※本記事は、日本オラクル株式会社 の有価証券報告書(第40期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本オラクルってどんな会社?
米国オラクル・コーポレーションを親会社に持ち、データベース管理システムやクラウドサービスを中核に、企業のDXを支援するITソリューション企業です。
■(1) 会社概要
同社は1985年に設立され、データベース管理システム「Oracle」等の販売を開始しました。1999年に店頭登録、2000年に東証一部へ上場。2006年には関連会社との協業を強化し、製品・サービスの窓口を一本化しました。2010年にハードウェア部門を新設し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。
単体の従業員数は2,258名です。筆頭株主は親会社のオラクル・ジャパン・ホールディング・インクで、発行済株式の74.00%を保有しています。第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。親会社が開発した製品の国内販売と関連サービス提供を主たる業務としており、独自の研究開発は行っていません。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ORACLE JAPAN HOLDING,INC. | 74.00% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 4.40% |
| THE NOMURA TRUST AND BANKING CO., LTD. AS THE TRUSTEE OF REPURCHASE AGREEMENT MOTHER FUND | 1.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性4名の計11名で構成され、女性役員比率は36.4%です。代表執行役社長は三澤 智光氏です。取締役会における社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 三澤 智光 | 取締役 執行役社長 | 1987年富士通入社。1995年同社入社。常務執行役員などを経て、2016年日本IBM専務執行役員。2020年10月同社復帰、同年12月より現職。 |
| 中島 里香 | 代表執行役 法務室長 | アーンストアンドヤング、ベーカー&マッケンジー法律事務所等を経て、2020年同社入社。2021年8月より現職。 |
| エス・クリシュナ・クマール | 取締役 執行役最高財務責任者(CFO) | 1996年オラクル・インディア入社。2014年同社執行役。2018年8月よりCFO。2021年7月よりオラクル・コーポレーションJAPAC & Japan CFOも兼務。 |
| ギャレット・イルグ | 取締役 | ロイター通信社、SAPジャパン社長&CEO、アドビ欧州中東アフリカ社長などを歴任。2020年オラクル・コーポレーションJAPAC責任者、同年8月より現職。 |
| ヴィンセント・エス・グレリ | 取締役 監査委員会委員 | アーサー・アンダーセン、サン・マイクロシステムズ等を経て、2008年オラクル・コーポレーション入社。2018年より同社バイス・プレジデントTax。2021年8月より現職。 |
| キンバリー・ウーリー | 取締役 指名委員会委員 報酬委員会委員 | 法律事務所を経て2009年オラクル・コーポレーション入社。2019年11月より同社バイス・プレジデント アシスタント・ジェネラル カウンシル。2017年8月より現職。 |
社外取締役は、藤森 義明(元LIXILグループ社長)、ジョン・エル・ホール(元オラクル・コーポレーション シニア・バイス・プレジデント)、夏野 剛(KADOKAWA社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「クラウド&ライセンス」「ハードウェア・システムズ」「サービス」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。
■クラウド&ライセンス
データベース管理ソフト、ミドルウェア、ERP等の業務アプリのライセンス販売と、これらをインターネット経由で提供するクラウドサービスを行っています。また、ライセンス利用者への更新版提供や技術サポートも提供しており、企業のIT基盤構築から運用までを支援しています。
収益は、ソフトウェアのライセンス料、クラウドサービスの利用料(サブスクリプションや従量課金)、およびライセンスサポート契約に基づくサポート料からなります。運営は主に日本オラクルが行っており、製品は親会社であるオラクル・コーポレーションから供給を受けています。
■ハードウェア・システムズ
サーバー、ストレージ、エンジニアド・システム、ネットワーク機器等のハードウェア製品の販売と、それらのOSや関連ソフトウェアを提供しています。あわせて、これらのハードウェア製品に対する技術サポート、修理、メンテナンス、OS更新版の提供なども行っています。
収益は、ハードウェア製品の販売代金および保守サービス契約に基づくサポート料からなります。運営は日本オラクルが行い、親会社グループから製品を仕入れて国内市場に販売するビジネスモデルです。
■サービス
同社製品の導入を支援するコンサルティングサービスと、予防保守やIT環境の包括的な運用管理を行うアドバンストカスタマーサービスを提供しています。システム基盤の移行やクラウド連携など、製品利用を最適化するための支援を行っています。
収益は、コンサルティングや運用管理サービスの対価として顧客から受領するサービス料です。運営は日本オラクルが担当し、専門知識を持つエンジニアやコンサルタントが役務を提供します。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は5期連続で増加しており、安定した成長を続けています。利益面でも、経常利益、当期純利益ともに増加傾向にあり、特に直近の2025年5月期は利益率33.2%と高い収益性を維持しています。クラウドサービスの拡大が進む中で、着実に業績を伸ばしていることが読み取れます。
| 項目 | 2021年5月期 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,085億円 | 2,147億円 | 2,269億円 | 2,445億円 | 2,635億円 |
| 経常利益 | 709億円 | 735億円 | 747億円 | 803億円 | 875億円 |
| 利益率(%) | 34.0% | 34.3% | 32.9% | 32.8% | 33.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 492億円 | 512億円 | 520億円 | 556億円 | 607億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに順調に拡大しています。売上総利益率は約46%と高い水準を維持しており、営業利益率も約33%で安定しています。コスト管理と売上成長のバランスが取れた収益構造となっています。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,445億円 | 2,635億円 |
