※本記事は、ソフトバンクグループの有価証券報告書(第46期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. ソフトバンクグループってどんな会社?
戦略的投資持株会社として、AI関連企業などへの投資活動や通信・ITサービスの提供を展開しています。
■(1) 会社概要
1981年に設立し、1998年に東証一部上場、翌年持株会社へ移行しました。2006年にボーダフォン(現ソフトバンク)、2016年に英国Armを子会社化しています。2017年にビジョン・ファンドを立ち上げ、2025年には米OpenAI向けAIインフラ構築計画の発表や米Ampereの子会社化を行っています。
従業員数は連結73,677名、単体276名です。筆頭株主は創業者の孫正義氏で、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は同じく信託業務を行う日本カストディ銀行(信託口)です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 孫 正義 | 32.73% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.48% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.58% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役 会長兼社長執行役員は孫正義氏です。社外取締役は5名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 孫 正義 | 代表取締役 会長兼社長執行役員 | 1981年日本ソフトバンク設立、代表取締役社長。ボーダフォン取締役会議長等を歴任。2017年同社代表取締役会長兼社長を経て、2020年より現職。 |
| 後藤 芳光 | 取締役専務執行役員 CFO 兼 CISO | 1987年安田信託銀行入行、2000年ソフトバンク入社。同社常務等を経て2018年専務執行役員 CFO 兼 CISO。2026年4月より現職。 |
| 宮内 謙 | 取締役 | 1977年日本能率協会入職、1984年日本ソフトバンク入社。ソフトバンクモバイル社長兼CEO等を歴任し、2024年6月同社特別顧問。2018年より現職。 |
| レネ・ハース | 取締役 | 2006年NVIDIA CorporationのVice President等を経て、2013年ARM Holdings plc入社。2022年同社CEO。2023年6月より現職。 |
社外取締役は、飯島彰己(元三井物産社長)、松尾豊(東京大学大学院教授)、襟川恵子(光栄設立者・専務取締役)、ケン・シーゲル(モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所マネージングパートナー)、デビッド・チャオ(DCM Ventures Co-founder and General Partner)です。
2. 事業内容
同社グループは、「持株会社投資事業」「ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業」「ソフトバンク事業」「AIコンピューティング事業」および「その他」事業を展開しています。
■持株会社投資事業
ソフトバンクグループおよびその子会社による投資事業を展開しています。余剰資金を用いた上場株式や社債などへの投資のほか、Tモバイル、アリババ、NVIDIA、Intel、OpenAIなどの企業への出資・投資活動を行っています。
収益は、投資先の株式価値変動に伴う評価損益や売却損益、配当金などから得ています。運営は主に親会社であるソフトバンクグループやSoftBank Group Capital Limited、SB Northstar LPなどの子会社が行っています。
■ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業
主にAIを活用し成長可能性が大きいと考えるテクノロジー企業への投資を目的としたファンドの運営・投資事業を展開しています。出資先には、CoupangやDiDiなどの公開投資先のほか、多数の未公開投資先が含まれています。
収益は、投資先の株式価値変動による評価損益や売却益から得ており、ファンド運営会社は管理報酬や成功報酬などを受け取ります。運営は主に子会社のSB Investment Advisers (UK) LimitedやSB Global Advisers Limitedが行っています。
■ソフトバンク事業
個人向けのモバイル・ブロードバンド通信、法人向けのソリューションサービス、ICTサービス商材の提供を展開しています。また、メディア・広告やコマースサービス、QRコード決済などの金融・決済サービスも幅広く手掛けています。
収益は、通信の基本・従量料金、広告のクリック・掲載料金、物品販売、加盟店決済手数料などから得ています。運営は主に子会社のソフトバンク、LINEヤフー、PayPay、アスクル、ZOZOなどが共同で、または個別に行っています。
■AIコンピューティング事業
半導体のIP、チップおよび関連テクノロジーのデザイン、半導体チップの開発・販売、ソフトウェアツールの販売・関連サービスの提供を展開しています。スマートフォン、データセンター、自動車向けなど高性能なコンピュートプラットフォームを提供します。
収益は、半導体IPを顧客にライセンスすることによるライセンス収入、および顧客が技術を含むチップを販売することにより生じるロイヤルティー収入から得ています。運営は主に子会社のArm Holdings plcやAmpere Computing Holdings LLCなどが行っています。
■その他
太陽光発電所の開発・建設・運営、データセンターの開発・建設のほか、ロボティクス関連事業やプロ野球球団などの福岡ソフトバンクホークス関連事業を展開しています。幅広い事業領域への投資と実業運営を行っています。
収益は、電力の供給・売電収入、ロボット関連製品の販売、球団運営に伴う各種メディア事業やコンテンツ配信などから得ています。運営は主に子会社のEnergy Global, LP、ロボHD、福岡ソフトバンクホークスなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあります。利益面では投資先の株価下落等の影響で赤字を計上する厳しい時期もありましたが、直近2期間は投資利益の改善やAI関連銘柄の評価益により黒字転換を果たし、大幅な増益を記録しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 6兆2,215億円 | 6兆5,704億円 | 6兆7,565億円 | 7兆2,438億円 | 7兆7,987億円 |
| 税引前利益 | -8,696億円 | -4,691億円 | 578億円 | 1兆7,047億円 | 6兆1,349億円 |
| 利益率(%) | -14.0% | -7.1% | 0.9% | 23.5% | 78.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1兆7,080億円 | -9,701億円 | -2,276億円 | 1兆1,533億円 | 5兆23億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しており、売上総利益もそれに伴い順調に拡大しています。売上総利益率は51%台で安定的に推移しており、主力である通信事業や半導体事業などの高い収益性を背景に、付加価値の高いサービスや製品を継続して提供できていることが伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7兆2,438億円 | 7兆7,987億円 |
