日産自動車 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日産自動車 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の自動車メーカーです。自動車及び部品の製造・販売を主力とし、販売金融事業も展開しています。当期はグローバル販売台数の減少や販売奨励金の増加等により、売上高は微減、営業利益は大幅な減益となり、最終損益は赤字に転落しました。経営再建計画「Re:Nissan」を推進中です。


※本記事は、日産自動車株式会社 の有価証券報告書(第126期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日産自動車ってどんな会社?


グローバルに展開する自動車メーカーです。「人々の生活を豊かに」というビジョンのもと、革新的なクルマやサービスを提供しています。

(1) 会社概要


1933年に自動車製造として設立され、翌年日産自動車へ改称しました。1999年にルノーと資本提携契約を締結し、アライアンスを形成しました。2010年にはダイムラーAGと戦略的協力契約を締結し、2016年には三菱自動車工業へ資本参加しました。2022年の市場区分見直しにより、東証プライム市場へ移行しています。

同グループは連結従業員数132,790名、単体24,413名の体制で運営されています。筆頭株主は、フランスの自動車大手ルノーが信託した株式を保有する金融機関であり、第2位株主としてルノー本体が名を連ねています。両社は長年にわたりアライアンス関係にあり、資本及び業務面で提携しています。

氏名 持株比率
ナティクシス エスエイ アズ トラスティー フォー フィデューシー ニュートン 701910 18.80%
ルノー エスエイ 17.10%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 7.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性3名の計17名で構成され、女性役員比率は18.0%です。代表執行役社長兼最高経営責任者はイヴァン エスピノーサ氏です。取締役12名のうち社外取締役が8名を占め、比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
イヴァン エスピノーサ 代表執行役社長兼最高経営責任者 メキシコ日産自動車会社入社後、日産インターナショナル社VP、同社専務執行役員などを経て、2025年4月より現職。
坂本 秀行 取締役 1980年同社入社。常務執行役員、副社長、ジヤトコ取締役会長などを経て2020年2月より現職。
内田 誠 取締役 日商岩井入社後、2003年同社入社。専務執行役員、代表執行役社長兼最高経営責任者などを経て2020年2月より現職。
赤石 永一 執行役チーフテクノロジーオフィサー 1990年同社入社。北米日産会社車両開発VP、常務執行役員、株式会社NMKV社長などを経て2025年4月より現職。
平田 禎治 執行役チーフモノづくりオフィサー 1991年同社入社。栃木工場部長、常務執行役員、アライアンスグローバルVPを経て2025年4月より現職。
スティーブン マー 執行役中国マネジメントコミッティ議長 北米日産会社入社。東風汽車有限公司CFO、同社執行役CFOなどを経て2025年1月より現職。
ジェレミー パパン 執行役最高財務責任者 ドイツ銀行等を経てルノー社VP、北米日産会社CFO、同社専務執行役員などを歴任。2025年1月より現職。


社外取締役は、木村康(元JXホールディングス会長)、ベルナール デルマス(元日本ミシュランタイヤ会長)、井原慶子(レーシングドライバー)、永井素夫(元みずほ信託銀行副社長)、アンドリュー ハウス(元ソニー・インタラクティブエンタテインメント社長)、ブレンダ ハーヴィー(元IBMアジアパシフィック会長)、朝田照男(元丸紅社長)、得能摩利子(元フェラガモ・ジャパン社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動車事業」および「販売金融事業」の2つの報告セグメントを展開しています。

(1) 自動車事業


日本、北米、欧州、アジア等の世界各国で、自動車及び部品の製造と販売を行っています。一般消費者や法人顧客向けに、乗用車や商用車、EV(電気自動車)などの多様なモビリティを提供しており、関連部品やアフターサービスも展開しています。

収益は、顧客への車両・部品の販売代金やアフターサービス料などから得ています。運営は、同社を中心に、北米日産会社、欧州日産自動車会社、東風汽車有限公司(持分法適用会社)などの各国の連結子会社や関連会社が担っており、グローバルな生産・販売体制を構築しています。

(2) 販売金融事業


自動車事業の販売活動を支援するため、車両を購入する顧客や販売会社に対して金融サービスを提供しています。具体的には、消費者向けのオートローンやリース、販売店向けの在庫金融などが含まれます。

収益は、顧客や販売店からの金利収入やリース料などから得ています。運営は、株式会社日産フィナンシャルサービス、米国日産販売金融会社などの金融子会社が行っており、自動車販売と連携した金融ソリューションを提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にありましたが、当期は横ばいとなりました。利益面では、2021年3月期に大きな赤字を計上した後、黒字回復を果たしていましたが、当期は再び最終赤字に転落しています。営業利益率等の収益性指標も低下しており、厳しい状況にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 78,626億円 84,246億円 105,967億円 126,857億円 126,332億円
経常利益 -2,212億円 3,061億円 5,154億円 7,022億円 2,102億円
利益率(%) -2.8% 3.6% 4.9% 5.5% 1.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -4,487億円 2,155億円 2,219億円 4,266億円 -6,709億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高はほぼ横ばいですが、売上原価の増加により売上総利益が減少しています。さらに販売費及び一般管理費が増加したことで、営業利益は大幅に減少しました。営業利益率は前期の4.5%から0.6%へと大きく低下しており、収益性の悪化が顕著です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 126,857億円 126,332億円
売上総利益 20,669億円 16,934億円
売上総利益率(%) 16.3% 13.4%
営業利益 5,687億円 698億円
営業利益率(%) 4.5% 0.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4,922億円(構成比30.3%)、広告宣伝費が3,475億円(同21.4%)を占めています。

