日産自動車 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日産自動車 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日産自動車は東京証券取引所プライム市場に上場し、自動車及び部品の製造・販売と販売金融事業をグローバルに展開する企業です。直近の業績では、販売競争の激化や急激な為替変動の影響等により前年比で減収となり、営業利益や経常利益が大幅に減少したほか、最終利益は赤字を計上する厳しい経営環境にあります。


※本記事は、日産自動車株式会社 の有価証券報告書(第127期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日産自動車ってどんな会社?


同社は、世界各地で自動車及び部品の製造と販売を手がけ、それを支援する販売金融事業を展開するグローバル企業です。

(1) 会社概要


同社は1933年に自動車製造として設立され、1934年に現在の日産自動車へと社名変更しました。1951年に東京証券取引所へ上場し、1958年の対米輸出開始を皮切りにグローバル展開を加速させました。1999年にはフランスのルノーと資本参加を含む提携契約を締結し、近年では持続可能なモビリティ社会の実現に向けた事業転換を進めています。

同社グループの従業員数は連結で120,079名、単体で23,174名です。大株主については、筆頭株主であるナティクシス エスエイ(信託経由の実質保有)、第2位のルノー エスエイはともに資本提携等の関係を持つ事業会社・提携先であり、第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
ナティクシス エスエイ アズ トラスティー フォー フィデューシー ニュートン 701910(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) 18.70%
ルノー エスエイ(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) 17.10%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性4名の計14名で構成され、女性役員比率は29.0%です。代表執行役社長兼最高経営責任者はイヴァンエスピノーサ氏が務めています。取締役12名のうち8名が独立社外取締役であり、社外取締役比率は66.7%に達しています。

氏名 役職 主な経歴
イヴァン エスピノーサ 取締役 代表執行役社長兼最高経営責任者 2003年メキシコ日産自動車入社。タイ日産自動車等を経て、2025年4月より現職。東風汽車有限公司取締役を兼務。
赤石 永一 取締役 執行役チーフテクノロジーオフィサー 1990年同社入社。北米日産会社車両開発VP、アライアンスグローバルVP等を経て、2025年4月より現職。


社外取締役は、木村康(元JX日鉱日石エネルギー社長)、ベルナールデルマス(元日本ミシュランタイヤ社長)、井原慶子(Future代表取締役)、永井素夫(元みずほ信託銀行副社長)、アンドリューハウス(元ソニー・インタラクティブエンタテインメント社長)、ブレンダハーヴィー(元IBMアジアパシフィック会長兼CEO)、朝田照男(元丸紅社長)、得能摩利子(元クリスチャン・ディオール社長)、ヴァレリーランドン(元クレディ・スイスフランス等最高経営責任者)、ティモシーライアン(元BPCEグループグローバルCEO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動車事業」および「販売金融事業」を展開しています。

**自動車事業**
本セグメントでは、グローバル市場における自動車および部品の製造・販売を主に行っています。日本、北米、欧州、中国をはじめとする世界各地を拠点に、多様な顧客ニーズに応える自動車を企画・開発し、一般消費者や法人顧客に幅広く提供しています。
収益は、顧客に対する自動車や関連部品の販売代金から得ています。事業の運営は、同社を中心に、日産車体、日産自動車九州などの国内子会社、および北米日産会社、メキシコ日産自動車会社などの海外の多数の連結子会社が担っています。

**販売金融事業**
本セグメントでは、自動車事業における販売活動を支援するため、顧客に対する販売金融サービスの提供とリース事業を行っています。新車や中古車を購入する一般消費者や法人顧客、また同社製品を取り扱う販売店を主な対象としています。
収益は、顧客へ提供する自動車ローンやリースに係る利息収入・リース料、および販売店向けの在庫金融や運転資金貸付による利息から得ています。事業の運営は、日産フィナンシャルサービスなどの国内子会社や、米国日産販売金融会社などの海外子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は一時12兆円台まで拡大したものの、直近では減収に転じています。経常利益も前期まで回復傾向にありましたが、直近では事業環境の悪化により大幅な減益となり、当期利益については厳しい最終赤字を計上する結果となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 8兆4246億円 10兆5967億円 12兆6857億円 12兆6332億円 12兆79億円
経常利益 3061億円 5154億円 7022億円 2102億円 11億円
利益率(%) 3.6% 4.9% 5.5% 1.7% 0.0%
当期利益(親会社所有者帰属) -1144億円 2683億円 4178億円 -6709億円 -5331億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い売上総利益も減少しており、利益率も悪化しています。販売費及び一般管理費等の削減に努めているものの、営業利益は減少傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 12兆6332億円 12兆79億円
売上総利益 1兆6934億円 1兆5400億円
売上総利益率(%) 13.4% 12.8%
営業利益 698億円 580億円
営業利益率(%) 0.6% 0.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4694億円(構成比32%)、広告宣伝費が3153億円(同21%)を占めています。なお、売上原価の具体的な内訳に関するデータはありません。