| 売上総利益 | 3兆7,542億円 | 4兆161億円 |
| 売上総利益率(%) | 51.8% | 51.5% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給付が1兆5,905億円(構成比40%)、減価償却費及び償却費が9,188億円(同23%)を占めています。一方、売上原価のうち、商品売上原価が2兆809億円(構成比55%)、業務委託費が4,669億円(同12%)となっています。
■(3) セグメント収益
主力の実業であるソフトバンク事業が継続して売上と利益の基盤を支えています。当期はビジョン・ファンド事業が保有するAI関連銘柄の評価益等により利益が大幅に改善し、全体の業績を牽引しました。一方、持株会社投資事業やAIコンピューティング事業などは投資損失や研究開発費の増加により赤字となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 持株会社投資事業 | 0億円 | 0億円 | 7,943億円 | -4,721億円 | - |
| ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業 | 0億円 | 0億円 | -1,150億円 | 6兆4,446億円 | - |
| ソフトバンク事業 | 6兆5,443億円 | 7兆409億円 | 9,063億円 | 9,650億円 | 13.7% |
| AIコンピューティング事業 | 5,903億円 | 6,403億円 | -109億円 | -1,373億円 | -21.4% |
| その他 | 1,327億円 | 1,506億円 | 896億円 | -3,283億円 | -218.0% |
| 調整額 | -235億円 | -332億円 | 405億円 | -3,370億円 | - |
| 連結(合計) | 7兆2,438億円 | 7兆7,987億円 | 1兆7,047億円 | 6兆1,349億円 | 78.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業は赤字ですが、将来成長のための投資を借入等で継続している勝負型の局面です。なお、同社は金融・決済事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に営業債権及びその他の債権の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2,036億円 | -4,288億円 |
| 投資CF | -1兆6,315億円 | -4兆5,072億円 |
| 財務CF | -1兆1,164億円 | 6兆3,773億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は34.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は21.6%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「情報革命で人々を幸せに」という経営理念の下、世界の人々が最も必要とするテクノロジーやサービスを提供する企業グループとなることを目指すとともに、企業価値の最大化を図っています。人類の進化のためにASI(Artificial Super Intelligence:人工超知能)を実現することを使命としています。
■(2) 企業文化
「自由・公正・革新」を基本思想に掲げています。「群戦略」という独自の組織戦略を採用しており、特定の分野において優れたテクノロジーやビジネスモデルを持つ多様な企業群が、それぞれ自律的に意思決定を行いつつ、資本関係と同志的結合を通じてシナジーを創出しながら共に進化・成長を続けることを志向しています。
■(3) 経営計画・目標
戦略的投資持株会社として、保有株式価値の増大を通じてNAV(保有株式価値-調整後純有利子負債で算出)を中長期的に最大化することを目指しています。また、財務方針としてLTV(保有資産に対する負債の割合)を平時25%未満、異常時でも35%を上限とし、2年分の社債償還資金以上の手元流動性を確保しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「情報革命」の中心であるAIへの移行を捉え、AIモデル、AIチップ、AIインフラ、フィジカルAIの各領域に積極的に投資しています。「責任あるAI」「気候変動」「人的資本」をサステナビリティの最優先課題とし、リスク軽減と機会追求を両立させながら成長機会を確実に取り込み自己変革を繰り返していきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を持続的成長を支える価値創造の源泉と捉え、個性や能力を最大限発揮して挑戦・活躍できる環境整備を進めています。自律的でプロフェッショナルな人材を確保し、成長と支援を行うことを戦略の柱とし、Professionalism・Smart・Relationの3つのコア能力を重視した採用を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.2歳 | 10.1年 | 13,195,551円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 27.0% |
| 男性育児休業取得率 | 88.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 55.2% |
| 男女賃金差異(正規) | 59.4% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 41.1% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全社員における女性比率(47.5%)、障がい者雇用率(2.7%)、年休取得率(約59%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 投資先の事業展開や業績の悪化
AIに関連した情報・テクノロジー企業を中心に投資していますが、技術やビジネスモデルの陳腐化、競争環境の激化により、投資先が想定通りに事業展開できない可能性があります。業績の大幅悪化や事業計画の見直しが発生した場合、保有株式価値やファンドの投資収益に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 資金調達環境の悪化と金利変動
金融機関からの借入や社債のほか、保有資産を活用した多様な資金調達を行っています。金利上昇や信用格付けの低下により調達環境が悪化した場合、想定した条件で資金調達ができないリスクがあります。また、保有株式価値の下落により追加担保の差し入れや期限前返済を求められる可能性があります。
■(3) OpenAIへの巨額投資と市場環境
OpenAIに対して巨額の投資と追加出資を決定しており、ブリッジローンなどの借入による調達を行っています。AI分野の競争激化や技術人材の確保難、計算能力の負担増などの事業リスクが顕在化した場合や、同社が少数株主であるため経営方針の不一致が生じた場合、投資リターンや企業価値に影響する可能性があります。
■(4) AIチップやインフラビジネスの競合
ArmなどのAIコンピューティング事業では、技術革新や業界標準の変化が激しく、新製品の開発やビジネスモデル変更が顧客に受け入れられないリスクがあります。また、他社との競争優位性を維持するために多額の投資が必要となり、自社設計シリコンチップへの参入で既存顧客との対立や製造リスクを抱える可能性があります。



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