※本記事は、株式会社東京エレクトロン の有価証券報告書(第62期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東京エレクトロンってどんな会社?
世界的な半導体製造装置メーカーとして、コータ/デベロッパやエッチング装置など、半導体製造プロセスの主要工程をカバーする製品群を展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1963年11月、東京放送の関係会社として株式会社東京エレクトロン研究所を設立し創業しました。1978年10月に株式額面の変更を目的として形式上の合併を行い、1980年6月に東京証券取引所市場第二部へ上場、1984年3月には同市場第一部へ指定替えとなりました。グローバル展開も早期から進め、1994年4月には欧州現地法人を設立しています。2017年7月には国内製造子会社を合併し、東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ株式会社を発足させるなど、生産体制の効率化も進めています。
同社グループは連結従業員数19,573名、単体2,224名の体制で事業を展開しています。大株主構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には創業時に出資を受けた経緯があり、長期的関係にある株式会社TBSホールディングスが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 25.23% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 10.33% |
| TBSホールディングス | 3.28% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長兼CEOは河合利樹氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 河合 利樹 | 代表取締役社長CEOコーポレートオフィサー | 1986年4月同社入社。執行役員、副社長兼COOを経て、2016年1月より代表取締役社長兼CEO。2022年6月よりコーポレートオフィサーを兼務。 |
| 佐々木 貞夫 | 代表取締役副社長コーポレートオフィサー | 1985年4月同社入社。東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ社長等を経て、2022年6月より代表取締役副社長兼コーポレートオフィサー。 |
| 布川 好一 | 取締役取締役会議長 | 1982年4月同社入社。執行役員、常勤監査役、専務執行役員を経て、2022年6月より取締役会議長。 |
社外取締役は、佐々木道夫(SHIFT取締役会長)、市川佐知子(田辺総合法律事務所パートナー)、ジョセフ・クラフト(Rorschach Advisory Inc. CEO)、鈴木ゆかり(元資生堂代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「半導体製造装置」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) 半導体製造装置事業
同社グループは、エレクトロニクス技術を利用した半導体製造装置の開発・製造・販売を行っています。主要製品には、コータ/デベロッパ、エッチング装置、成膜装置、洗浄装置、ウェーハプローバなどがあり、半導体製造プロセスの広範な工程をカバーしています。主な顧客は世界の主要な半導体デバイスメーカーです。
収益は、顧客への装置販売による対価のほか、納入済み装置に対する保守用部品の販売、保守サービス、装置改造などのフィールドソリューションサービスの提供から得ています。国内での製造は主に東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ株式会社、東京エレクトロン九州株式会社、東京エレクトロン宮城株式会社が行い、販売は同社が仕入れて行っています。海外では現地法人が販売・サービスを担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は半導体市場の拡大に伴い増加傾向にあり、特に当期は2兆4316億円と過去最高を記録しました。経常利益も売上の伸長に合わせて大幅に増加し、当期は7077億円に達しています。利益率も20%台後半から30%程度の高い水準を維持しており、収益性の高さが際立っています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 1兆3991億円 | 2兆38億円 | 2兆2090億円 | 1兆8305億円 | 2兆4316億円 |
| 税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 | 3221億円 | 6017億円 | 6252億円 | 4632億円 | 7077億円 |
| 利益率(%) | 23.0% | 30.0% | 28.3% | 25.3% | 29.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2114億円 | 3581億円 | 4846億円 | 3402億円 | 4248億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益、営業利益ともに大きく伸長しています。売上総利益率は40%台後半の高い水準を維持し、さらに改善傾向にあります。営業利益率も向上しており、効率的な事業運営と高付加価値製品の販売が利益拡大に寄与していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1兆8305億円 | 2兆4316億円 |
| 売上総利益 | 8303億円 | 1兆1463億円 |
| 売上総利益率(%) | 45.4% | 47.1% |
| 営業利益 | 4563億円 | 6973億円 |
| 営業利益率(%) | 24.9% | 28.7% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が2500億円(構成比56%)、給料及び手当が510億円(同11%)を占めています。積極的な研究開発投資を継続していることがわかります。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動によるキャッシュ・フローと財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであることから、本業で稼いだ資金を使って投資を行い、借入金の返済や株主還元を進めている「健全型」と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4347億円 | 5822億円 |
