日本オラクル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本オラクル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本オラクルは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、クラウドサービスやデータベース等のソフトウェア、ハードウェアの販売および関連サービスを提供する企業です。米国オラクル・コーポレーションの日本法人として強固な事業基盤を持ち、直近の業績もクラウド事業の成長により過去最高となる増収増益を達成しています。


※本記事は、日本オラクル株式会社の有価証券報告書(第41期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月21日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本オラクルってどんな会社?


クラウドシステムやデータベース等の最先端ITソリューションを提供し、企業のDX推進を支援しています。

(1) 会社概要


1985年にリレーショナルデータベース管理システム等の販売を目的に設立され、1990年に本格的な事業活動を開始しました。1999年に店頭登録、2000年に東京証券取引所市場第一部に上場し、2022年にスタンダード市場へ移行しています。2010年にはハードウェア製品等の販売を開始し、事業領域を拡大しました。

現在、従業員数は2,097名(単体)です。筆頭株主は親会社のORACLE JAPAN HOLDING,INC.で、第2位は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位はSTATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001となっています。

氏名 持株比率
ORACLE JAPAN HOLDING,INC.(常任代理人 SMBC日興証券) 74.00%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 3.80%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 1.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性4名の計10名で構成され、女性役員比率は40.0%です。代表執行役社長は三澤智光氏です。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
三澤智光 取締役 執行役社長 富士通を経て同社入社。副社長等を経て日本アイ・ビー・エム取締役専務執行役員。2020年同社社長就任、2021年より現職。
中島里香 代表執行役 法務室長 アーンストアンドヤング等を経てPwC Japan合同会社シニアマネジャー。2020年同社入社、2021年より現職。
エス・クリシュナ・クマール 取締役 執行役最高財務責任者(CFO) オラクル・インディア等を経てオラクル・コーポレーションバイス・プレジデント。2014年同社執行役、2018年より現職。
ギャレット・イルグ 取締役 BEAシステムズ、アドビ・システムズ・ジャパン、SAPジャパン社長等を経てオラクル入社。2020年より現職。
キンバリー・ウーリー 取締役 指名委員会委員 報酬委員会委員 監査委員会委員 法律事務所等を経てオラクル・コーポレーション入社。同社シニア・バイス・プレジデント等を歴任し、2017年より現職。


社外取締役は、藤森義明(元LIXIL社長)、ジョン・エル・ホール(元オラクル・コーポレーションシニア・バイス・プレジデント・指名委員長等)、夏野剛(近畿大学情報学研究所長・KADOKAWA社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「クラウド・アンド・ソフトウェア」「ハードウェア」「サービス」の事業を展開しています。

(1) クラウド・アンド・ソフトウェア


企業等のIT基盤に利用されるデータベース管理やERP等の業務アプリケーションソフトウェアのライセンス販売と、それらのリソースをインターネット経由で提供するクラウドサービスを展開しています。顧客は幅広い業種の企業や官公庁です。

顧客からライセンス販売代金、クラウドサービスの利用料、およびソフトウェアの更新版や技術サポート等の保守利用料を受け取ります。運営は同社が行い、米国オラクル・インターナショナル・コーポレーション等へロイヤルティを支払っています。

(2) ハードウェア


サーバー、ストレージ、エンジニアド・システム、ネットワーク機器等のハードウェア製品の販売と、オペレーティングシステム等の関連ソフトウェアを提供しています。

顧客からハードウェア製品の販売代金、および技術サポート、修理、メンテナンスや関連ソフトウェアの更新版提供に係るサポート利用料を受け取ります。運営は同社が行っています。