(3) セグメント収益


自動車事業は販売台数の減少等により減収となり、営業損益は赤字に転落しました。一方、販売金融事業は増収を確保したものの、資金調達コストの増加等により減益となりました。自動車事業の不振が連結業績の悪化に大きく影響しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
自動車事業 115,829億円 114,379億円 2,216億円 -2,680億円 -2.3%
販売金融事業 11,029億円 11,954億円 3,087億円 2,856億円 23.9%
調整額 -億円 -億円 384億円 521億円 -%
連結(合計) 126,857億円 126,332億円 5,687億円 698億円 0.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金と財務活動による調達資金を原資として、将来に向けた投資を積極的に行う「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 9,609億円 7,537億円
投資CF -8,127億円 -9,712億円
財務CF -1,316億円 2,633億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-12.3%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も26.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける。」というコーポレートパーパスを定めています。これは、長年の企業ビジョン「人々の生活を豊かに」を踏まえ、企業としての存在意義を明確化したものです。社会が直面する課題解決に貢献し、持続可能なモビリティ社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


創業以来、「他がやらぬことをやる」という精神を大切にしています。この精神を引き継ぎながら、サプライヤーや販売会社との関係を強化し、共にビジネスモデルを発展させることを重視しています。ステークホルダーを大切にし、持続可能な社会の発展に貢献する姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


経営再建計画「Re:Nissan」を掲げ、2026年度までに自動車事業における営業利益とフリーキャッシュフローの黒字化を目指しています。コスト削減、戦略の再定義、パートナーシップの強化を柱とし、固定費と変動費を2024年度実績比で計5,000億円削減する計画です。

* 2026年度までに変動費2,500億円削減(2024年度比)
* 2026年度までに固定費2,500億円削減(2024年度比)
* 車両生産工場を2027年度までに17から10へ統合
* 2024年度から2027年度にかけて計20,000人の人員削減

(4) 成長戦略と重点施策


市場戦略と商品戦略を再定義し、ブランド力向上と効率化を図ります。商品ポートフォリオをHEARTBEATモデル中心に再構築し、開発期間の短縮や部品の削減を進めます。また、パートナーシップを強化し、ルノーや三菱自動車工業、本田技研工業との連携を通じて、電動化や知能化技術の活用、ラインアップの拡充を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「HR Ambition 2030」に基づき、従業員体験の強化、スキル重視の人財マネジメント、リーダーシップ強化等を推進しています。特に電動化や技術革新を支えるエンジニアの採用を強化し、多様な人材が活躍できる「ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン」の実現を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.0歳 14.7年 8,956,336円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.5%
男性育児休業取得率 65.5%
男女賃金差異(全労働者) 83.8%
男女賃金差異(正規雇用) 81.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 81.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、研究開発部門における先進技術領域の採用人数(約2,300名)、女性管理職人数(374名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 通貨、金利並びにコモディティ価格のリスク


同社グループはグローバルに事業を展開しており、為替変動、金利上昇、原材料価格の変動リスクにさらされています。現地生産や外貨建て調達等の対策を行っていますが、想定を超える変動が生じた場合、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。特に円高は業績に悪影響を与える要因となります。

(2) 販売金融事業のリスク


販売金融事業は自動車販売を支援する重要な事業ですが、金利変動、顧客の信用リスク、中古車残存価格変動のリスクがあります。厳格な審査やリスク管理を行っていますが、格付低下による資金調達コストの上昇や、経済状況の悪化による貸倒れの増加などが、業績に負の影響を与える可能性があります。

(3) 国際的活動及び海外進出に関するリスク


世界各地で事業を行う同社にとって、各国の政治・経済情勢の変化は大きなリスクです。特に米国や中国などの主要市場における関税政策の変更、地政学的緊張、法規制の変更などが事業活動に影響を与える可能性があります。また、テロや紛争、パンデミックなどの社会的混乱もリスク要因となります。

(4) 気候変動によるリスク


環境規制の強化に伴い、電動化への対応が急務となっています。脱炭素社会への移行に向けた法規制への対応遅れや、異常気象による自然災害の激甚化はリスクとなります。カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを進めていますが、対応コストの増加や市場ニーズの変化への対応が不十分な場合、競争力低下を招く恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

日産の転職研究 2026年3月期2Q決算に見るキャリア機会

日産の2026年3月期2Q決算は、営業損失277億円の赤字。経営再建計画「Re:Nissan」に基づき、本社ビル売却や5,000億円規模のコスト削減を断行しています。構造改革の真っ只中にある同社で、転職希望者がどのような専門性を発揮し、再建の主役を担えるのかを整理します。


【面接対策】日産自動車の中途採用面接では何を聞かれるのか

国内第3位、11兆円を超える売上高を誇る自動車メーカー大手、日産自動車への転職。採用面接は新卒の場合と違い、これまでの仕事への取り組み方や成果を具体的に問われるほか、キャリアシートだけでは見えてこない「人間性」も評価されます。即戦力として、ともに働く仲間として多角的に評価されるので事前にしっかり対策をすすめましょう。


経営者のゴタゴタが続く日産自動車 口コミ分析から見る企業体質

役員報酬をめぐる問題が相次いでいる。 カルロス・ゴーン氏が役員報酬の未払い分を隠蔽したとして、2018年11月金融商品取引法違反で東京地検特捜部に逮捕(その後、特別背任容疑で追起訴)。ついで2019年6月に元幹部への雑誌インタビューで露見した、西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)の役員報酬不正上乗せ疑惑。