※本記事は、サントリー食品インターナショナル株式会社 の有価証券報告書(第15期、自 2023年1月1日 至 2023年12月31日、2024年3月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. サントリー食品インターナショナルってどんな会社?
サントリーグループの飲料・食品セグメントの中核企業として、国内外で清涼飲料等の製造・販売を行っています。
■(1) 会社概要
同社は2009年1月に設立され、同年4月にサントリーより飲料・食品事業を承継し事業を開始しました。2011年には商号を現在のサントリー食品インターナショナルに変更し、2013年7月に東京証券取引所市場第一部に上場しました。2014年には英国の「Lucozade」「Ribena」の事業を開始するなど、グローバル展開を加速させています。
2023年12月31日現在、連結従業員数は23,532人、単体従業員数は535人です。筆頭株主は親会社のサントリーホールディングスで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| サントリーホールディングス | 59.48% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.09% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 2.42% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性4名の計9名で構成され、女性役員比率は44.4%です。代表取締役社長は小野 真紀子氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小野 真紀子 | 取締役社長(代表取締役)経営全般 | サントリー入社後、ロンドン支店長、人事部長、サントリー食品フランスCEO、サントリーホールディングス常務執行役員などを経て、2023年3月より現職。 |
| Shekhar Mundlay | 取締役副社長SBF COOオペレーションエクセレンス担当 | ペプシコ・ベトナムCEOなどを経て、Suntory Beverage & Food Asia Pte. Ltd. CEO等を歴任。2024年1月より現職。 |
| 内貴 八郎 | 取締役専務執行役員SBFジャパン社長SBFジャパンイノベーション開発事業部長 | サントリーフーズ入社後、同社代表取締役社長、サントリービバレッジソリューション代表取締役社長等を歴任。2023年9月より現職。 |
| Peter Harding | 取締役SBFインターナショナルCEO | グラクソ・スミスクライン等を経て、Suntory Beverage & Food Europe CEOを歴任。2024年1月より現職。 |
| 宮森 洋 | 取締役 | サントリー入社後、Orangina Schweppes Holdings副社長COO、サントリーホールディングス執行役員等を歴任。2023年3月より現職。 |
| 神田 秀樹 | 取締役(常勤監査等委員) | サントリー入社後、サントリーホールディングス執行役員、サントリースピリッツ代表取締役社長等を歴任。2024年3月より現職。 |
社外取締役は、中村 真紀(サツドラホールディングス取締役CHRO)、増山 美佳(増山&Company代表社員社長)、三村 まり子(元グラクソ・スミスクライン取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本事業」「アジアパシフィック事業」「欧州事業」および「米州事業」を展開しています。
■(1) 日本事業
日本国内において、ミネラルウォーター、コーヒー飲料、茶系飲料、炭酸飲料、スポーツ飲料、特定保健用食品等の製造・販売を行っています。「サントリー天然水」「BOSS」「伊右衛門」「GREEN DA・KA・RA」「特茶」などの主要ブランドを展開しています。
卸売業者や消費者等からの製品販売代金が主な収益源です。清涼飲料事業のマーケティング・商品企画は同社が担い、製造はサントリープロダクツ、販売は主にサントリーフーズおよびサントリービバレッジソリューションが行っています。
■(2) アジアパシフィック事業
ベトナム、タイ、インドネシア、ニュージーランド、オーストラリア等において、清涼飲料や健康食品の製造・販売を行っています。エナジードリンク「Sting」「V」、茶飲料「TEA+」、健康食品「BRAND'S Essence of Chicken」などを展開しています。
製品の販売による収益が主となります。運営は、Suntory Beverage & Food International (Thailand) Co., Ltd.、Suntory PepsiCo Vietnam Beverage Co., Ltd.、FRUCOR SUNTORY NEW ZEALAND LIMITED等の現地子会社が行っています。
■(3) 欧州事業
フランス、英国、スペインを含む欧州等において、炭酸飲料や果汁飲料等の製造・販売を行っています。「Orangina」「Schweppes」「Oasis」「Lucozade」「Ribena」などのブランドを展開しています。
製品の販売による収益が主となります。運営は、Orangina Schweppes Holding B.V.およびLucozade Ribena Suntory Limited等の現地子会社が行っています。
■(4) 米州事業
北米において、ノースカロライナ州を中心に清涼飲料の製造・販売を行っています。炭酸カテゴリーや伸長する非炭酸カテゴリーの製品を展開しています。
製品の販売による収益が主となります。運営は、Pepsi Bottling Ventures LLC等の現地子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は直近5期間で増加傾向にあり、特に直近の2023年12月期は過去最高の1兆5917億円を記録しました。税引前利益も波はあるものの増加基調にあり、当期利益は安定して黒字を計上しています。
| 項目 | 2019年12月期 | 2020年12月期 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 12,994億円 | 11,781億円 | 12,689億円 | 14,504億円 | 15,917億円 |
| 税引前利益 | 1,122億円 | 942億円 | 1,171億円 | 1,393億円 | 1,418億円 |
| 利益率 | 8.6% | 8.0% | 9.2% | 9.6% | 8.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 689億円 | 522億円 | 687億円 | 823億円 | 827億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益の増加に伴い、売上総利益および営業利益も増加しています。原材料高等の影響を受けつつも、コストマネジメントの徹底により営業利益率は前年水準を維持しています。
