サントリー食品インターナショナル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サントリー食品インターナショナル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サントリー食品インターナショナルは東京証券取引所プライム市場に上場し、飲料・食品セグメントの中核として国内外でミネラルウォーターやコーヒー、茶系飲料を展開しています。直近の業績は価格改定や欧州等での販売が寄与し売上収益が増加した一方、原材料高等のコスト増や海外の一部低迷の影響を受け、増収減益となっています。


※本記事は、サントリー食品インターナショナルの有価証券報告書(第17期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. サントリー食品インターナショナルってどんな会社?


サントリーグループの飲料・食品事業を担い、グローバルに清涼飲料等の製造・販売を展開しています。

(1) 会社概要


1899年創業の鳥井商店を母体とし、2009年にサントリーの飲料・食品事業を承継して設立されました。同年からオセアニアや欧州の飲料企業を次々と子会社化し、グローバル展開を加速させました。2013年に東京証券取引所第一部に株式を上場し、国内外で積極的な事業拡大とブランド育成を推進しています。

連結従業員数は22,700名、単体では534名が在籍しています。筆頭株主は親会社であるサントリーホールディングスで、第2位および第3位は資産管理業務等を行う金融機関や信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
サントリーホールディングス 59.48%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.19%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 510312 2.23%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性4名の計8名で構成され、女性役員比率は50.0%です。代表取締役社長は小野真紀子氏が務め、社外取締役比率は37.5%となっています。

氏名 役職 主な経歴
小野真紀子 代表取締役社長取締役会議長経営全般 1982年サントリー入社。海外事業部部長、グローバル人事部長、欧州子会社CEO等を歴任し、2023年3月より現職。
内貴八郎 取締役専務執行役員SBFジャパン社長 1979年サントリーフーズ入社。営業統括本部長、代表取締役社長等を経て、2023年3月より現職。
Peter Harding 取締役 2009年GlaxoSmithKline plcのSVP等を歴任。2014年欧州子会社COOを経て、2021年3月より現職。
宮永暢 取締役 1989年サントリー入社。グローバル事業推進部長やBeam Suntory Inc.取締役等を歴任し、2025年3月より現職。
神田秀樹 取締役(常勤監査等委員) 1987年サントリー入社。人事部長、サントリースピリッツ代表取締役社長等を経て、2024年3月より現職。


社外取締役は、中村真紀(まんま代表取締役社長)、増山美佳(増山&Company代表社員社長)、三村まり子(西村あさひ法律事務所・外国法共同事業弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本事業」「アジアパシフィック事業」「欧州事業」「米州事業」を展開しています。

日本事業


国内において、ミネラルウォーター、コーヒー飲料、茶系飲料、炭酸飲料、スポーツ飲料、特定保健用食品等の製造・販売を行っています。幅広い商品ラインナップを展開し、スーパーやコンビニエンスストア、自動販売機等を通じて多様な消費者のニーズに応える清涼飲料水を提供しています。

飲料の販売を通じた代金が主な収益源です。マーケティングおよび商品企画はサントリー食品インターナショナルが担い、製造はサントリープロダクツが行っています。また、販売についてはサントリーフーズやサントリービバレッジソリューションなどが各チャネルでの販売機能を担っています。

アジアパシフィック事業


タイを含む東南アジア、台湾等で健康食品「BRAND'S Essence of Chicken」シリーズを製造・販売するほか、ベトナムやタイでのエナジードリンクや炭酸飲料、オセアニア地域での清涼飲料など、各地域の特性に合わせた幅広い製品を提供しています。

現地市場での健康食品や飲料の販売代金が収益源となります。事業運営は、タイにおけるSuntory Beverage & Food International (Thailand) Co., Ltd.や、ベトナムのSuntory PepsiCo Vietnam Beverage Co., Ltd.など、各地の子会社が行っています。

欧州事業


フランス、英国、スペインを含む欧州を中心に、炭酸飲料「Orangina」「Schweppes」や果汁飲料「Oasis」「Ribena」、エナジードリンク「Lucozade」などの製造・販売を行っています。

各種飲料ブランドの販売による代金が収益の柱となります。事業の運営は、Orangina Schweppes Holding B.V.およびその子会社や、Lucozade Ribena Suntory Limitedおよびその子会社が主力製品の製造・販売を担っています。

米州事業


北米地域において、ノースカロライナ州を中心に清涼飲料の製造および販売を展開しています。炭酸カテゴリーの強化とともに、成長分野である非炭酸カテゴリーの需要拡大にも取り組んでいます。

