インターネット広告が著しい成長をみせる昨今、従来のマスメディアを追い抜く時代はすぐそこまで来ています。電通がリリースした「2017年 日本の広告費(媒体別広告費)」の調査によると、新聞は5147億円、雑誌は2023億円、テレビは1兆9478億円、インターネット広告費(媒体費と制作費含む)は1兆5094億円で、インターネット広告費が大きな存在感を示しているのです。前年比率を見るとテレビは99.1%で下がっていますが、インターネットは115.2%と順調に伸びており、今後も成長する傾向にあります。
ネット広告に注目が集まる中で、5G時代の到来で投資家から熱い視線を集める企業があります。それが、1998年に藤田晋氏が設立したサイバーエージェントです。
2017年10月から2018年6月の連結決算純利益では、主力であるネット広告が伸び、前年同期比で66%増の49億円となりました。また任天堂との提携によるスマホゲームの開発で世界市場を狙うなど、活発な動きを見せています。
さらにソニーは、堅実な事業柱を育てるため、AbemaTVにも惜しみない投資を重ねており、飛躍に向けて成長を惜しまないその姿勢は自社の人材に対しても顕著です。
それでは、サイバーエージェントの年収はいったいどれくらい高いのか、またなぜそんなに高いのか、そして就職・転職先として適しているのかを探っていきましょう。
サイバーエージェントの平均年収は771.1万円
サイバーエージェントの平均年収は771.1万円です(サイバーエージェント有価証券報告書)。キャリコネに投稿された給与明細を参考にサイバーエージェントの年代別年収レンジを算出したところ、20歳代で640〜690万円、30歳代で820〜870万円、40歳代で930〜980万円という結果になりました。正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)で、比較して約1.56倍の額です。
■サイバーエージェントの平均年収推移
決算月 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数 |
---|---|---|---|---|
2021年9月期 | 771.1万円 | 34.1歳 | 6.3年 | 1702人 |
2020年9月期 | 733.6万円 | 33.2歳 | 6年 | 1587人 |
2019年9月期 | 681.7万円 | 32.6歳 | 5.4年 | 1589人 |
2019年9月期 | 709.2万円 | 32.2歳 | 5.2年 | 1540人 |
2018年9月期 | 703.4万円 | 31.9歳 | 6.1年 | 1500人 |
出典:サイバーエージェント・有価証券報告書
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
サイバーエージェントの平均年収は前年を上回り771.1万円でした。
過去5年間では最高額になりました。
サイバーエージェントの年代別平均年収と中央値
■サイバーエージェントの年収中央値は30代で838万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
年代 | 平均年収 | 平均月収 | 平均ボーナス | 年収中央値 |
---|---|---|---|---|
20代 | 664.5万円 | 56.6万円 | 0万円 | 598.05万円 |
30代 | 838万円 | 71.1万円 | 0万円 | 754.2万円 |
40代 | 952.3万円 | 80.6万円 | 0万円 | 857.07万円 |
50代 | 974.6万円 | 82.5万円 | 0万円 | 877.14万円 |
※キャリコネの口コミ、有価証券報告書、厚労省・経産省・国税庁発表の調査資料を元に、編集部で独自に算出
サイバーエージェントと競合他社の平均年収を比較
サイバーエージェントの競合や同業界であるバリューコマース、ファンコミュニケーションズの3社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、サイバーエージェントが771.1万円、バリューコマースが596.8万円、ファンコミュニケーションズが500万円です。
この3社の中で最高額はサイバーエージェントの771.1万円で、最低額がファンコミュニケーションズの500万円。その差はおよそ272万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中ではサイバーエージェントは1番目に位置します。
社名 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数(単体) | 売上高 |
---|---|---|---|---|---|
サイバーエージェント | 771.1万円 | 34.1歳 | 6.3年 | 1702人 | 3148.57億円 |