| 項目 | 2022年12月期 | 2023年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 14,504億円 | 15,917億円 |
| 売上総利益 | 5,525億円 | 5,900億円 |
| 売上総利益率 | 38.1% | 37.1% |
| 営業利益 | 1,397億円 | 1,417億円 |
| 営業利益率 | 9.6% | 8.9% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が1,562億円(構成比35.1%)、広告宣伝及び販売促進費が1,507億円(同33.8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全てのセグメントで増収を達成しています。特に米州事業と欧州事業の増収率が高くなっています。利益面では、日本事業と欧州事業が二桁増益と好調でしたが、アジアパシフィック事業は減益となりました。
| 区分 | 売上(2022年12月期) | 売上(2023年12月期) | 利益(2022年12月期) | 利益(2023年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本事業 | 6,533億円 | 7,082億円 | 334億円 | 405億円 | 5.7% |
| アジアパシフィック事業 | 3,537億円 | 3,714億円 | 577億円 | 431億円 | 11.6% |
| 欧州事業 | 3,004億円 | 3,403億円 | 421億円 | 517億円 | 15.2% |
| 米州事業 | 1,455億円 | 1,729億円 | 182億円 | 210億円 | 12.1% |
| その他・調整額 | -24億円 | -11億円 | 32億円 | -6億円 | - |
| 連結(合計) | 14,504億円 | 15,917億円 | 1,397億円 | 1,417億円 | 8.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。
| 項目 | 2022年12月期 | 2023年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1,505億円 | 1,583億円 |
| 投資CF | -424億円 | -778億円 |
| 財務CF | -922億円 | -1,154億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「わたしたちの目的 / Our Purpose」として「人と自然と響きあい、豊かな生活文化を創造し、『人間の生命(いのち)の輝き』をめざす」を掲げています。これは事業を営む目的や企業として目指す方向性を定義したものです。
■(2) 企業文化
「わたしたちの価値観 / Our Values」として、「Growing for Good」「やってみなはれ」「利益三分主義」を掲げています。また、「わたしたちのDNA / Who We Are」として、生活者の喜怒哀楽に寄り添い、潤い豊かな人生を提供することを定義しています。
■(3) 経営計画・目標
真のグローバル飲料企業として「質の高い成長」を実現し、2030年に売上2.5兆円を目指しています。中期経営計画(2024-2026)では以下の目標を設定しています。
* 売上収益:平均年率1桁台半ばの成長
* 営業利益:平均年率1桁台後半の成長
* 営業利益率:2026年までに10%超
■(4) 成長戦略と重点施策
「既存事業で市場を上回る成長」と「新規成長投資による増分獲得」を目指します。ブランド戦略ではコアブランドのイノベーション強化やグローバルブランドの育成を進め、構造改革として日本での収益力強化や海外での事業成長加速に取り組みます。また、3,000~6,000億円の投資枠を設定し、M&Aや設備投資に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人」こそが経営の最も重要な基盤であるという「人本主義」に基づき、全社員型タレントマネジメントを実践しています。グローバルな事業・職種を跨いだローテーションや、企業内大学「サントリー大学」を通じた能力開発を実施。また、DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を推進し、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2023年12月期 | 41.2歳 | 16.4年 | 11,142,087円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.7% |
| 男性育児休業取得率 | 113.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 62.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 62.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 103.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、再検査・精密検査受診率(90.0%)、当社グループで働く誇りについての好意的回答割合(88%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業計画及び経営戦略に基づくリスク
同社グループは、中期経営戦略の実行・目標達成のために、企業買収や事業提携による規模拡大と既存事業の成長を必要としています。しかし、適切な買収機会の獲得や事業統合、既存事業の成長が計画通りに進まない場合、中期経営戦略を実現できず、経営成績に影響を与える可能性があります。
■(2) 企業買収及び事業提携・資本提携に関するリスク
新たな企業買収や市場参入は成長戦略の重要要素ですが、適切な機会の喪失、条件合意の失敗、資金調達の不調、統合後の予期せぬ課題や利益の未達などの問題が生じる可能性があります。買収等が成功しない場合、中長期的な成長目標を実現できない可能性があります。
■(3) 原材料調達に関するリスク
主要原材料やエネルギーの価格は市場変動の影響を受けやすく、価格上昇は原価を押し上げる要因となります。また、気候変動や自然災害、供給網の混乱等により原材料不足に陥るリスクもあります。価格転嫁が困難な場合や供給が滞る場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 当社商品の安全性に関するリスク
飲料・食品メーカーとして安全性を最重視していますが、万が一、品質基準を満たさない商品や安全性の問題が発生した場合、リコールや損害賠償請求が生じる可能性があります。これにより、ブランドや信用の低下を招き、経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。



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