社長執行役員に就任。2025年より現職。
丸山 平二 取締役常務執行役員 1986年同社入社。AM事業部長などを歴任し、2019年にパワートレインユニット長および上席執行役員に就任。2023年より現職。
松山 智彦 取締役上席執行役員 1986年同社入社。ビークル&ソリューション事業本部RV事業部長や生産本部長などを歴任。2019年に上席執行役員に就任し、2022年より現職。


社外取締役は、田代祐子(元アコーディア・ゴルフ社長CEO)、大橋徹二(元小松製作所社長CEO)、Jin Song Montesano(LIXIL代表執行役専務)、増井敬二(元トヨタ車体社長)、Sarah L. Casanova(元日本マクドナルド社長CEO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ランドモビリティ」「マリン」「アウトドアランドビークル」「ロボティクス」「金融サービス」および「その他」事業を展開しています。

ランドモビリティ


二輪車や電動アシスト自転車、電動車椅子、自動車用エンジンなどを提供しています。主な顧客は一般消費者や自動車メーカーであり、グローバル市場に向けて多様なモビリティ製品を展開しています。

製品の販売による収益を主な収入源としています。事業の運営は同社が行うほか、海外子会社であるPT.Yamaha Indonesia Motor ManufacturingやYamaha Motor Europe N.V.などが製造・販売を担っています。

マリン


船外機やウォータービークル、ボート、漁船・和船などを提供しています。レジャー用途の個人顧客から、漁業などの業務用途の法人顧客まで、海に関わる幅広い顧客層に向けて製品を展開しています。

製品の販売収益を主な収入源としています。国内では同社やヤマハマリンなどが製造・販売を行い、海外ではYamaha Motor Corporation, U.S.A.などの子会社が製造・販売を行っています。

アウトドアランドビークル


四輪バギーやレクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル、ゴルフカーなどを提供しています。アウトドアレジャーを楽しむ個人顧客や、ゴルフ場などの法人顧客を対象に製品を展開しています。

製品の販売収益を主な収入源としています。国内ではヤマハモーターパワープロダクツが製造・販売を担い、海外では主に米国のYamaha Motor Manufacturing Corporation of Americaが製造し、各地域の子会社を通じて販売しています。

ロボティクス


サーフェスマウンターや半導体製造後工程装置、産業用ロボット、産業用無人ヘリコプターなどを提供しています。主に電子部品実装や半導体製造を行うメーカー、および農業分野などの法人顧客を対象としています。

産業用機器の販売による収益を主な収入源としています。事業の運営は同社が行うほか、子会社のヤマハロボティクスやその海外子会社などが製品の製造・販売を担っています。

金融サービス


同社製品の販売をサポートするため、一般消費者や販売ディーラーに対して販売金融およびリースサービスを提供しています。モビリティ製品の購入資金を必要とする顧客が対象です。

割賦契約やリース契約に基づく利息収入やリース料を主な収益源としています。事業の運営は、主に海外子会社であるYamaha Motor Finance Corporationなどが担っています。

その他


発電機や除雪機などのパワープロダクツ製品のほか、インドやアフリカ等でのモビリティサービスを提供しています。一般消費者や生活インフラを必要とする地域の顧客が対象です。

製品の販売収益やモビリティサービスの提供による手数料を主な収入源としています。国内ではヤマハモーターパワープロダクツが、海外では米国や欧州の販売子会社などを通じて運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近3期間の連結業績を見ると、売上収益は2兆4,000億円から2兆5,000億円台で推移していますが、当期は一部市場での需要減少や為替の変動等の影響により減収となりました。利益面でも、調達コストの上昇や販売費及び一般管理費の増加、事業環境の悪化による固定資産の減損損失計上などが影響し、税引前利益および当期利益は連続して減少する傾向にあります。

項目 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 24,148億円 25,762億円 25,342億円
税引前利益 2,361億円 1,832億円 1,332億円
利益率(%) 9.8% 7.1% 5.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 1,584億円 1,081億円 161億円

