ヤマハ発動機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヤマハ発動機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、ランドモビリティやマリン、ロボティクス、金融サービス等の多様な事業をグローバルに展開する企業です。直近の連結業績では、主力のランドモビリティ事業は堅調に推移したものの、一部事業での需要減やコスト増等の影響を受け、売上収益と営業利益ともに減少する減収減益となっています。


※本記事は、ヤマハ発動機株式会社の有価証券報告書(第91期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年4月8日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ヤマハ発動機ってどんな会社?


ランドモビリティをはじめとする多様な事業をグローバルに展開する輸送用機器メーカーです。

(1) 会社概要


1955年に日本楽器製造より分離独立して発足し、二輪車の生産販売を開始しました。1961年に東京証券取引所第一部に上場し、その後は米国や台湾などに製造・販売拠点を設立してグローバル展開を進めました。1993年には電動アシスト自転車の販売を開始し、近年はロボティクス事業等の領域も拡大しています。

現在の従業員数は連結で55,176名、単体で12,082名となっています。同社の大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行であり、第2位および第3位の株主についても同様に資産管理業務等を行う金融機関や信託関連企業が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 17.83%
日本カストディ銀行(信託口) 5.06%
NORTHERN TRUST CO. (AVFC) RE SILCHESTER INTERNATIONAL INVESTORS INTERNATIONAL VALUE EQUITY TRUST 3.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性5名の計14名で構成され、女性役員比率は35.7%です。代表取締役社長 社長執行役員CEOは設楽元文氏が務めています。取締役14名のうち、社外取締役の比率は35.7%です。

氏名 役職 主な経歴
設楽 元文 代表取締役社長 社長執行役員CEO 1986年同社入社。マリン事業本部ME事業部長などを経て、2025年3月より現職。
渡部 克明 取締役会長 1982年同社入社。生産本部長や代表取締役副社長執行役員を経て、2025年3月より現職。
丸山 平二 取締役常務執行役員 1986年同社入社。AM事業部長や技術・研究本部長などを経て、2023年3月より現職。
松山 智彦 取締役上席執行役員 1986年同社入社。生産本部長などを経て、2022年3月より現職。


社外取締役は、田代祐子(元アコーディア・ゴルフ社長)、大橋徹二(元小松製作所社長)、JinSongMontesano(LIXIL執行役専務)、増井敬二(元トヨタ車体社長)、Sarah L. Casanova(元日本マクドナルド社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、5つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

(1) ランドモビリティ事業


二輪車や電動アシスト自転車、電動車椅子、自動車用エンジンなどの多様なモビリティ関連製品を提供しています。一般の個人消費者から企業まで、国内外の幅広い層が顧客となります。

製品の販売収益が主な収益源です。運営は同社のほか、国内外の多数の製造子会社が担い、国内の販売は主にヤマハ発動機販売が行っています。

(2) マリン事業


船外機やウォータービークル、ボート、漁船・和船などを提供しています。レジャー用途で海を楽しむ個人顧客のほか、漁業などに従事する法人顧客が主な対象となります。

製品の販売収益が主な収益源です。船外機などは同社やヤマハマリンが製造し、国内外の市場への販売は同社や欧米の現地販売子会社を通じて行っています。

(3) アウトドアランドビークル事業


四輪バギーやレクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル、ゴルフカーなどの製品を提供しています。レジャーやスポーツを楽しむ個人顧客や、ゴルフ場を運営する企業などが主な顧客です。

製品の販売収益が主な収益源です。米国子会社やヤマハモーターパワープロダクツが製造を担い、国内外の販売子会社を通じて市場へ提供しています。

(4) ロボティクス事業


サーフェスマウンターや半導体製造後工程装置、産業用ロボット、産業用無人ヘリコプターなどを提供しています。製造業や農業に従事する法人企業が主な顧客となります。

製品の販売や関連サービスによる収益が主な収益源です。同社のほかヤマハロボティクスなどが製造し、同社および国内外の子会社を通じて販売しています。

(5) 金融サービス事業


同社グループの製品購入を希望する個人顧客や、製品を仕入れるディーラー向けに、販売金融およびリースなどのサービスを提供しています。

顧客やディーラーからの利息収益やリース料が主な収益源です。運営は主に米国のYamaha Motor Finance Corporationをはじめとする海外子会社が行っています。

(6) その他の事業


発電機、汎用エンジン、除雪機などの製品販売のほか、モビリティサービスの提供を行っています。個人消費者から法人まで多様な顧客に向けた事業を展開しています。

製品販売やサービス提供に伴う収益が主な収益源です。国内ではヤマハモーターパワープロダクツが、海外では主に米国や欧州の販売子会社が運営を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近3期の業績は、2024年12月期に売上収益がピークを迎えたものの、その後はわずかながら減収に転じています。税引前利益および当期利益についても2023年12月期から連続して減少しており、利益率も5.3%まで低下するなど、収益性の面で課題が見受けられます。