| 売上総利益 | 1,135億円 | 1,214億円 |
| 売上総利益率(%) | 46.4% | 46.1% |
| 営業利益 | 798億円 | 868億円 |
| 営業利益率(%) | 32.6% | 33.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が129億円(構成比37.2%)、業務委託費が62億円(同18.0%)を占めています。また、売上原価の大部分は親会社等へのロイヤルティ料等(1,003億円、売上原価の70.6%)が占めています。
■(3) セグメント収益
主力の「クラウド&ライセンス」セグメントが増収となり、全社の成長を牽引しています。特にクラウドサービスとライセンスサポートが好調です。「サービス」セグメントもコンサルティング需要により増収となりましたが、「ハードウェア・システムズ」は減収となりました。
| 項目 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) | 利益(2024年5月期) | 利益(2025年5月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| クラウド&ライセンス | 2,051億円 | 2,230億円 | 796億円 | 857億円 | 38.4% |
| ハードウェア・システムズ | 169億円 | 156億円 | 7億円 | 6億円 | 3.6% |
| サービス | 226億円 | 249億円 | 48億円 | 58億円 | 23.5% |
| 合計 | 2,445億円 | 2,635億円 | 798億円 | 868億円 | 33.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだキャッシュ(営業CF)を使って借入金の返済や配当支払い(財務CF)を行いつつ、投資(投資CF)も自己資金の範囲内でコントロールしている「健全型」の企業です。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 803億円 | 666億円 |
| 投資CF | -724億円 | -20億円 |
| 財務CF | -207億円 | -900億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は34.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「ITの新しい価値を創造し、お客様の成功と社会の発展に貢献する」ことを基本理念としています。ITを単なる効率化ツールから、企業の変革を支える経営基盤へと進化させ、最先端のクラウドソリューション等のデジタル技術を提供することで、顧客の競争力強化や社会の発展に寄与することを目指しています。
■(2) 企業文化
「Be a TRUSTED TECHNOLOGY ADVISOR」を掲げ、顧客の進化を正しくナビゲートすることが社会貢献につながると考えています。自社で実践したビジネスプロセスの近代化・デジタル化の成果を顧客へ還元し、日本企業の成長とイノベーションを支える基盤づくりに取り組む姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
売上高、営業利益、および1株当たり当期純利益(EPS)の増加を通じて、継続的な企業価値向上と株主還元を実現することを経営目標としています。具体的な数値目標は開示されていませんが、顧客のクラウド移行とデータ活用支援によるビジネス成長を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「日本のためのクラウド提供」と「お客様のためのAI推進」を重点施策としています。基幹システムのクラウド移行(OCI活用)や生成AI活用支援を強化し、日本初のソブリンクラウド展開や、AI搭載SaaSによる業務変革を推進します。また、政府のガバメントクラウドへの貢献やパートナー連携の強化にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「多様で包括的で安全な職場の提供」をマテリアリティの一つとし、人的資本の最大化を目指しています。優秀な女性管理職の育成・登用、即戦力人材の通年採用、定年引き上げによるシニア層の活用などを推進。また、グローバル人材との連携強化や、男性の育児休業取得促進など、働きやすい環境づくりと企業風土の醸成に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 44.1歳 | 10.8年 | 12,594,448円 |
※平均年間給与は賞与及び株式付与ESOP信託制度による給与課税額を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 15.5% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 86.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 71.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 70.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 91.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(24.2%)、中途採用比率(84.4%)、外国籍社員比率(7.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 親会社製品・技術への依存
同社は親会社であるオラクル・コーポレーションの製品・技術に依存しており、新製品の投入遅延や製品の欠陥、提供ポリシーの変更等があった場合、経営成績に影響を与える可能性があります。また、親会社等へのロイヤルティ料率や適用範囲の変更も業績に影響するリスクがあります。
■(2) クラウド事業等の運営リスク
クラウドサービスにおいて、機器の不具合、人為的過失、サイバー攻撃等によりシステム停止や情報漏洩が発生した場合、損害賠償請求等により経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。特に基幹業務システムを扱っているため、その影響は甚大になる恐れがあります。
■(3) 情報セキュリティとデータ管理
顧客の機密性の高いデータを大量に扱っているため、サイバー攻撃の標的となるリスクがあります。予期せぬ事態により情報流出が生じた場合、社会的信用の失墜や多額の対策費用、損害賠償等により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 競争激化の可能性
情報サービス産業は技術革新が速く競争が激しいため、競合他社による価格競争や優位な新製品の投入、戦略的提携などにより、同社の競争力や市場シェアが低下し、経営成績に影響を与える可能性があります。



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