清涼飲料製品の販売による代金が主な収益源です。事業の運営は、Pepsi Bottling Ventures LLCおよびその子会社が担い、現地市場における製造・販売機能を提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は直近5年間で継続して拡大し、順調なトップライン成長を記録しています。一方、税引前利益はコスト環境の変化等の影響により増減を伴いながら推移しており、直近の期では増収ながら減益となっています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 1兆2689億円 1兆4504億円 1兆5917億円 1兆6968億円 1兆7154億円
税引前利益 1171億円 1393億円 1418億円 1610億円 1470億円
利益率(%) 9.2% 9.6% 8.9% 9.5% 8.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 687億円 823億円 827億円 935億円 887億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期比で微増となったものの、営業利益は減少しています。コストの上昇や事業環境の変化が影響し、営業利益率も低下傾向にあります。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 1兆6968億円 1兆7154億円
売上総利益 1085億円 1129億円
売上総利益率(%) 6.4% 6.6%
営業利益 1602億円 1487億円
営業利益率(%) 9.4% 8.7%


販売費及び一般管理費のうち、支払ロイヤリティが250億円(構成比29.7%)、広告宣伝及び販売促進費が233億円(同27.6%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本事業や欧州事業等で増収を記録した一方で、各セグメントにおいてコスト上昇圧力等の影響を受け、欧州事業を除きセグメント利益は減少しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
日本事業 7319億円 7353億円 491億円 470億円 6.4%
アジアパシフィック事業 4021億円 3941億円 454億円 425億円 10.8%
欧州事業 3693億円 3908億円 604億円 616億円 15.8%
米州事業 1948億円 1960億円 237億円 235億円 12.0%
調整額 -13億円 -6億円 -183億円 -258億円 -
連結(合計) 1兆6968億円 1兆7154億円 1602億円 1487億円 8.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得た資金内で投資と借入金の返済を賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.2%で市場平均を上回っています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 1937億円 1593億円
投資CF -1013億円 -888億円
財務CF -1120億円 -840億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「わたしたちの目的 / Our Purpose」として「人と自然と響きあい、豊かな生活文化を創造し、『人間の生命(いのち)の輝き』をめざす。」を掲げています。また、真のグローバル飲料企業として“質の高い成長”を実現するため、普遍的な同社グループらしさを「わたしたちのDNA / Who We Are」と定義し、「生活者の喜怒哀楽に寄り添い、潤い豊かな人生を提供します」としています。

(2) 企業文化


目的を実現するためにすべての従業員が大切にすべき価値観として、「わたしたちの価値観 / Our Values」を定義しています。具体的には、「Growing for Good」「やってみなはれ」「利益三分主義」という3つの価値観を掲げ、これらを共有・実践することで、事業の目的や企業として目指す方向性に向かって進む組織風土を形成しています。

(3) 経営計画・目標


2030年に売上2.5兆円を目指しています。また、2026年までの目標として以下の数値目標を掲げています。
- 売上収益:平均年率1桁台半ばの成長
- 営業利益:平均年率1桁台後半の成長
- 営業利益率:2026年までに10%超
- フリーキャッシュフロー:2026年に1,400億円強創出
- 配当方針:目標配当性向40%以上

(4) 成長戦略と重点施策


不確実性の高い外部環境や厳しい競争環境が継続すると想定し、「新たな価値創造(イノベーション)」と「事業変革(トランスフォーメーション)」の加速を通じて売上収益の成長を図ります。ブランド戦略としてコアブランドイノベーションを強化するほか、日本や海外での構造改革を通じた収益力強化、ダイバーシティ推進や環境・社会課題への取り組みを重点項目として展開していきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人」こそが経営の最も重要な基盤であるという「人本(じんぽん)主義」に基づき、従業員一人ひとりがやりがいを持って働き、成長し続けることを目指しています。人財育成を中長期的な視点で捉え、すべての従業員が自ら挑戦しやりぬく「キャリアオーナー」となるよう支援するほか、ダイバーシティ推進や健康経営を通じた多様な個性が活躍できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 40.1歳 15.0年 11,708,279円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.1%
男性育児休業取得率 105.7%
男女賃金差異(全労働者) 73.0%
男女賃金差異(正規雇用) 73.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 162.2%


また、同社は「人的資本」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、再検査・精密検査受診率(96.5%)、プレゼンティーイズム(76.6%)、当社グループで働く誇りについての好意的回答割合(83%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業計画・事業見通しの不確実性


経済情勢や消費者嗜好の変化、デジタル技術の進化による競争激化などにより、消費者需要を的確に把握した商品供給が遅れた場合、ブランドイメージの悪化や棚卸資産の評価損等が生じ、売上や利益が低下するリスクがあります。また天候不順も販売数量に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 事業提携・資本提携・企業買収の成果


国内外での事業提携や企業買収を成長戦略としていますが、条件の合意に至らない場合や予期した経費削減効果等が得られない可能性があります。また買収に伴い計上したのれんや商標権等の無形資産の価値が低下し、減損損失を計上した場合には、財務状態に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 商品の品質・安全性に関する問題


商品やサービスに対して設定した品質基準が満たされない場合や、安全性に問題が生じた場合、製品の製造中止やリコール、損害賠償請求が発生するリスクがあります。また、根拠のない風評や他社製品の問題に起因する懸念であっても、同社グループのブランドや信用に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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