※本記事は、三井不動産株式会社 の有価証券報告書(第114期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 三井不動産ってどんな会社?
オフィスビル賃貸から商業施設、住宅分譲まで総合的な街づくりを展開する不動産業界のリーディングカンパニーです。
■(1) 会社概要
1941年に設立され、1949年に東京証券取引所に上場しました。1968年に日本初の超高層ビルである霞が関ビルディングを竣工し、1981年には商業施設ららぽーと船橋ショッピングセンターの営業を開始しました。2005年の三井不動産レジデンシャルの設立などを経て、2021年には東京ドームを連結子会社化しています。
同社は連結で27,704名、単体で1,981名の従業員を擁しています。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も信託業務を行う日本カストディ銀行(信託口)、第3位はステート ストリート バンク アンド トラスト カンパニー 505001となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 18.04% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.73% |
| ステート ストリート バンク アンド トラスト カンパニー 505001 | 3.58% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性5名の計18名で構成され、女性役員比率は27.8%です。代表取締役会長は菰田正信、代表取締役社長は植田俊が務めています。社外取締役比率は27.8%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 菰田正信 | 代表取締役会長 | 1978年同社入社。2008年常務執行役員。2011年代表取締役社長、社長執行役員を経て2023年より現職。 |
| 植田俊 | 代表取締役社長 | 1983年同社入社。2016年常務執行役員。2021年取締役、専務執行役員を経て2023年より現職。 |
| 山本隆志 | 代表取締役 | 1990年同社入社。2013年常務執行役員。2019年取締役、専務執行役員を経て2023年より現職。 |
| 鈴木眞吾 | 取締役 | 1987年同社入社。2021年常務執行役員。2024年取締役、専務執行役員を経て2026年より現職。 |
| 徳田誠 | 取締役 | 1987年同社入社。2022年常務執行役員。2024年取締役、専務執行役員を経て2026年より現職。 |
| 斎藤裕 | 取締役 | 1990年同社入社。2023年常務執行役員。2024年取締役、常務執行役員を経て2026年より現職。 |
| 持丸信彦 | 取締役 | 1990年同社入社。2023年常務執行役員。2024年取締役、常務執行役員を経て2026年より現職。 |
| 海藤明子 | 取締役ホテル・リゾート本部長 | 2006年同社入社。2025年常務執行役員、ホテル・リゾート本部長を経て2025年より現職。 |
社外取締役は、中山恒博(元メリルリンチ日本証券会長)、河合江理子(京都大学名誉教授)、引頭麻実(元大和総研専務理事)、日比野隆司(大和証券グループ本社顧問)、本間洋(NTTデータグループ相談役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「賃貸」「分譲」「マネジメント」「施設営業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 賃貸
オフィスビルや商業施設などの賃貸を行っています。国内外の主要都市においてオフィスビルを展開するほか、ららぽーとや三井アウトレットパークなどの商業施設を運営し、入居テナントや利用顧客に価値を提供しています。
入居テナントからの賃料収入などを主な収益源としています。事業の運営は、主に同社およびMITSUI FUDOSAN AMERICA, INC.やMITSUI FUDOSAN (U.K.) LTD.などの連結子会社が行っています。
■(2) 分譲
個人顧客向けに戸建や中高層住宅などの分譲を行うほか、投資家向けに業務施設などの分譲事業を展開しています。国内にとどまらず、シンガポールや米国、英国など海外での住宅分譲も手掛けています。
住宅購入者や投資家への不動産販売による収益を主な収入源としています。国内における住宅分譲の運営は主に三井不動産レジデンシャルが担い、海外ではMITSUI FUDOSAN AMERICA, INC.などが事業を運営しています。
■(3) マネジメント
不動産の管理や清掃、保守業務などのプロパティマネジメントを行うとともに、不動産の売買や賃貸借の仲介、不動産私募ファンドや不動産投資信託の組成およびアセットマネジメント等の資産運用業務を行っています。
顧客からの管理委託手数料や仲介手数料、資産運用報酬などを収益源としています。プロパティマネジメントは三井不動産ビルマネジメントや三井不動産商業マネジメントなどが、仲介事業は三井不動産リアルティが運営しています。
■(4) 施設営業
ホテルやリゾート施設の運営、およびスポーツやエンターテインメントに関わるスタジアムやアリーナ施設の運営を行っています。宿泊やレジャー、イベント体験などを通じた幅広いサービスを提供しています。
ホテルやリゾートの宿泊客やイベント来場者からの利用料などを主な収益源としています。ホテル営業は三井不動産ホテルマネジメントなどが担い、スタジアムやアリーナ事業は東京ドームが運営を行っています。
■(5) その他
新築住宅の設計や施工監理、リフォーム工事、オフィスや商業施設のリニューアル工事などの新築請負・リフォーム事業を展開するほか、ゴルフ場事業、花卉や園芸用品の小売事業、熱供給事業などを行っています。
顧客からの工事請負代金や商品の販売代金、施設利用料などを収益源としています。新築請負事業は主に三井ホームが、リフォーム工事等は三井デザインテックが運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間における業績の推移です。
売上高は一貫して増加傾向にあり、経常利益および当期利益についても順調に拡大を続けています。利益率も安定した水準を維持しており、全体として堅調な成長トレンドを示しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 21009億円 | 22691億円 | 23833億円 | 26254億円 | 27097億円 |
| 経常利益 | 2249億円 | 2654億円 | 2679億円 | 2903億円 | 3133億円 |