(3) サービス


同社製品の導入支援を行うコンサルティングサービスと、予防保守サービスやIT環境の包括的な運用管理を提供するカスタマーサクセスサービスを展開しています。

顧客のシステム導入・運用プロジェクトの進捗や、時間単価・作業量等の消費型サービスに基づく役務提供の対価として、サービス利用料を受け取ります。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、企業のDX投資やクラウド移行需要を背景に、売上高および各利益項目において順調な拡大基調が続いています。売上高は安定して成長しており、利益率も30%台前半の高水準を維持しています。主力であるクラウド事業の伸長が牽引し、増収増益のトレンドが定着しています。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期 2026年5月期
売上高 2,147億円 2,269億円 2,445億円 2,635億円 2,851億円
経常利益 735億円 747億円 803億円 875億円 914億円
利益率(%) 34.3% 32.9% 32.8% 33.2% 32.1%
当期利益 512億円 520億円 556億円 607億円 635億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに堅調に推移しています。高付加価値なクラウドサービスやソフトウェア・サポートの比率が高く、売上総利益率は40%台半ばを、営業利益率も30%台を確保しており、非常に高い収益性を有する事業構造となっています。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 2,635億円 2,851億円
売上総利益 1,214億円 1,283億円
売上総利益率(%) 46.1% 45.0%
営業利益 868億円 898億円
営業利益率(%) 32.9% 31.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が118億円(構成比31%)、業務委託費が68億円(同18%)を占めています。売上原価については、クラウド・アンド・ソフトウェア原価(ロイヤルティ料など)が1,269億円(構成比81%)、サービス原価が162億円(同10%)となっています。

(3) セグメント収益


主力事業であるクラウド・アンド・ソフトウェアセグメントは、企業のクラウド移行需要を捉え、売上高が順調に増加して全体を牽引しています。サービスセグメントもコンサルティング等の引き合いが堅調で増収となりました。一方、ハードウェアセグメントは仕入高の減少等により微減となっています。

区分 売上(2025年5月期) 売上(2026年5月期)
クラウド・アンド・ソフトウェア 2,230億円 2,445億円
ハードウェア 156億円 150億円
サービス 249億円 255億円
連結(合計) 2,635億円 2,851億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業となっています。

項目 2025年5月期 2026年5月期
営業CF 666億円 747億円
投資CF -20億円 -321億円
財務CF -900億円 -243億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は34.5%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も55.6%で市場平均(非製造業)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「ITの新しい価値を創造し、お客様の成功と社会の発展に貢献する」ことを基本理念として掲げています。また、「人々が新たな方法でデータを理解し、本質を見極め、無限の可能性を解き放てるよう支援していくこと」をミッションとし、最新のデジタル技術を通じて社会の発展に寄与することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、自らが進化を続け、顧客の進化を正しくナビゲートしていくことが社会や人類への貢献に繋がるとの価値観を重視しています。また、オラクル自身が実践したビジネスプロセスのモダナイゼーション(近代化)やデータ活用の知見を顧客に提供することで、企業の成長とイノベーションを支える基盤づくりに邁進する文化を有しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、継続的な企業価値の向上と株主への利益還元を実現することを目標としており、以下の数値を経営指標として掲げています。

* 売上高の増加
* 営業利益の増加
* 1株当たり純利益(EPS)の増加

(4) 成長戦略と重点施策


「AI Changes Everything ― AIの光を力に、信頼で加速する」を新たなメッセージとし、AIがもたらす価値創出とセキュリティ要求の双方に対応する戦略を掲げています。具体的には、「Oracle AI Database」等の基盤を活用した統合的なAIソリューションの提供を強化し、パートナー経由でソブリンクラウド(データ主権に対応したクラウド)の展開を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、持続的な成長と価値創造のため、多様で包括的かつ安全な職場の提供を重要な戦略と位置づけています。優秀な女性管理職の育成や、労働市場からの即戦力人材の獲得、グローバル連携を見据えたコミュニケーション強化を推進しています。また、ワークライフ・バランスを支援する制度の拡充により、働きやすい環境づくりに注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 45.3歳 11.6年 12,982,722円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.1%
男性育児休業取得率 65.0%
男女賃金差異(全従業員) 72.3%
男女賃金差異(正規雇用) 72.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 86.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(24.1%)、中途採用比率(85.1%)、外国籍社員比率(8.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 米国親会社の製品・戦略への依存

同社は米国オラクル・コーポレーションの製品を日本市場に提供しているため、親会社の製品開発の遅延やクラウド・AI戦略の変更、提供ポリシーの変更等が発生した場合、競争力の低下や収益性に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(2) クラウド事業の運営と情報管理リスク

クラウドサービスの提供にあたり、顧客の基幹システムや機密情報を管理しています。機器の不具合、災害、サイバー攻撃等によるシステム障害や情報漏洩が発生した場合、顧客業務の遅滞や損害賠償、社会的信用の失墜に繋がる可能性があります。

(3) テクニカルサポートサービスの提供に係るリスク

顧客の技術的な問題に対するサポートにおいて、需要の増加を予測できず迅速なサービス提供ができなかった場合や、効果的な問題解決に至らなかった場合、追加費用の発生等により業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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