ダイキン工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイキン工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するダイキン工業は、ルームエアコンや業務用空調機器を展開する空調・冷凍機事業と、フッ素樹脂等の化学事業を主力とする企業です。直近の連結業績では、国内外での高付加価値商品の拡販等により売上高と各種利益が前期を上回り、増収増益の好調なトレンドを維持しています。


※本記事は、ダイキン工業の有価証券報告書(第123期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダイキン工業ってどんな会社?


空調機器と化学素材をグローバルに展開し、空気と環境の新たな価値を創造する総合メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1924年に大阪金属工業所として創立し、航空機用部品等の生産を開始しました。1934年に会社設立し、1957年には東京証券取引所へ上場を果たしました。1963年に現在のダイキン工業へ社名を変更し、以降グローバルに空調・化学事業を拡大してきました。2024年10月には創業100周年を迎えました。

筆頭株主ならびに第2位株主は、資産管理業務等を行う信託銀行です。第3位株主には海外の金融機関が名を連ねており、国内外の機関投資家から広く支持されていることがうかがえます。連結従業員数は104,095名、単体では8,212名が在籍し、グローバル規模で事業を展開しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 18.43%
日本カストディ銀行(信託口) 7.35%
ステート ストリート バンク アンド トラスト カンパニー 505001 3.77%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性4名の計14名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役会長兼CEOを十河政則氏、代表取締役社長兼COOを竹中直文氏が務めています。社外取締役の比率は28.6%となっています。

氏名 役職 主な経歴
十河政則 代表取締役会長兼CEO 1973年同社入社。秘書室長兼総務部長、取締役兼常務執行役員、取締役兼専務執行役員、代表取締役社長兼COOなどを経て、2024年6月より現職。
竹中直文 代表取締役社長兼COO 1986年同社入社。専任役員、常務専任役員、常務執行役員、専務執行役員などを経て、2024年6月より現職。
髙橋孝一 取締役兼副社長執行役員 1979年同社入社。執行役員、経理財務本部長、取締役兼常務執行役員、専務執行役員などを経て、2024年6月より現職。
森圭子 取締役兼執行役員 1997年同社入社。秘書室秘書担当部長、執行役員を経て、2024年6月より現職。
カンワル・ジート・ジャワ 取締役兼専務専任役員 インド子会社の取締役社長兼CEOなどを歴任し、2018年同社取締役兼専任役員に就任。2023年6月より現職。


社外取締役は、川田達男(セーレン代表取締役会長兼最高経営責任者)、牧野明次(岩谷産業代表取締役会長)、鳥井信吾(サントリーホールディングス代表取締役副会長)、新居勇子(ANAあきんど元取締役副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「空調・冷凍機事業」「化学事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 空調・冷凍機事業


同事業では、住宅用のルームエアコンや空気清浄機、業務用のパッケージエアコンやターボ冷凍機、さらに舶用コンテナ冷凍装置などの製造と販売を行っています。また、環境性に優れた低温暖化冷媒を用いた機器の開発にも注力し、幅広い顧客に提供しています。

収益源はこれらの製品の販売代金や施工・保守サービス料です。運営は同社に加え、ダイキンHVACソリューション東京や海外子会社である大金空調(上海)などがグローバルな体制で事業を担っています。

(2) 化学事業


同事業は、冷媒としてのフルオロカーボンガスをはじめ、半導体製造装置向け等のフッ素樹脂、半導体用エッチング剤や撥水撥油剤などの化成品の製造・販売を展開しています。多様な産業分野に向けて高機能な素材を提供しています。

収益源はフッ素関連製品や化成品の販売代金です。事業の運営は同社を中心に、国内のダイキンファインテックや、米国のダイキンアメリカ、中国の大金フッ素化学などの子会社が国内外で製造・販売活動を行っています。

(3) その他事業


同事業では、産業機械用および建機・車両用の油圧機器などの油機関連製品に加え、防衛省向けの特機関連製品や在宅酸素医療用機器、さらに設計開発向けCADシステム等の電子システム関連製品を提供しています。

収益は各種機器やシステムの販売から得ています。運営は同社のほか、ダイキン・ザウアーダンフォスやダイキン油機エンジニアリングなどの国内子会社と、海外子会社のデュプロマティック等のグループ各社が連携して行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期の業績推移をみると、売上高は一貫して拡大基調にあり、直近では5兆円を突破しています。経常利益も概ね増加傾向で推移しており、堅調な利益水準を維持しています。利益率は7〜10%台で安定しており、事業のグローバル展開や高付加価値商品の拡販が業績の成長を力強く牽引していることがうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 31,091億円 39,816億円 43,953億円 47,523億円 50,150億円
経常利益 3,275億円 3,662億円 3,545億円 3,664億円 4,082億円
利益率(%) 10.5% 9.2% 8.1% 7.7% 8.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 1,538億円 1,428億円 1,442億円 1,688億円 1,852億円

