松竹 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

松竹 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

松竹は東京証券取引所プライム市場、福岡証券取引所、札幌証券取引所に上場し、映画や演劇、不動産事業を展開する総合エンターテインメント企業です。直近の業績は、映画興行や演劇での劇場運営が好調に推移し、売上高は前期比17.0%増、営業利益は前期比270.9%増と大幅な増収増益を達成しています。


※本記事は、松竹株式会社の有価証券報告書(第160期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 松竹ってどんな会社?


映像・演劇の製作から興行、不動産賃貸までを手掛ける、日本を代表する総合エンターテインメント企業です。

(1) 会社概要


1895年に演劇興行を開始し、1920年の帝国活動写真設立を現在の設立日としています。同年に映画製作・配給も開始しました。1949年には東京・大阪・名古屋の各証券取引所に上場し、その後も歌舞伎座や新宿ピカデリーの開場など、長年にわたり日本の映画・演劇文化を牽引し続けています。

現在の従業員数は連結で1,462名、単体で619名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は事業会社のセコム、第3位には関連会社であり不動産賃貸を行う歌舞伎座が名を連ねています。強固な事業基盤とパートナーシップのもと、多様なエンターテインメントを提供しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 その他信託口 5.43%
セコム 4.12%
歌舞伎座 3.53%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表取締役社長は髙橋敏弘が務めており、取締役10名のうち半数の5名が社外取締役となっています。

氏名 役職 主な経歴
髙橋敏弘 代表取締役社長 社長執行役員 1990年同社入社。映像統括部長、映像本部長などを経て、2021年専務取締役。2023年5月より現職。
迫本淳一 代表取締役会長 1978年松竹映画劇場入社。1993年弁護士登録。2004年同社代表取締役社長を経て、2023年5月より現職。
山根成之 取締役 副社長執行役員 1987年同社入社。演劇製作部長、演劇本部長などを歴任し、2019年専務取締役。2023年5月より現職。
秋元一孝 取締役 専務執行役員 1985年同社入社。映画興行部長、管理本部長などを歴任し、2023年常務執行役員。2024年5月より現職。
井上貴弘 取締役 常務執行役員 2005年同社入社。松竹芸能代表取締役社長、事業開発本部長などを歴任し、2022年常務取締役。2023年5月より現職。


社外取締役は、小巻亜矢(サンリオエンターテイメント代表取締役社長)、上村達男(早稲田大学名誉教授)、丸山聡(StarshotPartners代表社員)、堀江正博(東急代表取締役社長)、野間自子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「映像関連事業」「演劇事業」「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 映像関連事業


劇場用映画の製作・売買・配給・興行、テレビ・ビデオ・BS等のソフト製作・販売などを展開し、一般顧客や放送事業者等を対象としています。映画館の運営や映像版権の許諾も手掛けています。

映画館でのチケットや飲食・グッズ販売から収益を得るほか、映画配給収入や映像版権許諾収入が主な収益源です。映画の製作・配給やビデオ販売等は同社が行い、映画興行や劇場売店運営は松竹マルチプレックスシアターズが行っています。

(2) 演劇事業


歌舞伎や一般演劇の企画・製作・興行を中心に、俳優やタレントの斡旋、舞台衣裳の製作・賃貸、演劇舞台の各種セット製作などを展開し、劇場を訪れる一般顧客へ多様な舞台芸術を提供しています。

主催する歌舞伎や演劇公演のチケット販売収入が主な収益源です。演劇の企画・製作・興行は同社のほか、松竹芸能や松竹エンタテインメントが行い、舞台衣裳関連は松竹衣裳などが担っています。

(3) 不動産事業


所有するオフィスビルや商業施設などの不動産の賃貸、および不動産の管理・清掃事業を展開し、入居する企業やテナントを主要な顧客としています。

テナント企業との賃貸借契約に基づき、契約期間にわたって得られる不動産賃貸収入が主な収益源です。所有不動産の賃貸や管理は同社のほか、松竹サービスネットワークや関連会社の歌舞伎座などが共同で運営しています。

(4) その他


報告セグメントに含まれない事業として、プログラムの製作・販売、キャラクター商品の企画・販売、配信コンテンツの制作、新規事業開発、ゲームソフトウェアの企画・開発などを展開しています。

