ソフトバンクグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ソフトバンクグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の投資持株会社です。「情報革命で人々を幸せに」を掲げ、AI関連企業への投資を行う「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」や、通信事業、半導体設計のアームなどを傘下に持ちます。当期は投資損益の大幅な改善により、売上高は増収、最終損益は黒字転換を果たしました。


※本記事は、ソフトバンクグループ株式会社 の有価証券報告書(第45期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ソフトバンクグループってどんな会社?


投資持株会社として、「情報革命で人々を幸せに」を掲げ、AI関連企業への投資や通信事業、半導体設計のアームなどを展開する企業グループです。

(1) 会社概要


1981年に設立され、PCソフトの流通業から開始しました。1999年に純粋持株会社へ移行し、2016年には英国の半導体設計会社アームを子会社化しました。2017年にはテクノロジー企業への投資を行うソフトバンク・ビジョン・ファンドを開始し、2023年にはアームが米国Nasdaq市場へ上場を果たしています。

連結従業員数は67,229名、単体では274名です。筆頭株主は創業者の孫正義氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
孫 正義 29.68%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 17.15%
日本カストディ銀行(信託口) 7.18%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表は代表取締役 会長兼社長執行役員の孫 正義氏です。社外取締役比率は38.5%です。

氏名 役職 主な経歴
孫 正義 代表取締役 会長兼社長執行役員 1981年日本ソフトバンク(現同社)設立、社長。ヤフー、アリババ、スプリント等の役員を歴任し、2017年より代表取締役会長兼社長。アーム会長も務める。
後 藤 芳 光 取締役専務執行役員 CFO 兼 CISO 兼 GCO 1987年安田信託銀行入行。2000年同社入社。財務部長、福岡ソフトバンクホークス社長等を歴任し、2018年CFO兼CISO。2025年より現職。
宮 内   謙 取締役 1984年同社入社。ソフトバンクモバイル(現ソフトバンク)社長兼CEO、同社会長等を歴任。2024年よりソフトバンク特別顧問。
レネ・ハース 取締役 NVIDIAを経て2013年アーム入社。IPプロダクトグループプレジデント等を務め、2022年アームCEO。2023年より現職。


社外取締役は、飯島 彰己(三井物産顧問)、松尾 豊(東京大学大学院教授)、襟川 恵子(コーエーテクモHD取締役名誉会長)、ケン・シーゲル(モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所マネージングパートナー)、デビッド・チャオ(DCM Ventures General Partner)です。

2. 事業内容


同社グループは、「持株会社投資事業」「ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業」「ソフトバンク事業」「アーム事業」および「その他」事業を展開しています。

持株会社投資事業


同社および子会社による投資事業を行っています。戦略的投資持株会社として、AI関連企業をはじめとする世界中のテクノロジー企業への投資を行い、グループ全体の成長を牽引しています。

収益は、保有する株式の価値増大に伴う投資損益や配当金などから得ています。運営は主にソフトバンクグループ、SoftBank Group Capital Limited、ソフトバンクグループジャパン、SB Northstar LPなどが行っています。

ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業


SVF1、SVF2およびLatAmファンドによる投資事業を行っています。AIを活用した成長可能性の高いテクノロジー企業へ大規模な投資を行い、中長期的なリターンの最大化を目指しています。

収益は、投資先の公正価値評価に伴う未実現評価損益や、株式売却による実現損益などから得ています。運営は主にSB Investment Advisers (UK) Limited、SB Global Advisers Limitedなどが行っています。

ソフトバンク事業


国内での移動通信サービス、携帯端末販売、ブロードバンドサービス、ソリューションサービス、メディア・広告、イーコマース、決済・金融サービスなどを提供しています。個人・法人顧客向けに幅広いライフスタイル・産業関連サービスを展開しています。

収益は、通信料、端末代金、広告料、販売手数料、決済手数料などから得ています。運営は主にソフトバンク、LINEヤフー、PayPayなどが行っています。

アーム事業


半導体のIP(知的財産)および関連テクノロジーのデザイン、ライセンス供与、ソフトウエアツールの販売などを行っています。高機能・高効率なプロセッサー技術を提供し、スマートフォンからクラウド、自動車まで幅広い機器に採用されています。

収益は、半導体メーカー等からのライセンス料や、搭載チップの出荷数に応じたロイヤルティー収入から得ています。運営は主にArm Holdings plcが行っています。

その他


上記セグメントに含まれない事業として、太陽光発電所の建設・運営やプロ野球球団の運営などを行っています。また、スマートフォン決済サービス「PayPay」に関連する事業の一部なども含まれます。

