【財務分析】営業利益率37.8%のJR東海 「リニア中央新幹線」の建設投資で減益へ

【財務分析】営業利益率37.8%のJR東海 「リニア中央新幹線」の建設投資で減益へ

JRグループの中で群を抜く高収益体質のJR東海。その背景には交通の大動脈「東海道新幹線」というドル箱路線を有していることにあります。2027年に時速500キロで品川~名古屋間を40分で結ぶ「リニア中央新幹線」の開通を予定しているJR東海の現状と将来を、財務諸表から分析します。


損益計算書(PL):同業種トップの営業利益率

東海旅客鉄道(JR東海)の2019年3月期の営業収益は1兆8781億円で前期比3.1pt増でした。

運輸業等営業費及び売上原価は前期比0.4%増、販管費も同2.2%増でしたが、金額としては小さく、営業利益は7098億円と同7.2pt増えています。

この結果、営業利益率は37.8%で前期比1.5pt増。陸運業界2位のJR東日本の16.2%を大きく上回る非常に高い営業利益率を有しています。

セグメント分析:ドル箱は「東海道新幹線」

JR東海の事業セグメントは4つに分かれています。

  • 運輸業:東海道新幹線及び東海地方の在来線における鉄道事業、バス事業等
  • 流通業:JRセントラルタワーズ内での百貨店事業、社内および駅構内における物品販売等
  • 不動産業:駅ビル等不動産賃貸事業および不動産分譲事業。
  • その他事業:ホテル業、旅行業、広告業、鉄道車両等製造業および建設業を含む

なお、運輸事業の営業エリアは、主として東京、名古屋、大阪間を結ぶ東海道新幹線および名古屋、静岡地区の1都2府8県。駅数は405駅、営業キロは在来線が1,418.2km、新幹線が 552.6km、総合計は 1,970.8km。

出典:JR東海2019年3月期決算説明資料

2019年3月期のセグメント別売上収益は「運輸業」が77.2%を占めています。営業利益でも全体の93.5%を稼ぐ主要事業です。このほか、不動産業は2.9%、流通業は1.4%、その他事業は2.3%でした。

東海道新幹線は、海外からの観光客が増えたことで、ビジネスおよび観光共に年々輸送量を増やしています。2020年7月からは新型車両「N700S」の運行を開始し、利便性を高める狙いです。

また、2027年開業予定のリニア中央新幹線を見据え、ネット予約およびチケットレス乗車サービスを拡大した結果、2018年度の東海道新幹線指定席予約の約4割がネット予約になっています。

貸借対照表(BS):巨額借入で流動比率は500%超え

2019年3月期の総資産は9兆2957億4500万円で、4期間では積み上がっています。

純資産合計は3兆5080億6500万円で前期比13.7%増。固定負債は5兆1374億1900万円で前期比1.6%減。流動負債は6502億6000万円で同7.9%増えました。

会社の財務体質の長期的な安全性を測る株主資本比率は37.3%で前期比3.0pt増加。流動比率は558.3%で同72.9pt減。株主資本比率は業界平均を下回りますが、流動比率は大幅に上回っています。

2016年3月期では流動比率が83%でしたが、2017年3月期にリニア中央新幹線建設のための長期借入金を調達したことで流動資産が大幅に増え、流動比率は398%となりました。流動資産の「中央新幹線建設資金管理信託」という勘定にて掲載しているため、流動比率が大きくなっています。

なお、JR東日本と同様に運賃という日銭が入ってくるビジネスであるため、短期的な資金繰りを心配する必要がありません。

なお、上場企業を対象としたリスクモンスターの「第1回不動産王ランキング調査」(2019年1月)によると、決算書の記載に基づく土地保有額で、JR東海は大手デベロッパーとともに第2位となっています。

  1. 住友不動産(2兆4642億円)
  2. JR東海(2兆3546億円)
  3. 三菱地所(2兆0632億円)
  4. 三井不動産(2兆0382億円)
  5. JR東日本(2兆0207億円)

キャッシュフロー計算書(CF):リニア建設のため大規模資金調達

2019年3月期の営業活動によるキャッシュフローは6003億1900万円で、前期比1.5%減。主な減少要因は「法人税等の支払い増加」です。営業CFマージンは32.0%で、前期比1.5pt減少しています。

投資活動によるキャッシュフローはマイナス5975億200万円で、マイナス額は前期比で66.4%減でした。主な減少要因は「前期に中央新幹線建設長期借入金を信託したことの比較から、拠出資金が大幅に減少した」ためです。

財務活動によるキャッシュフローはマイナス336億3500万円でした。前期は中央新幹線建設長期借入金によって1兆4347億8800万円のプラスでしたが、今期は借入がなくなったため支出が収入を上回りました。

リニア中央新幹線建設という特殊要因があるため同業他社との比較が難しいですが、東海道新幹線等による安定的なキャッシュ獲得によって、営業CFは安定しています。

資本効率分析:4期連続増益だがROEはやや低下

親会社株主に帰属する当期純利益は4387億1500万円と、前期比10.9%増です。

当期純利益は増加しましたが、株主資本も同13.6%増となったため、株主のお金を使って利益を生み出す効率を測るROE(自己資本利益率)は13.4%。前期比0.4pt減となりました。しかし、陸運業平均の7.8%は上回っています。

すべての資産を使って利益を生み出す効率を測るROA(総資産利益率)は4.8%で、前期比0.2pt減でした。こちらは陸運業平均の4.9%をわずかに下回っています。

まとめ:20年3月期はリニア建設費用を織り込み減益予想

2020年には「のぞみ」の増発とN700S系の運航開始を控えていることもあり、JR東海の2020年3月期決算は実質増収増益が見込まれます。しかし、リニア建設の費用を織り込んでいるため、最終的には減益となるようです。

JR東海では2017年7月までに、財政投融資を活用した3兆円の借り入れを完了しています。なぜそこまでの巨額投資をして、リニア中央新幹線を作らなければならないのでしょうか。

JR東海の経営理念は「日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する」というもの。その使命を「東京~名古屋~大阪の高速大量旅客輸送を担うこと」としています。

JR東海の「アニュアルレポート2018」によると、「東海道新幹線の将来の経年劣化や大規模災害に対する抜本的な備え」のために「日本の大動脈輸送の二重系化が必要」とのこと。これがリニア中央新幹線を作る理由になっています。

リニア中央新幹線の営業速度は、時速500キロ。これまで1時間半程度かかっていた品川駅~名古屋駅間が40分になります。JR東海は「超電導リニアによる圧倒的な時間短縮効果で、3大都市圏が一つの巨大都市圏となる」と、そのメリットを主張しています。

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アナリストになる夢を持ち、証券会社で営業をしながら日々頑張ってます。

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