ダイキン工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイキン工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。空調・冷凍機事業を主力とし、化学事業や油機事業なども展開するグローバルメーカーです。当連結会計年度の業績は、売上高4兆7523億円(前期比8.1%増)、経常利益3664億円(3.4%増)と増収増益を達成。特にアプライド空調やインド市場での販売が好調に推移しました。


※本記事は、ダイキン工業株式会社 の有価証券報告書(第122期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダイキン工業ってどんな会社?


空調・冷凍機、化学、油機事業などをグローバルに展開する総合空調メーカーです。世界170カ国以上で事業を行い、海外売上高比率は8割を超えています。

(1) 会社概要


同社は1924年に合資会社大阪金属工業所として創立されました。1953年に三フッ化樹脂を開発し、1963年に現在の社名に変更しました。1972年には欧州拠点を設立して海外展開を本格化させ、2012年には米国住宅用空調大手グッドマン社(現ダイキンコンフォートテクノロジーズノースアメリカ)を子会社化しました。

連結従業員数は103,544名、単体では7,866名体制です。筆頭株主は信託業務を行う資産管理サービス信託銀行(信託口)で、第2位も同様に信託銀行(信託口)となっており、機関投資家が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 19.17%
日本カストディ銀行(信託口) 7.87%
ステート ストリート バンク アンド トラスト カンパニー 505001 3.82%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性4名の計15名で構成され、女性役員比率は26.7%です。代表者は代表取締役会長兼CEOの十河政則氏と、代表取締役社長兼COOの竹中直文氏が務めています。社外取締役比率は26.7%です。

氏名 役職 主な経歴
十河 政則 代表取締役会長兼CEO 1973年入社。秘書室長、取締役兼専務執行役員などを経て2011年より社長兼COO、2014年より社長兼CEO。2024年6月より現職。
竹中 直文 代表取締役社長兼COO 1986年入社。専任役員、常務執行役員、専務執行役員を経て2024年6月より現職。
松崎 隆 取締役兼副社長執行役員 1982年入社。空調開発企画室長、グローバル調達本部長、シリコンバレー・テクノロジーオフィス所長などを歴任し、2020年6月より現職。
髙橋 孝一 取締役兼副社長執行役員 1979年入社。経理財務本部長、常務執行役員、専務執行役員を経て2024年6月より現職。
カンワル・ジート・ジャワ 取締役 ダイキンエアコンディショニングインディア社社長兼CEO。2018年より同社取締役を兼務し、2024年6月よりグローバル戦略本部空調インド・アフリカ地域支配人。

森 圭子

取締役兼執行役員 1997年入社。秘書室秘書担当部長、執行役員を経て2024年6月より現職。


社外取締役は、川田達男(セーレン会長兼最高経営責任者)、牧野明次(岩谷産業会長兼CEO)、鳥井信吾(サントリーHD副会長)、新居勇子(ANAあきんど顧問)です。

2. 事業内容


同社グループは、「空調・冷凍機事業」「化学事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 空調・冷凍機事業


ルームエアコン、空気清浄機などの住宅用機器から、業務用エアコン、ターボ冷凍機、エアフィルタなどの業務用機器、海上コンテナ冷凍装置などの舶用機器まで幅広く提供しています。顧客は一般消費者からオフィスビル、工場、商業施設まで多岐にわたります。

製品の販売および保守サービス等の役務提供から収益を得ています。運営は同社に加え、ダイキンヨーロッパエヌブイ、ダイキンコンフォートテクノロジーズノースアメリカインク、大金空調(上海)有限公司など、世界各国の関係会社が行っています。

(2) 化学事業


冷媒となるフルオロカーボンガスや、フッ素樹脂、半導体用エッチング剤などの化成品を提供しています。半導体、自動車、情報通信など幅広い産業分野の企業を顧客としています。

製品の販売から収益を得ています。運営は同社に加え、ダイキンアメリカインク、大金フッ素化学(中国)有限公司などの関係会社が行っています。

(3) その他事業


産業機械・建機車両用油圧機器、防衛省向け特機製品、酸素濃縮装置などの医療機器、電子システム製品を提供しています。

製品・システムの販売から収益を得ています。運営は主に同社およびダイキン・ザウアーダンフォス等の関係会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は5期連続で増加しており、堅調な成長傾向にあります。利益面でも、経常利益および当期利益は高い水準を維持しています。特に直近では売上高が4兆7000億円を超え、利益率も安定的に推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 24,934億円 31,091億円 39,816億円 43,953億円 47,523億円
経常利益 2,402億円 3,275億円 3,662億円 3,545億円 3,664億円
利益率(%) 9.6% 10.5% 9.2% 8.1% 7.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 877億円 1,538億円 1,428億円 1,442億円 1,688億円