(2) 損益計算書


売上高と売上総利益がともに増加しており、増収に伴って粗利の規模も順調に拡大しています。売上総利益率はほぼ同水準を保ちつつ、営業利益率も安定した推移を示しており、厳しい事業環境下においても原価管理や販管費のコントロールが適切に行われ、着実に本業で稼ぐ力を維持していることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 47,523億円 50,150億円
売上総利益 16,267億円 17,325億円
売上総利益率(%) 34.2% 34.5%
営業利益 4,017億円 4,150億円
営業利益率(%) 8.5% 8.3%


販売費及び一般管理費のうち、役員及び従業員給与手当が4,717億円(構成比36%)、製品保証引当金繰入額が1,329億円(同10%)、研究開発費が1,280億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の空調・冷凍機事業は、国内や欧州などで高付加価値商品の販売が好調に推移し増収増益となりました。化学事業は半導体需要の回復遅れなどが響き増収減益でしたが、その他事業は産業機械用油圧機器の販売増などにより増収増益を果たし、全体として力強い業績を示しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
空調・冷凍機事業 43,845億円 46,211億円 3,510億円 3,770億円 8.2%
化学事業 2,630億円 2,815億円 461億円 331億円 11.8%
その他 1,048億円 1,124億円 45億円 49億円 4.4%
連結(合計) 47,523億円 50,150億円 4,017億円 4,150億円 8.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で獲得した資金を用いて設備投資や成長投資を行いながら、余剰資金で借入金の返済や株主還元を適切に進めている「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。安定したキャッシュ創出力を背景に、財務基盤の強化と事業成長を両立しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 5,145億円 4,658億円
投資CF -3,374億円 -3,222億円
財務CF -1,535億円 -1,564億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「世界中の人に快適と安心を提供し続けること」を使命・責任として掲げています。「グループ経営理念」に基づき、社会課題の解決や地球環境への対応に積極的に取り組み、高品質なプロダクトや独自の技術革新を追求することで、顧客や社会に新たな価値を提供し続け、企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、働く人の意欲と納得性を引き出し、一人ひとりの力を組織の力に高める「人を基軸におく経営」を実践しています。また、侃々諤々の議論に基づく「フラット&スピードの組織運営」や、個性を活かす「ダイバーシティ経営」など独自の良き伝統を磨き上げることで、持続可能で豊かな未来の開拓に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2030年を見据えた戦略経営計画「FUSION30」を策定し、実行を開始しています。この計画では「『環境と空気の新たな価値』を提供し、世界で選ばれ続ける高収益なサステナブル企業をめざす」ことを目標に掲げています。企業価値の最大化に向け、ROEやROICなどの「率の経営」に加え、フリーキャッシュフローも重視しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「FUSION30」のもと、「ソリューションプロバイダへの変革」などを重点テーマに設定し、高収益領域での成長や収益体質の強靭化を進めています。激しい環境変化に対応するため、販売価格政策の推進、変動費低減によるコスト競争力強化、グローバルでのサービス・ソリューション事業の収益拡大などに注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人は仕事の経験を通じて成長する」という考えのもと、OJTを軸に適性を見極めて仕事を任せる人材育成を展開しています。「人材価値の最大化」を経営基盤の高度化テーマに掲げ、国内外での幹部・リーダー育成や、独自のAI・IoT人材を育成する情報技術大学など、多様な能力を伸ばす投資を積極的に行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.2歳 16.6年 8,964,767円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.3%
男性育児休業取得率 98.1%
男女賃金差異(全労働者) 81.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 83.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 69.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、海外拠点の現地人社長比率(41%)、海外拠点の現地人取締役比率(49%)、情報技術大学におけるデジタル人材育成目標達成数(2000人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変化と為替・資金調達

各国の政策動向、通商摩擦、景気後退や感染症拡大等により市場環境が悪化し、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、海外売上高比率が高いため、為替相場の変動が円換算後の価値や調達コストに影響するリスクや、金利上昇等による資金調達環境の悪化が財務状況に影響を与えるリスクが存在します。

(2) 技術・商品戦略と買収・提携の遅れ

急激な環境変化や想定外の技術・サービスの出現により、新商品投入や新規事業の立ち上げが遅れ、競争優位性が低下するリスクがあります。さらに、事業拡大を目指して推進するM&Aや他社との提携において、市場環境の悪化や統合プロセスの遅延により、期待したシナジーや投資成果が得られない可能性があります。

(3) 気候変動等環境への対応

温室効果ガスの排出規制や省エネルギー規制が強化される中、これらに適合するためのコストが増加するリスクがあります。また、低炭素社会への移行に向けた対応の遅延が販売活動に支障をきたすほか、異常気象による大規模災害が生産拠点やサプライチェーンに被害をもたらし、事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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