※本記事は、株式会社テラスカイの有価証券報告書(第20期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. テラスカイってどんな会社?
Salesforceなどのクラウドシステム導入支援と、自社クラウドサービスの開発・販売を行う企業です。
■(1) 会社概要
2006年3月にクラウドによるシステム開発を目的として設立されました。2008年にSalesforceの画面制作ツール「SkyVisualEditor」の提供を開始し、製品事業を展開します。2015年に東京証券取引所マザーズに上場し、2018年には現在のプライム市場へ市場変更しました。その後もSAP基盤クラウドインテグレーションや量子コンピュータ研究など事業領域を拡大しています。
従業員数は連結で1,608名、単体で816名です。筆頭株主は創業者で代表取締役の佐藤秀哉氏で、第2位は資本業務提携関係にあるNTTデータ、第3位は佐藤秀哉氏の資産管理会社であるマレスカイとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 佐藤秀哉 | 28.27% |
| NTTデータ | 15.92% |
| マレスカイ | 7.75% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役CEO社長執行役員は佐藤秀哉氏が務めています。社外取締役は4名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 佐藤秀哉 | 代表取締役CEO社長執行役員 | 1987年日本アイ・ビー・エム入社。セールスフォース・ドットコムを経て、2006年にテラスカイを設立し代表取締役に就任。グループ会社役員を歴任し、2022年4月より現職。 |
| 宮田隆司 | 取締役副社長執行役員 | 1987年富士銀コンピュータサービス(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社。2018年に入社し、テラスカイ・テクノロジーズ代表取締役等を歴任。2022年4月より現職。 |
| 山田誠 | 取締役専務執行役員 | 1998年コマツソフト入社。SAPジャパン、スーパーストリーム取締役CTOを経て、2022年に入社し製品事業ユニット長に就任。2023年5月より現職。 |
| 今岡純二 | 取締役専務執行役員 | 1991年ダイワボウ情報システム入社。2006年に入社し、クラウドインテグレーション統括本部長などを歴任。2025年3月より現職。 |
| 塚田耕一郎 | 取締役CFO専務執行役員 | 1992年トーメン入社。興銀インベストメントを経て、2015年に入社し最高財務責任者に就任。グループ会社の取締役等を歴任し、2025年3月より現職。 |
社外取締役は、宇野直樹(元東京海上日動システムズ社長)、瀧口友里奈(セント・フォース所属キャスター)、藤田直志(元日本航空副社長)、奥田良治(NTTデータ事業部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ソリューション事業」および「製品事業」を展開しています。
■ソリューション事業
クラウド市場の拡大を背景に、Salesforce等のクラウドサービスの導入からカスタマイズ、インテグレーションまで包括的なコンサルティングやシステム開発を提供しています。また、子会社のBeeXがSAPソフトウェア基盤のクラウドマイグレーションや、AWSを活用したインテグレーション事業を展開しています。
収益は、顧客企業との請負契約や準委任契約に基づく開発等の役務提供の対価、および保守サービス等の対価として受け取ります。事業の運営は主にテラスカイ、BeeXなどのグループ各社が行っています。
■製品事業
自社クラウドサービスとして、プログラムレスでSalesforceの画面をデザインできる「SkyVisualEditor」や、異なるクラウドと基幹システムのデータ連携を容易にする「mitoco X」、グループウェア「mitoco」などを開発・提供しています。
収益は、顧客に提供するクラウドサービスのライセンス利用料(サブスクリプション売上)や保守サービスの対価として受け取ります。運営は主にテラスカイが主体となり、国内および一部海外に向けて製品販売を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高が右肩上がりで成長を続けており、特にクラウドインテグレーション案件の好調に支えられています。利益面では第18期にかけて一時的に停滞したものの、その後は増益基調に転じ、直近期は売上高281億円、経常利益17億円と過去最高水準の業績を達成しています。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 126億円 | 154億円 | 191億円 | 247億円 | 281億円 |
| 経常利益 | 6.6億円 | 6.1億円 | 6.6億円 | 16億円 | 17億円 |
| 利益率(%) | 5.3% | 4.0% | 3.4% | 6.5% | 6.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.1億円 | 3.5億円 | 3.0億円 | 10億円 | 16億円 |
■(2) 損益計算書
増収による売上総利益の拡大が顕著です。それに伴い販売費及び一般管理費などの費用も増加していますが、売上の成長がコスト増を吸収し、営業利益ベースでも着実な増益を実現して高い収益性を維持しています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 247億円 | 281億円 |
| 売上総利益 | 67億円 | 75億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.0% | 26.6% |
| 営業利益 | 15億円 | 16億円 |
| 営業利益率(%) | 5.9% | 5.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が24億円(構成比41%)、業務委託費が5.0億円(同8%)を占めています。売上原価は外注費等の計上が多く、労務費が41億円(構成比39%)、外注費が30億円(同29%)となっています。