| 利益率(%) | 10.7% | 11.7% | 11.2% | 11.1% | 11.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1522億円 | 1500億円 | 1965億円 | 2076億円 | 2094億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の成長に伴い、売上総利益および営業利益が順調に増加しています。売上総利益率および営業利益率も前期とほぼ同等の水準を維持しており、効率的な事業運営による安定した収益性が確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 26254億円 | 27097億円 |
| 売上総利益 | 6351億円 | 6748億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.2% | 24.9% |
| 営業利益 | 3727億円 | 3978億円 |
| 営業利益率(%) | 14.2% | 14.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給与・手当が731億円(構成比26.4%)、業務委託費が346億円(同12.5%)、広告宣伝費が211億円(同7.6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である賃貸事業は堅調に推移し、増収となりました。分譲事業は売上高が減少したものの、マネジメント事業や施設営業事業が好調に推移しており、全社的な事業の成長をけん引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 賃貸 | 8723億円 | 9366億円 |
| 分譲 | 7581億円 | 7293億円 |
| マネジメント | 4863億円 | 5115億円 |
| 施設営業 | 2241億円 | 2441億円 |
| その他 | 2846億円 | 2883億円 |
| 連結(合計) | 26254億円 | 27097億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5993億円 | 1453億円 |
| 投資CF | -3220億円 | -1790億円 |
| 財務CF | -2694億円 | -591億円 |
財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は32.4%で市場平均を上回る一方、企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、経営理念として受け継がれている精神「GROUP DNA」と、果たしたい使命である「GROUP MISSION」を掲げています。企業としての成長と社会的な価値の創出を両輪とし、「産業デベロッパーとして、社会の付加価値の創出に貢献」することを長期的なありたい姿と位置づけています。
■(2) 企業文化
同社は、経営理念のもとに「GROUP MATERIALITY」を定め、環境との共生、安全・安心、ダイバーシティ&インクルージョンなど、重点的に取り組む課題を明確にしています。価値創造においては社会的価値の創出と経済的価値の創出を車の両輪と捉え、企業成長と社会課題の解決を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、グループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」において、定量目標を定めて事業を推進しています。財務戦略として「成長・効率・還元」を三位一体で捉え、企業価値の最大化を目指しています。
* EPS成長率:年平均8%以上(2026年度および2030年度前後)
* ROE:8.5%以上(2026年度)、10%以上(2030年度前後)
* 事業利益:4,400億円以上(2026年度)
* 親会社株主に帰属する当期純利益:2,700億円以上(2026年度)
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、長期経営方針における事業戦略として「三本の道」を設定しています。インフレ定着等の事業環境の変化に対応し、コア事業とその周辺領域での成長を進めるとともに、既存の不動産領域にとどまらず新事業領域でのビジネス機会獲得を目指す両利きの経営を実践し、収益基盤の強化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「産業デベロッパーとして社会の付加価値の創出に貢献」という目標を実現するためのインフラとして人材を位置づけています。「人材力の底上げ」「イノベーションを加速させる人材・知見の獲得」「多様な人材の活躍を支えるOne Team型組織への深化」の3つを柱とし、OJTや研修を通じて能力伸長を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.1歳 | 16.0年 | 18,555,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.1% |
| 男性育児休業取得率 | 103.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 49.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 62.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 46.7% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(40.9%)、育児休業復帰率(100%)、有給休暇取得日数(15.6日)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境の変化と競合によるリスク
景気変動や金利上昇、働き方の変化などにより、不動産需要の低下や稼働率の下落が生じる可能性があります。また、不動産開発やテナント誘致において他社と競合し、費用の増加や収益の減少につながるリスクがあります。同社は立地戦略の推進や商品開発、デジタルトランスフォーメーションの推進により競争力強化に努めています。
■(2) 市場金利と資産価値の変動リスク
市場金利の上昇や市況の変化により、保有する不動産や投資有価証券の価値が下落し、評価損の計上や売却益の減少を招くおそれがあります。さらに、資金調達コストの増加が収益性に影響を及ぼすリスクがあり、同社はバランスシートの適正なコントロールや資金調達手段の多様化を通じてリスク軽減を図っています。
■(3) 不動産開発と海外事業に伴うリスク
不動産開発においては用地取得から建設までに長期間を要し、資材価格の高騰や規制当局の許認可遅延、予期せぬ問題の発生等によりコスト増や開発スケジュールの遅延が生じるリスクがあります。また、海外事業においては各国の法規制変更や為替変動、地政学的リスクなどの影響を受けるおそれがあります。



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