(3) セグメント収益


自動車事業は、販売台数の減少により減収となり、米国関税や為替変動の影響を受け営業損失が拡大しています。一方、販売金融事業は、損失引当金の減少などにより増益を確保しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
自動車事業 11兆4379億円 10兆7603億円 -2680億円 -2929億円 -2.7%
販売金融事業 1兆1954億円 1兆2476億円 2856億円 2979億円 23.9%
連結(合計) 12兆6332億円 12兆79億円 698億円 580億円 0.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持しており、設備やリース車両等への積極的な投資を外部借入も活用しながら推進している積極型の状態にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 7537億円 7947億円
投資CF -9712億円 -9143億円
財務CF 2633億円 519億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-10.9%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は24.2%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、創業以来「移動と社会の可能性を広げることで人々の生活を豊かにする」ことをコーポレートパーパス(存在意義)として掲げています。この考え方のもと、信頼される企業として革新的なクルマやサービスを創造し、すべてのステークホルダーに優れた価値を提供し続けることを使命としています。

(2) 企業文化


同社は、日産のDNAである「他のやらぬことを、やる」という精神を体現し、従業員一人ひとりの能力を最大限に引き出す企業文化を重視しています。また、国籍や性別に関わらず多様な人材が活躍できるよう、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(多様性、公平性、包括性)の推進を組織の基盤としています。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営再建計画「Re:Nissan」のもと、実行性と規律を重視した抜本的改革に取り組んでいます。2026年度までに自動車事業における営業利益およびフリーキャッシュフローの黒字化を目指しており、固定費・変動費を合わせて総額5000億円規模のコスト削減を目標に掲げています。
・変動費削減:2025年度末で550億円
・固定費削減:2025年度末で2000億円

(4) 成長戦略と重点施策


長期ビジョン「モビリティの知能化で、毎日を新たな体験に」のもと、AIディファインドビークル(AIDV)を中核とした次世代技術の開発と電動化を推進しています。
・将来的にはAIドライブ技術搭載モデルをラインアップの約9割へ拡大
・車種を56車種から45車種へ最適化
・日本、米国、中国をリード市場としたグローバル戦略の展開

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「協働と挑戦を通じて成長し続けるプロフェッショナル人財の育成」を基本方針としています。これを具体化するため、従業員体験の強化、スキル重視の人財マネジメント、リーダーシップの強化などを推進し、従業員が自律的にスキルを磨き、個人の尊厳と人権が尊重される働きやすい環境づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.9歳 14.9年 8,571,467円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.3%
男性育児休業取得率 75.5%
男女賃金差異(全労働者) 84.7%
男女賃金差異(正規雇用) 83.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 79.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、先進技術領域での新規採用目標(2030年度までに3,000人)、2025年度末までの同領域採用実績(約2,600人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

**(1) 世界経済や景気の急激な変動**
同社グループの需要は各国の経済状況の影響を強く受けます。米国による関税政策や中東地域の地政学リスク、世界的なサプライチェーンの混乱による原材料・エネルギー価格の高騰が生じた場合、製造・物流コストの大幅な上昇を招き、業績や財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

**(2) 自動車市場における急激な変動**
自動車業界ではCASEやAIなどの技術革新が進み、従来のビジネスモデルが大きく変革しています。環境や市場の変化、温室効果ガス規制への対応遅れ、あるいは開発費負担の増大などが生じ、顧客ニーズに合った製品をタイムリーに提供できない場合、競争力を失い業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

**(3) 金融市場に係るリスク**
世界13の市場で生産し約160の市場で販売を行う同社にとって、為替レートの変動は業績に直結します。また、金利やコモディティ価格の変動、保有する有価証券の価格変動、国内外の格付機関による格付引き下げに伴う資金調達への支障なども、同社グループの業績及び財務状況に負の影響を与えるリスクとなります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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