■(3) セグメント収益
主力のソリューション事業は、Salesforceの導入開発やSAPのクラウドマイグレーション事業の拡大により大幅な増収増益を牽引しました。製品事業もサブスクリプション売上の増加で増収となりましたが、新製品への積極的な投資を継続しているため営業損失となっています。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益(2026年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ソリューション事業 | 229億円 | 258億円 | 29億円 | 32億円 | 12.4% |
| 製品事業 | 18億円 | 22億円 | -0.7億円 | -1.3億円 | -5.6% |
| 連結(合計) | 247億円 | 281億円 | 15億円 | 16億円 | 5.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金に加えて外部調達も行い、積極的な成長投資に振り向ける「積極型」の傾向を示しています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 16億円 | 18億円 |
| 投資CF | -10億円 | -1.1億円 |
| 財務CF | 3.5億円 | 0.9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.3%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.5%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「先進のテクノロジーを探求し、社会を次のステージへ」をミッションに掲げています。常に最新のテクノロジーを探求して最適なソリューションを提供し、顧客のビジネスの成長を支えるとともに、顧客の成功を通じて社会全体を新たなステージへ確実に導くことを目指しています。
■(2) 企業文化
「Fly Ahead 一歩先ゆく確かな技術で、もっとも信頼されるパートナーに」をビジョンとし、顧客に驚きと感動をもたらすことをバリューとしています。大胆な挑戦を繰り返し、一人ひとりがリーダーシップを発揮しながら、誠実に互いを尊重し困難な課題を共に解決する強いチームを築く文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
「信頼されるパートナーへ」をスローガンとし、「安定的な高成長」「品質の向上」「成長分野へのチャレンジ」を積極的に推進することを中短期の目標として掲げています。有価証券報告書に具体的な数値目標の記載はありませんが、これらのテーマを通じてクラウド市場での事業基盤強化を図っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
クラウド市場の急拡大に伴い、優秀な人材の確保と育成を最重要課題と位置づけ、Salesforce認定資格の取得推進など技術力向上に注力しています。また、Salesforce以外のAWSやSAP関連事業等の新規事業育成、タイ等の海外市場への展開促進、製品事業や保守サービスによる安定した収益基盤の構築を重点施策としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
既存事業の拡大と新たな価値創造の実現に向けて、人的資本の充実を重要課題と捉え、採用・育成・定着を強化しています。柔軟な働き方を可能とする職場環境の整備や公正な評価制度の構築により人材定着を図るとともに、独自の教育カリキュラムや資格支援制度を通じて、多様な人材の能力開発とイノベーションの創出を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 35.3歳 | 4.3年 | 6,603,751円 |
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.9% |
| 男性育児休業取得率 | 118.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 99.2% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、グループ総従業員におけるクラウド資格取得者延べ人数(1,610名)、新卒入社者のSalesforce基本資格合格率(98.8%)、総従業員数に占める女性労働者の割合(30.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 技術革新への対応
IT市場では技術革新や需要動向の変化が非常に早いため、最新技術の把握と人材教育が不可欠です。環境変化への対応が遅れて案件の失注を招いたり、システム投資や人件費などの対応費用が多額に生じたりした場合、同社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) クラウド市場の動向
企業のDX投資意欲によりクラウド市場は成長を続けていますが、政治経済情勢の悪化や景気後退などにより市場の成長が鈍化した場合、システム受注件数が減少し、計画通りの売上成長が実現できず、業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 不採算プロジェクトの発生
顧客要求に応じたシステム開発において、想定工数からの乖離を防ぐためプロジェクト管理を徹底していますが、予期せぬ不具合などにより開発工数が大幅に増加し、不採算プロジェクトが発生した場合、利益率の悪化などを通じて業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 人材の確保
同社の提供するサービスはエンジニアの技術力に大きく依存しており、Salesforce認定資格を保持する人材等の安定的な確保が重要です。採用や教育が計画通り進まない場合や、優秀な人材の流出が続いた場合、円滑なサービス提供が困難になり業績に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。