バリューコマース | 596.8万円 | 36歳 | 6.1年 | 272人 | 321.85億円 |
ファンコミュニケーションズ | 500万円 | 32.7歳 | 4.8年 | 422人 | 248.79億円 |
広告・ゲーム業界の給与明細(キャリコネ)
日本の平均年収を大きく上回る収入が
サイバーエージェント・20代・マーケティング(非管理職)の 給与明細
ディー・エヌ・エー・20代・マーケティング(非管理職)の 給与明細
ガンホー・オンライン・エンターテイメント・20代・マーケティング(非管理職)の 給与明細
セプテーニ・ホールディングス・20代・マーケティング(非管理職)の 給与明細
オプトホールディング・20代・マーケティング(非管理職)の 給与明細
サイバーエージェントの給与制度
■能力別給与体系を導入
年収が高い理由は2つ考えられます。
その1つは、サイバーエージェントの業績が好調であることです。2018年4月に発表された第2四半期累計(2017年10月~2018年3月)では、営業利益が前年同期比で37.9%も増加しました。この結果に藤田氏は「既存事業の営業利益が過去最高を更新」したと述べています。
そしてもう1つは、2018年4月以降に入社予定の新卒エンジニアに対して、初任給制を撤廃し、個々人の能力別給与体系を導入することになったことです。若い時からエンジニアには実力に見合った給与が得られることになります。これはエンジニア職採用だけではなく、文系採用にも言えることです。文系採用であっても、エンジニアと同じように個々人の能力別給与体系を導入しており、年俸408万円(月34万円~)と、一般の文系採用の相場よりも高くなっています。こういったことから、全体的に平均年収を引き上げていると言えます。
■営業職はインセンティブあり
サイバーエージェントの求人情報や口コミをみると、営業職は個人単位のインセンティブであることから、チーム単位のインセンティブである技術職と比べて、収入が上がりやすいことがうかがえます。またサイバーエージェントでは、社内公募制度やFA制度なども積極的に行われています。なかでも企業内ベンチャー制度「ジギョつく」では、優勝者には賞金100万円と事業責任者の権利を与えられ、実力ある社員は高い報酬と役職を得るチャンスがあるのです。
東洋経済が発表した2018年版「CSR企業総覧(雇用・人材活用編)」の掲載データによると、大卒30歳の平均賃金ランキングでは、サイバーエージェントは第1位の53万4204円でした。ただし最高は150万円、最低は29万円と開きは大きく、職種によって収入の違いはありますが、最後は個人の実力勝負であると言えます。
サイバーエージェント社員の給与明細
20代と30代では年収ベースで大きく開きがある!
20代・オープン系プログラマ(非管理職)の 給与明細
30代・オープン系プログラマ(非管理職)の 給与明細
同年代では、それほど大きな差はなし!
20代・営業管理・賞与なし(非管理職)の 給与明細
20代・営業管理・賞与あり(非管理職)の 給与明細
サイバーエージェントで働く上での懸念点・課題は
■実力主義で勤務時間が長くなりがち
一番の懸念は、躍進するIT企業ならではの残業・休日出勤が挙げられます。
サービスのリリース前やコンペ前などは、やむを得ず残業や休日出勤をすることが大いにありますが、自己裁量で残業をしても問題ないとされる雰囲気があるようです。
またサイバーエージェントは、実力主義の社風です。査定でD評価の数が多い場合は、退職勧奨をするというミスマッチ制度を採用しています。これは事業部の評価者が、ミスマッチになりえる人材として全体の5%程度の候補者を挙げ、その社員に対して部署異動や退職勧奨が行われているという制度です。このような容赦ない実力主義の社風に合うか合わないかという点を留意する必要があります。
サイバーエージェントには年収以外にメリットはある?
ここまでサイバーエージェントの年収面を見てきました。ただ就職先、転職先として年収の高さだけで決めることはできません。その他にメリットは無いのでしょうか?
ミスマッチ制度に厳しさを感じるかもしれませんが、この制度は「実力主義型終身雇用」の一環としての施策であり、目指すは現状を認識してもらったうえで、パフォーマンスとモチベーションを向上してもらうことであるとしています。
ベンチャー企業のうち、20年後の生存率は0.3%と言われているなかで、熾烈な争いを勝ち抜いてきたのがサイバーエージェントです。ただ残っているだけではなく、どんどん成長しています。この姿勢が20年たっても成長を続ける成果につながっていると言えます。
広告業界における売上規模は、オールドカンパニーであるアサツーディー・ケイに差し迫る勢いです。破竹の勢いの中で、自らの市場価値を高めたい人にはぜひお勧めしたい企業です。
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」