(2) 損益計算書


当期の売上収益は前期から微減となり、売上総利益もあわせて減少しました。利益率に大きな変化はないものの、研究開発費や人件費の増加、固定資産の減損損失の計上などにより営業利益は大きく減少し、営業利益率も低下しました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 25,762億円 25,342億円
売上総利益 8,220億円 7,845億円
売上総利益率(%) 31.9% 31.0%
営業利益 1,815億円 1,264億円
営業利益率(%) 7.0% 5.0%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が1,628億円(構成比24%)、業務委託料が431億円(同6%)、給料・賃金・手当が265億円(同4%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のランドモビリティ事業は新興国での販売増や価格改定効果により増収増益となりました。一方、マリン事業やアウトドアランドビークル事業は北米市場での需要低迷や関税の影響により減収減益となりました。金融サービス事業は債権残高の増加により増収を確保しましたが、金利スワップの評価損等により減益となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
ランドモビリティ 16,096億円 16,151億円 1,038億円 1,087億円 6.7%
マリン 5,377億円 5,276億円 878億円 536億円 10.2%
アウトドアランドビークル 1,795億円 1,485億円 -174億円 -398億円 -26.8%
ロボティクス 1,133億円 1,115億円 -30億円 -6億円 -0.5%
金融サービス 1,122億円 1,140億円 227億円 211億円 18.5%
その他 798億円 765億円 -124億円 -166億円 -21.7%
調整額 -559億円 -591億円 - - -
連結(合計) 25,762億円 25,342億円 1,815億円 1,264億円 5.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ資金で投資を行い、さらに借入金の返済や株主還元を進めている「健全型」の状態です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 1,768億円 1,386億円
投資CF -1,287億円 -861億円
財務CF -46億円 -304億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.4%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も39.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、企業目的として「感動創造企業」を掲げています。「世界の人々に新たな感動と豊かな生活を提供する」ことを目指し、「新しく独創性ある発想・発信」「お客様の悦び・信頼感を得る技術」「洗練された躍動感を表現する魅力あるデザイン」を追求する「ヤマハ発動機らしいモノ創り」に挑戦し続けています。

(2) 企業文化


同社は、経営理念の中で「顧客の期待を超える価値の創造」「仕事をする自分に誇りが持てる企業風土の実現」「社会的責任のグローバルな遂行」という基本姿勢を示しています。また、「Challenge & Growth 多様な社員にチャレンジの機会を!ヤマハ発動機らしいチャレンジで個人と会社の成長を!」というミッションの下、社員の挑戦を後押しする風土を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2030年に向けた長期ビジョン「ART for Human Possibilities~人はもっと幸せになれる~」を掲げ、2025年からの中期経営計画をスタートさせています。資本コスト以上のリターンを継続的に創出することを目標としており、財務指標として以下の水準を目指しています。

- ROE:14%水準(3年平均)
- ROIC:8%水準(3年平均)
- ROA:9%水準(3年平均)

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「コア事業の競争力を高め、人の可能性を拡げる新技術を獲得し、人の悦びと環境が共生する社会をヤマハ発動機らしい挑戦で実現する」ことを基本方針としています。ポートフォリオ戦略として、コア事業、戦略事業、新規事業の3領域を定め、経営資源の最適配分と収益基盤の強化を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業の発展と「感動創造企業」の実現のため、「自己価値向上に努力する自立・自律型の人財」「チームワークを大切にした行動ができる人財」「ヤマハブランドの価値を高められる人財」を求める人財像として定めています。多様な社員がチャレンジの機会を得て、個人と会社が共に成長できる組織づくりと人財のグローバル活用を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 42.7歳 18.1年 8,347,789円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.7%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 73.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 73.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 100.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(14.0%)、労働災害休業度数率(0.39人)、エンゲージメントスコア(65%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場における競争環境変化リスク


同社が事業を展開する多くの市場において激しい競争環境にさらされており、有利な価格決定が困難になる状況が生じる可能性があります。とくに市場低迷時には利益確保の圧力となり、競争力のある新製品が計画通りに販売できない場合、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 海外事業展開・為替変動リスク


同社の売上収益に占める海外比率は約90%に達しており、各国の輸出入規制の改廃や関税の変更、地政学リスクの影響を強く受けます。また、世界各国での生産・販売にともなう外貨建取引が多いため、為替レートの変動が同社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

(3) 製品品質・リコール関連リスク


グローバルな品質保証体制の下で製品を製造していますが、法令や顧客の安心感の観点からリコール等の市場処置を実施する可能性があります。大規模なリコールが発生した場合や、製造物責任等の訴訟で不利な判断がなされ多額の費用や損害賠償責任が生じた場合、業績に悪影響を及ぼすおそれがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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