| 投資CF | -1251億円 | -1696億円 |
| 財務CF | -3250億円 | -3888億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は30.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.1%で市場平均を上回っており、収益性と安全性の両面で高い水準にあります。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「最先端の技術と確かなサービスで、夢のある社会の発展に貢献します」という基本理念を掲げています。また、「半導体の技術革新に貢献する夢と活力のある会社」をビジョンとし、半導体製造装置のリーディングカンパニーとして、世の中の持続的な発展に不可欠な半導体の技術革新に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「企業の成長は人、社員は価値創出の源泉」と位置づけ、社員のチャレンジ精神と環境変化への柔軟な対応力を原動力としています。また、企業の専門性を活用して社会課題を解決することで、社会的価値と経済的価値を創出する「TEL's Shared Value (TSV)」の考え方に基づき、ステークホルダーとのエンゲージメントを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、中期経営計画として以下の財務目標を設定しています。
* 2027年3月期までに売上高3兆円以上
* 営業利益率35%以上
* ROE 30%以上
これらを達成するために、半導体の微細化と先端パッケージングの両領域へ付加価値の高い新製品と技術サービスを提供することを目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は将来の成長機会を最大限に取り込むため、積極的な成長投資を計画しています。技術革新が続く半導体市場において、幅広い製品ラインアップと業界最大の特許保有数を活かし、付加価値の高い次世代装置の開発に注力します。また、デジタル化と脱炭素化を支える技術革新に貢献しつつ、高収益企業を目指します。
* 研究開発投資:1.5兆円以上(5年累計)
* 設備投資:7,000億円以上(5年累計)
* 人材採用:グローバルで10,000人(5年累計)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「やる気重視経営」を掲げ、社員のエンゲージメント向上に取り組んでいます。具体的には、産業や社会への貢献実感、将来への夢と期待、チャレンジ機会の提供、公正な評価と競争力のある報酬、風通しの良い職場環境の5点を重視しています。また、Global、Gender、Generationの3G観点でのダイバーシティ推進や、次世代経営人材の育成(TELサクセッションプラン)にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.5歳 | 14.9年 | 13,543,475円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.0% |
| 男性育児休業取得率 | 77.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 59.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 60.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 57.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員の定着率(日本:99.1%)、社員の定着率(海外:97.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 半導体市場の変動リスク
半導体市場は技術革新により中長期的成長が見込まれますが、世界経済や地政学的要因により需給バランスが崩れ、短期的に市場規模が変動する可能性があります。同社の売上は大手半導体メーカーの投資動向の影響を受けやすく、急激な市場縮小時は過剰在庫や貸倒損失、急拡大時は機会損失が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、市場動向の常時把握や生産・在庫計画の適正化を図っています。
■(2) 研究開発と技術革新への対応
最先端技術への継続的な研究開発投資を行い、新製品を早期投入することで競争力を維持していますが、顧客要求へのタイムリーな対応や競合他社の先行により製品競争力を失うリスクがあります。同社はコーポレートイノベーション本部を設置し、全社的な開発体制の構築や、グローバルな研究機関との共同研究、主要顧客とのロードマップ共有を通じて、次世代製品を競合に先駆けて提供する体制を整えています。
■(3) 地政学的リスク
海外売上高比率が高い同社にとって、国際秩序や地政学的対立は事業活動に影響を与える可能性があります。各国・地域の安全保障や産業政策による輸出入規制、技術開発規制、マクロ経済の悪化等がサプライチェーンや業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。同社は国際情勢や政策動向を注視し、影響分析と事前対策の検討を行うとともに、関係機関との対話を通じてリスクの早期発見と適切な対応に努めています。
■(4) 調達・生産・供給体制のリスク
主要生産拠点が国内にあり、自然災害や事故等による生産停止リスクがあります。また、サプライヤーの経営悪化や市場拡大による需給逼迫、物流網の混乱等により部材調達が滞った場合、製品供給に支障をきたす可能性があります。同社は事業継続計画(BCP)の策定、代替生産体制の確立、生産拠点の耐震強化、重要部品のマルチソース化、適正在庫の確保等により、安定供給体制の構築に取り組んでいます。



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