収益は、売電収入、チケット・グッズ販売収入、スポンサー収入などから得ています。運営は主にSBE Global, LP、福岡ソフトバンクホークスなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。利益面では、投資事業の影響により年度ごとの変動が大きいものの、当期は大幅な投資利益の計上により、税引前利益および当期利益ともに黒字回復を果たしています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 5兆6,282億円 6兆2,215億円 6兆5,704億円 6兆7,565億円 7兆2,438億円
税引前利益 5兆6,705億円 -8,696億円 -4,691億円 578億円 1兆7,047億円
利益率(%) 100.8% -14.0% -7.1% 0.9% 23.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 4兆9,880億円 -1兆7,080億円 -9,701億円 -2,276億円 1兆1,533億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、投資損益が大幅な黒字となったことで税引前利益も大きく改善しました。売上総利益率も改善傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 6兆7,565億円 7兆2,438億円
売上総利益 3兆5,424億円 3兆7,542億円
売上総利益率(%) 52.4% 51.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当などの人件費や販売促進費などが主要な構成要素となっています。売上原価においては、商品売上原価や通信設備使用料などが大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


ソフトバンク事業とアーム事業が売上高の増収に寄与しました。利益面では、持株会社投資事業がアリババ株式やTモバイル株式の評価益等により大幅な黒字となり、全体の利益を牽引しました。SVF事業は投資環境の影響を受け損失を計上しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
持株会社投資事業 - - -975億円 7,943億円 -
ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業 - - 1,282億円 -1,150億円 -
ソフトバンク事業 6兆838億円 6兆5,443億円 8,351億円 9,063億円 13.8%
アーム事業 4,640億円 6,123億円 -332億円 477億円 7.8%
その他 2,250億円 1,328億円 514億円 310億円 23.3%
調整額 -164億円 -457億円 -8,261億円 405億円 -
連結(合計) 6兆7,565億円 7兆2,438億円 578億円 1兆7,047億円 23.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 2,505億円 2,036億円
投資CF -8,415億円 -1兆6,315億円
財務CF -6,062億円 -1兆1,164億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は23.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「情報革命で人々を幸せに」という経営理念を掲げています。情報技術の発展によって社会やライフスタイルが変革する「情報革命」を主要な成長機会と捉え、世界の人々が最も必要とするテクノロジーやサービスを提供する企業グループとなることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「群戦略」という独自の組織戦略を重視しています。特定の分野で優れた技術やビジネスモデルを持つ多様な企業群が、自律的に意思決定を行いながらも、資本関係と同志的結合を通じてシナジーを創出し、共に進化・成長していくことを志向しています。ブランドの統一や過半数出資にはこだわらず、柔軟なグループ構成で長期成長を目指します。

(3) 経営計画・目標


同社は、保有株式価値の増大を通じてNAV(Net Asset Value:保有株式価値-調整後純有利子負債)を中長期的に最大化することを目指しています。また、財務の安定性を確保するため、LTV(Loan to Value:保有資産に対する負債の割合)を平時は25%未満、異常時でも35%を上限として管理し、今後2年分の社債償還資金以上の手元流動性を確保することを財務方針としています。

(4) 成長戦略と重点施策


AI(人工知能)への移行が進む中、同社は人類の進化のためにASI(人工超知能)を実現することを使命としています。その実現に不可欠なAIチップ、AIロボット、AIデータセンター、電力の4分野で積極的な投資・事業活動を行うとともに、生成AI分野をリードする企業への投資や連携を進めます。アームを中核としたポートフォリオを活かし、既存投資先の価値最大化と新規投資を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、自律的でプロフェッショナルな人材を確保し、その成長と活躍を支援することを人材戦略の柱としています。「Professionalism・Smart・Relation」の3つのコア能力を重視した採用を行い、年齢・性別・国籍等を問わず最適な人材を配置します。また、自律的なキャリア開発を促し、社員が個性や能力を最大限に発揮できる環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.3歳 10.1年 13,631,161円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 25.4%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 54.4%
男女賃金差異(正規雇用) 55.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 74.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(46.4%)、年休取得率(56%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 投資活動全般


同社はAI関連のテクノロジー企業を中心に投資を行っていますが、技術進歩や市場環境の変化、金利動向等により評価額が大きく変動する可能性があります。また、世界各国での事業展開に伴い、地政学リスクや各国の規制変更の影響を受け、投資活動や投資先の事業が制約される可能性があります。投資判断においては、対象企業のリスクを見誤る可能性も存在します。

(2) 資金調達


同社は金融機関からの借入や社債、保有資産を活用した資金調達を行っています。市場環境の悪化により予定した時期・条件での調達が困難になるリスクや、保有株式価値の下落により追加担保が必要となるリスクがあります。また、各種コベナンツへの抵触により期限の利益を喪失する可能性もあります。

(3) 経営陣


同社の経営において中心的な役割を担っている代表取締役 会長兼社長執行役員の孫 正義氏に不測の事態が生じた場合、同社の活動全般に支障が生じる可能性があります。これに備え、コンティンジェンシープランの策定やサクセッションプランの議論を進めています。

(4) ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業


SVFの投資先は新技術を活用した企業が多く、技術開発の遅れや競争激化、規制強化等により事業計画が達成できないリスクがあります。また、保有資産の流動性が低い場合があり、計画通りのエグジットができない可能性があります。さらに、上場株式の保有に伴う株価変動リスクや、優秀な人材の確保・維持に関するリスクも存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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