項目 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 24,148億円 25,762億円 25,342億円
税引前利益 2,361億円 1,832億円 1,332億円
利益率(%) 9.8% 7.1% 5.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 1,584億円 1,081億円 161億円

(2) 損益計算書


直近2期の売上収益はわずかに減少していますが、売上総利益は微増しており、売上総利益率は改善傾向にあります。一方で営業利益は大きく減少し、営業利益率も低下しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 25,762億円 25,342億円
売上総利益 2,843億円 2,846億円
売上総利益率(%) 11.0% 11.2%
営業利益 1,815億円 1,264億円
営業利益率(%) 7.0% 5.0%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が1,628億円(構成比54%)、業務委託料が431億円(同14%)、給料・賃金・手当が265億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


売上収益の過半を占めるランドモビリティ事業は堅調に推移し、前期の売上水準を維持しています。一方、アウトドアランドビークル事業が大きく減収となったほか、マリン事業なども減収となり、全体としてわずかに減収となりました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
ランドモビリティ 16,096億円 16,151億円
マリン 5,377億円 5,276億円
アウトドアランドビークル 1,795億円 1,485億円
ロボティクス 1,133億円 1,115億円
金融サービス 1,122億円 1,140億円
その他 798億円 765億円
調整額 -559億円 -591億円
連結(合計) 25,762億円 25,342億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは「健全型」です。営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良な状態を示しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 1,768億円 1,386億円
投資CF -1,287億円 -861億円
財務CF -464億円 -304億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「感動創造企業」を企業目的に掲げ、世界の人々に新たな感動と豊かな生活を提供することを目指しています。「ART for Human Possibilities~人はもっと幸せになれる~」という長期ビジョンに向け、人間の論理と感性を織り合わせる技術により、個性的かつ高品質な製品・サービスを提供することで持続的な成長と企業価値の向上を図ります。

(2) 企業文化


「新しく独創性ある発想・発信」「お客様の悦び・信頼感を得る技術」「洗練された躍動感を表現する魅力あるデザイン」「お客様と生涯にわたり結びつく力」を目指す「ヤマハ発動機らしいモノ創り」に挑戦し続ける文化を重視しています。また、社員一人ひとりが多様性を尊重し、ワクワクしながら失敗を恐れずに高い目標へチャレンジできる風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2025年からの3年間の中期経営計画では、ポートフォリオ経営を推進し、持続的な成長と収益性の両立を目指しています。財務目標として、資本コストを意識した経営を実行し、以下の指標を目標として掲げています。

・ROE 14%水準(3年平均)
・ROIC 8%水準(3年平均)
・ROA 9%水準(3年平均)
・総還元性向 40%以上(累計)

(4) 成長戦略と重点施策


コア事業である二輪車・マリン事業への重点的な投資で競争力を再強化し、成長と収益性を両立させます。また、戦略事業としてロボティクス、電動アシスト自転車、アウトドアランドビークル事業の収益基盤を強化します。さらに、新規事業としてモビリティサービスや農業領域への投資を進めるとともに、カーボンニュートラルの推進や人的資本への投資を通じたサステナビリティ経営を実践します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「Challenge & Growth 多様な社員にチャレンジの機会を!ヤマハ発動機らしいチャレンジで個人と会社の成長を!」をミッションに掲げ、社員の挑戦と成長を後押ししています。グローバル経営を牽引する次世代リーダーの育成や、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)を推進し、多様な人材がその個性を最大限に発揮できる組織づくりに注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 42.7歳 18.1年 8,347,789円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.7%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 73.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 73.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 100.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、グローバルエンゲージメントスコア(82.4%)、従業員一人当たり研修時間(23.5時間)、従業員一人当たり研修費用(198,000円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済環境変化リスク


事業を展開する多くの市場における激しい競争環境の変化や、世界各国での生産・販売に伴う為替レートの変動、金利や資金調達環境の悪化が、同社の業績や財政状態に影響を与える可能性があります。高付加価値モデルへの注力や為替ヘッジの実施などにより、リスクの低減に努めています。

(2) 海外事業展開リスク


売上収益の約90%を海外が占めるため、展開する国や地域における予期せぬ輸出入規制の変更、不利な税制・関税の改定、地政学リスクなどの外的要因が業績に影響を及ぼすリスクがあります。国際情勢や法規制の動向を定常的に把握し、適切な対応策や管理体制の構築を進めています。

(3) 特定の顧客・マーケットへの依存リスク


二輪車などの消費者向け製品に加え、顧客企業に対して自動車用エンジンなどを供給しており、これらの売上は顧客企業の経営方針や調達方針に影響される可能性があります。新規商材の開発や顧客基盤の拡大を積極的に進め、特定の顧客に過度に依存しない供給体制の構築を目指しています。

(4) 製品品質・リコール関連リスク


世界各国の工場で製品を製造していますが、法律や規制、安全性の観点から大規模なリコール等の市場措置を実施した場合や、製造物責任等の訴訟が発生した場合、多額の費用や損害賠償責任が生じ、ブランドイメージや業績に悪影響を及ぼす可能性があります。品質マネジメントシステムの運用により再発防止に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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