「なぜ他社がやってもいないことを提案するのか」と叱られる
三菱電機がこのたび導入する「オープンイノベーション」とは、異分野が持つ技術やアイデアなどを組み合わせ、革新的なビジネスモデルや製品を開発するイノベーション手法。三菱電機が保有するFAシステム事業の経営資源を活用するとのことです。
本来であれば自社内で革新を起こせればいいのですが、社外の力を借りなければ難しくなっているのでしょうか。企業口コミサイト「キャリコネ」には、現役社員・OBOGからの書き込みが残されています。
目につくのは「年功序列」「保守的」といったイノベーションとはかけ離れた言葉。研究開発部門に所属する40代男性社員は、仕事でこんな衝撃的な言葉を投げかけられたそうです。
研究開発において、「なぜ他社がやってもいないことを提案するのか」と言われたとき。この会社の特徴が出ていると思う。(2018.12.15)
このような社風は「オープンイノベーション」で変わるのでしょうか。システム運用を担当していた30代男性も「社風が合わないため」転職を決意したそうです。
公務員気質の人間が多く、「何か新しいことをしよう」という雰囲気が全く感じられない。
長期にこの会社にいたら、何のスキルも身に付かず、この会社でしか通用しない人間になってしまいます。その環境に納得できて、そこそこ給料をもらえればいいやという人にはお勧め。(2016.6.17)
大企業では「個人はその中のごくごく小さな歯車に過ぎない」存在(代理店営業を担当する30代男性社員の評)になりがちですが、それが許容できない人にはストレスでしょう。海外営業を担当していた30代男性も「年功序列」の強さに辟易して、退職しています。
何をしても、または何をしなくても、そこそこの収入を手にすることができる。どんなに多くの仕事をしてもあまり評価が変わらないので、ぬくぬくと仕事をこなしたい人にはうってつけかもしれない。(2018.9.3)
「課長級で1000万円」も出世は狭き門
とはいえ、安定志向の人にとって、このような職場も悪くないのかもしれません。研究開発を担当する40代男性は、給与の目安について詳しく書いてくれています。就職や転職を検討する際の参考になるでしょう。
査定は、給与にあまり反映されない。32歳までは年齢で基本的に一緒。手当等なしの給与で、昇進試験後の40歳で750万円くらい、45歳で950万円くらい、55歳で1050万円くらい。57歳賃金切り替え制度の廃止のため、定年時点で1100万円くらい。
管理職は45歳で課長級1000万円くらい、部長級1200万円、所長級1400万円くらいだろう。57歳で役職定年。職場で違うが、部長級以上が対象。(2018.12.15)
やはり管理職に昇格すると、大企業らしい給与水準になります。しかし、役職につくための壁は厚く高いようです。三菱電機で働いていた20代女性は、派遣社員の視点から内情を次のように明かしていますが、なかなか手厳しい評です。
マネジメント経験ができるのは30代後半~40代前半、それも狭き門です。課長級以上になれる人は本当に少なく、また課長より下の役職は平社員と対して変わらないため、マネジメント経験ができない人はそれ以上の成長が望めないように思います。(2018.12.1)
三菱電機は2017年から18年にかけて、労働基準法違反容疑で会社と上司が書類送検されるなど社会的な批判を受けたことを受けました。これによりサービス残業はなくなったようですが、すべて問題が解決されたわけではないようです。
かつては休日出勤も事実上自由だったが、今は上司の許可が必要であり、申請理由も余程の理由がないと許可されない。代休も取らないとタイヘンなことになる。しかし実際の仕事量が減ったわけでなく、労働時間だけが減らされたため、仕事が進まなくて困る状況にもなった。(2018.12.15)
FA事業は好調だが「将来に不安」訴える人も
三菱電機は、社会インフラやビルシステムに携わる「重電システム」、FAシステムや自動車機器事業などの「産業メカトロニクス」のほか、「情報通信システム」「電子デバイス」「家庭電器」「その他」という計6つのセグメントで事業を行っています。
FAを担う「産業メカトロニクス」は、生産実績と販売実績で全セグメントのトップ。受注実績でも重電システムに肉薄する2位と会社を支える柱となる事業となっています。しかし、この状況にも「将来について非常に不安」と訴える社員がいます。
業績は全体として好調だが、利益に関してはFA事業の1本足によるところが多く、他事業は特別に好調でもない。FA事業が米中貿易戦争によりマイナスに大打撃を受けると、会社全体への影響は大きい。(2018.12.15)
FA依存になった背景について、この社員は「2000年~10年ころまでの我慢の時代に設備投資ができなかった反動で、社内の設備投資が一気に進んだため」、利益を上げにくい体質になっていると指摘しています。
また、研究開発部門も「費用面では10%は技術開発している体裁」ではあるものの、ほぼ全員が現業の支援部門になっていて、「事実上は将来技術や先端技術に真剣に取り組めていない状況」と明かしています。
いくら「オープンイノベーション」などといっても、アイデアを評価したり、事業化をマネジメントしたりするのは、三菱電機の社員が中心になるでしょう。社外の刺激を借りて会社は変わっていけるのか。注目されるところです。