物販店舗やECを通じた商品の販売収入や、ゲームの販売収入、ライセンス収入などを主な収益源としています。これらの事業は主に同社が主体となって運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、一時的な落ち込みを経て回復傾向にあります。コロナ禍の影響を受けた時期もありましたが、映画興行や演劇公演の好調に支えられ、直近では売上高が982億円と大幅に伸長しました。経常利益も黒字に転換し、収益性の改善が進んでいます。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 718億円 782億円 854億円 840億円 982億円
経常利益 -28億円 14億円 29億円 -25億円 63億円
利益率(%) -3.9% 1.7% 3.4% -3.0% 6.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -15億円 68億円 40億円 -5億円 32億円

(2) 損益計算書


売上高は840億円から982億円へと増加し、売上総利益も順調に拡大しました。これに伴い、営業利益は17億円から62億円へと飛躍的に伸び、営業利益率は2.0%から6.3%へと大幅な改善を達成しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 840億円 982億円
売上総利益 358億円 416億円
売上総利益率(%) 42.7% 42.4%
営業利益 17億円 62億円
営業利益率(%) 2.0% 6.3%


販売費及び一般管理費(354億円)のうち、従業員給料が60億円(構成比17%)、広告宣伝費が36億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


映像関連事業はヒット作品に恵まれ売上・利益ともに大幅に伸長しました。演劇事業も歌舞伎公演の盛況等により黒字転換を果たしています。不動産事業は安定した高い利益率を維持し、全体の収益基盤として貢献しています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期) 利益(2025年2月期) 利益(2026年2月期) 利益率
映像関連事業 437億円 529億円 4億円 25億円 4.8%
演劇事業 238億円 273億円 -12億円 17億円 6.3%
不動産事業 140億円 146億円 58億円 52億円 35.2%
その他 25億円 34億円 -2億円 2億円 4.8%
調整額 -億円 -億円 -32億円 -34億円 -%
連結(合計) 840億円 982億円 17億円 62億円 6.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型です。優良な資金循環を実現しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF -6億円 134億円
投資CF -37億円 -41億円
財務CF -15億円 -54億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「日本文化の伝統を継承、発展させ、世界文化に貢献する」「時代のニーズをとらえ、あらゆる世代に豊かで多様なコンテンツをお届けする」ことをミッションに掲げています。お客様の要望に応える魅力あるコンテンツを提供し、株主に信頼され続ける企業グループを目指して経営を行っています。

(2) 企業文化


同社は、従業員一人ひとりが個性を発揮し多様性を活かせる環境を重視しています。働きがいのある職場を作り、仕事を通して喜びを感じられるウェルビーイングの実現を目指すことをサステナビリティに関する方針として掲げ、社会課題の解決と持続可能な社会の実現に寄与する文化を育んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社の中核事業である劇場用映画および演劇は、予想と実績の乖離が大きいため、特定の経営指標をもって経営目標とはしていません。数値的な目標を追うのではなく、安定した収益基盤を着実に強化していくことを第一の経営方針と認識して事業を展開しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、映像関連・演劇事業において質の高いコンテンツを継続的に製作し、多様な形で展開することでより多くの顧客へ提供する戦略を描いています。映画分野では自社企画作品の拡大やライブラリの二次利用を推進し、不動産事業ではバリューアップ工事による資産価値の向上と稼働の安定化に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「多様性」「働く環境」「育成」を人材戦略の柱としています。多様性を確保するため中途採用も積極的に行い、フレックスタイム制や在宅勤務などの柔軟な働き方を推進しています。また、研修メニューの充実や自己啓発支援を通じて、従業員の自発的な学びとチャレンジを後押しする環境を整えています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 42.3歳 14.6年 8,301,791円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 28.1%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 70.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 78.9%
男女賃金差異(パート・有期雇用労働者) 60.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(48.9%)、定期健康診断受診率(97.2%)、高ストレス者率(8.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 劇場用映画の興行成績の変動


映画作品の興行成績は作品ごとに差異が大きく、事前予想が常に困難です。一定の成績に達しない作品が長期にわたり継続した場合、同社グループの経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 演劇事業の興行成績の変動


歌舞伎や一般演劇において、出演俳優の健康状態や話題性、顧客の嗜好の変化等により入場者数が大きく左右されます。不測の事態により代役等の対策が追いつかない場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 映像・演劇コンテンツの知的財産権の侵害


同社が保有する映像・演劇コンテンツの知的財産権について、海賊版や模倣品による侵害が発生するリスクがあります。海外やインターネット上で十分な法的保護が受けられない場合、収益機会の逸失に繋がる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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