(2) 損益計算書


前期と比較して売上高、売上総利益ともに増加しています。原価率の上昇が見られますが、営業利益は増加しており、収益性は維持されています。販売費及び一般管理費も増加していますが、事業拡大に伴うものと考えられます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 43,953億円 47,523億円
売上総利益 15,097億円 16,267億円
売上総利益率(%) 34.3% 34.2%
営業利益 3,921億円 4,017億円
営業利益率(%) 8.9% 8.5%


販売費及び一般管理費のうち、役員及び従業員給与手当が4,375億円(構成比36%)、研究開発費が1,144億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の空調・冷凍機事業が全体の売上成長を牽引しています。化学事業は前期比で微減収となりましたが、利益面では一定の水準を確保しています。その他事業も増収となりましたが、利益は減少しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
空調・冷凍機事業 40,288億円 43,845億円 3,333億円 3,510億円 8.0%
化学事業 2,639億円 2,630億円 515億円 461億円 17.5%
その他 1,026億円 1,048億円 73億円 45億円 4.3%
調整額 -億円 -億円 0億円 0億円 -%
連結(合計) 43,953億円 47,523億円 3,921億円 4,017億円 8.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスとなっており、本業で得た現金を投資と借入返済に充てている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 3,996億円 5,145億円
投資CF -2,272億円 -3,374億円
財務CF -1,296億円 -1,535億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「世界中の人に快適と安心を提供し続ける」ことを使命・責任として掲げています。「グループ経営理念」のもと、高品質な製品・サービスや独自技術の追求を通じて社会課題の解決と地球環境への対応に取り組み、企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


「人を基軸におく経営」を掲げ、働く人の意欲と納得性を引き出し、個人の力を組織の力へ高めることを重視しています。また、自由闊達な議論に基づく「フラット&スピードの組織運営」や、個性を活かす「ダイバーシティ経営」を推進し、グローバルグループとしての進化を目指しています。

(3) 経営計画・目標


2025年度を最終年度とする戦略経営計画「FUSION25」の後半3ヵ年計画を実行中です。企業価値最大化のため、FCF(フリーキャッシュフロー)を最重視しつつ、ROIC、ROA、ROEなどの「率の経営」指標を重視し、積極的な事業展開と経営体質の強化を推進しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「カーボンニュートラルへの挑戦」「顧客とつながるソリューション事業の推進」「空気価値の創造」に加え、「インドの一大拠点化」などを重点戦略として掲げています。2025年度は、販売価格政策の推進やコスト力・調達力の強化、アプライド空調事業の拡大、新商品の投入加速などに取り組み、収益力と競争力の強化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「一人ひとりの成長の総和が企業の発展の基盤」という信念のもと、OJTを軸とした人材育成を展開しています。65歳定年制の導入や、年齢要素を極小化した処遇制度への見直しを行い、若手からベテランまで挑戦・成長できる環境を整備しています。また、ダイバーシティマネジメントの深化により、多様な人材の活躍を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.0歳 16.5年 8,547,704円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.9%
男性育児休業取得率 89.7%
男女賃金差異(全労働者) 80.4%
男女賃金差異(正規雇用) 82.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 65.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、海外拠点の現地人社長比率(42%)、デジタル人材の育成数(約1,800人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変動リスク


政治・外交情勢の不安定化、貿易摩擦、景気後退、天候不順などが業績に影響する可能性があります。また、海外売上高比率が高いため、為替変動の影響を受けます。これに対し、最適調達・生産分担の構築や通貨ごとの輸出入バランス化などでリスク軽減を図っています。

(2) サプライチェーン・調達リスク


サプライヤーの経営悪化や自然災害等による原材料・部品の供給不足、価格高騰のリスクがあります。これに対し、サプライヤーの複数化や自国・自地域内調達化、部品の共通化などを進め、安定調達とコスト抑制に努めています。

(3) 気候変動・環境規制リスク


脱炭素社会への移行に伴い、冷媒ガスの排出規制や省エネルギー規制が強化される可能性があります。規制対応コストの増加や、対応遅れによる販売への影響が懸念されます。一方で、省エネ製品や低温暖化冷媒の開発・普及を通じて、これらの規制強化を事業機会と捉え、積極的に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

ダイキン工業の転職研究 2026年3月期2Q決算に見るキャリア機会

ダイキン工業の2026年3月期2Q決算は、実質ベースで過去最高益を更新。北米のシェア挽回や日本国内の堅調な販売により、外部環境の逆風を跳ね返しています。「なぜ今、ダイキンなのか?」を軸に、RHQ-Americas本格稼働に伴うグローバル体制の刷新や、DX推進によるキャリアの可能性を整理します。


【口コミ評判】ダイキン工業 人工知能と盆踊りが交錯する「巨大な町工場」

エアコンの世界的メーカーとして知られる、ダイキン工業。空調事業と換気事業は世界一、フッ素科学製品でもデュポンに次いで2位の規模を誇っています。一方で、グローバルな印象に反するローカルなイベントも多いとか。企業口コミサイト「キャリコネ」への社員の口コミから、会社の内情を探ります。