※本記事は、東京エレクトロン株式会社 の有価証券報告書(第63期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東京エレクトロンってどんな会社?
半導体製造装置の開発・製造・販売・保守サービスを展開するグローバル企業です。
■(1) 会社概要
1963年に設立され、電子機器等の輸出入業務からスタートしました。1980年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1984年には市場第一部へ指定替えとなりました。その後、開発製造機能をもつメーカーへの移行を進め、国内外にグループ会社を設立するなど、グローバルな販売・サポート体制を構築しています。
従業員数は連結で20,236名、単体で2,309名です。筆頭株主および第2位の株主は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位の株主には、創業時に出資を受け長期的な関係を維持している事業会社のTBSホールディングスが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 24.43% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 10.13% |
| TBSホールディングス | 3.31% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長CEOコーポレートオフィサーは河合利樹氏が務めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 河合利樹 | 代表取締役社長CEOコーポレートオフィサー | 1986年同社入社。執行役員、代表取締役副社長兼COOを経て、2016年1月より現職。 |
| 佐々木貞夫 | 代表取締役副社長コーポレートオフィサー | 1985年同社入社。東京エレクトロンテクノロジーソリューションズ社長等を経て、2022年6月より現職。 |
| 田原計志 | 取締役取締役会議長 | 1984年テル・バリアン入社。東京エレクトロンソフトウェア・テクノロジーズ社長、同社監査役等を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、佐々木道夫(元キーエンス社長)、市川佐知子(田辺総合法律事務所パートナー)、ジョセフ・クラフト(元Bank of America Merrill Lynch Japan副支店長)、鈴木ゆかり(元資生堂代表取締役)、篠原幸弘(元デンソー代表取締役副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「半導体製造装置」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) 半導体製造装置事業
エレクトロニクス技術を利用した半導体製造装置の開発・製造・販売、および納入済み装置に対する保守用部品、サービス、装置改造の提供などを行っています。コータ/デベロッパ、エッチング装置、成膜装置、洗浄装置などの幅広い製品ラインアップを持ち、世界中の大手半導体メーカー等へ最先端の製品を提供しています。
国内外の顧客に対する装置の販売や、保守サービス等の提供から対価を得る収益モデルです。事業の運営は、東京エレクトロンが製品の販売等を担い、東京エレクトロンテクノロジーソリューションズや東京エレクトロン九州、東京エレクトロン宮城などの連結子会社が製品の製造および開発を担当する体制で推進しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は半導体需要の拡大を背景に概ね増加傾向にあり、直近の2026年3月期には過去最高を更新しています。経常利益率も一貫して25%以上の高い水準を維持しており、一時的な市況の変動を受けつつも、高付加価値製品の提供により安定した高収益基盤を確立していることが分かります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 20,038億円 | 22,090億円 | 18,305億円 | 24,316億円 | 24,435億円 |
| 経常利益 | 6,017億円 | 6,252億円 | 4,632億円 | 7,077億円 | 6,303億円 |
| 利益率(%) | 30.0% | 28.3% | 25.3% | 29.1% | 25.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3,581億円 | 4,846億円 | 3,402億円 | 4,248億円 | 4,771億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期の損益構成を見ると、売上高が微増となる一方で、売上総利益および営業利益は減少しています。これは、原材料の価格高騰や人件費の増加、さらに次世代の技術革新を見据えた研究開発への積極的な投資負担が先行したためです。それでも営業利益率は25%を超える非常に高い水準を保っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 24,316億円 | 24,435億円 |
| 売上総利益 | 11,463億円 | 11,079億円 |
| 売上総利益率(%) | 47.1% | 45.3% |
| 営業利益 | 6,973億円 | 6,249億円 |
| 営業利益率(%) | 28.7% | 25.6% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が696億円、事務手数料が219億円を占めています。
■(3) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5,822億円 | 5,397億円 |
| 投資CF | -1,696億円 | -965億円 |
| 財務CF | -3,888億円 | -4,254億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は29.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も71.5%であり、いずれも市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「最先端の技術と確かなサービスで、夢のある社会の発展に貢献します」という基本理念を掲げています。また、「半導体の技術革新に貢献する夢と活力のある会社」をビジョンとし、付加価値の高い最先端の装置と技術サービスを創出することで、社会のデジタル化や脱炭素化を支えることを使命としています。
■(2) 企業文化
事業活動における社会的価値と経済的価値の融合を目指す「TSV(TEL's Shared Value)」の考え方を重視しています。「企業の成長は人、社員は価値創出の源泉」と位置づけ、社員一人ひとりが意欲を高め、多様な個性が協力し合って持続的なイノベーションを生み出す挑戦的な組織文化を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画として、2027年3月期を目標年度に以下の数値目標を掲げています。さらに、2025年3月期からの5年間で研究開発や設備投資、人材採用に向けた大規模な成長投資計画も設定し、持続的な利益拡大と企業価値の向上を追求しています。
* 売上高:3兆円以上
* ROE:30%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
半導体の微細化と先端パッケージングの両領域に対して、付加価値の高い新製品や技術サービスを提供することを重点施策としています。業界最大の出荷実績や特許保有数を活かして顧客基盤を拡大するほか、積極的な研究開発や次世代の経営執行を担う人材育成など、企業基盤を支える攻めのガバナンス構築にも取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「やる気重視経営」を掲げ、成果に対する公正な評価やグローバルに競争力のある報酬制度を取り入れています。また、国籍・性別・世代の3つの観点から多様性を推進し、様々なキャリアパスの提示や教育プログラムの充実化を通して、将来の半導体産業を担うグローバルな人材の育成と活躍を強力に支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.1歳 | 14.7年 | 13,804,159円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.7% |
| 男性育児休業取得率 | 83.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 60.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 61.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 57.0% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場変動による影響
半導体市場は世界経済の動向や情報通信技術の進展に伴い中長期的には成長が見込まれるものの、短期的には需給バランスが崩れて市場規模が変動することがあります。需要の急激な縮小による在庫増加や機会損失などが業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 研究開発の不確実性
常に最先端の技術が求められるため、顧客の要求に応える新製品をタイムリーに市場投入できない場合や、競合他社による新技術が先行して投入された場合には、製品の競争力を失い開発コストの回収が困難となるリスクがあります。
■(3) 地政学およびサプライチェーンの混乱
グローバルに事業を展開しているため、国際秩序の対立や地域紛争等の地政学的な要因による各国の輸出入規制等の影響を受けます。また、自然災害や労働人口の減少により部品の調達や物流網が滞ることで、製品の安定供給が困難になるリスクがあります。



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