#コーナン商事転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、コーナン商事株式会社の有価証券報告書(第49期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. コーナン商事ってどんな会社?
ホームセンターを主力事業とし、住まいと暮らしに関する幅広い商品を販売する小売企業です。
■(1) 会社概要
1978年に設立され、同年12月に第1号店を開店しました。1996年に大阪証券取引所市場第二部へ上場し、2001年には東京証券取引所市場第一部へ上場を果たしています。近年は、2019年に建デポ、2023年にホームインプルーブメントひろせ、2025年にはI'nTホールディングスを子会社化しています。
現在の従業員数は連結で5,244名、単体で3,567名体制です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は事業会社であり同社の役員やその近親者が議決権の過半数を所有する港南、第3位は個人株主の疋田耕造氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.19% |
| 港南 | 7.01% |
| 疋田耕造 | 6.21% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性16名、女性2名の計18名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は疋田直太郎氏です。取締役のうち社外取締役が占める比率は約42.9%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 疋田直太郎 | 取締役社長(代表取締役) | 1979年同社入社。1991年取締役副社長等を歴任し、2013年より現職。建デポ代表取締役会長等も兼務。 |
| 加藤高明 | 常務取締役上席執行役員情報戦略室長・経営企画部・情報戦略室担当 | 1984年住友銀行入行。2014年同社出向後転籍。常務取締役営業統括本部長等を経て、2023年より現職。 |
| 成田幸夫 | 常務取締役上席執行役員人事部・人財開発部・システム企画部・経理部担当 | 1978年紀陽銀行入行。2016年同社出向。2017年取締役・上席執行役員に就任し、2026年より現職。 |
| 窪山満 | 取締役上席執行役員法人営業部・リフォーム営業部・開発部・物流部担当 | 1998年同社入社。2017年執行役員第二開発部長、2020年取締役・上席執行役員等を経て、2024年より現職。 |
| 小松和城 | 取締役上席執行役員営業企画推進部・HC営業部・EC営業部・PRO営業部担当 | 2000年同社入社。2016年執行役員商品部商品三部長、2021年取締役・上席執行役員等を経て、2026年より現職。 |
| 浦田俊一 | 取締役上席執行役員お客様サポート部・品質保証部・財務部・IR広報室担当 | 1998年同社入社。2016年執行役員財務部長、2022年取締役・上席執行役員に就任し、2026年より現職。 |
| 江川勝之 | 取締役上席執行役員商品統括部長・商品統括部・商品供給部担当 | 1995年同社入社。2012年執行役員商品第二部長、2025年取締役・上席執行役員等を経て、2026年より現職。 |
| 疋田修造 | 取締役上席執行役員販売促進部・デジタル戦略室・食品商品部担当 | 2012年アイリスオーヤマ入社。ビーバートザンやホームインプルーブメントひろせを経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、田端晃(弁護士)、片山博臣(元紀陽銀行頭取)、山中千佳(ピーコック魔法瓶工業社長)、山中諄(元南海電気鉄道社長)、岡田賢二(元伊藤忠エネクス社長)、松川奈央(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「小売、建築資材等の販売及びこれらに付随する事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) 小売・建築資材販売事業
ホームセンターを中心とした小売店舗を展開し、一般消費者やプロの建築業者向けにDIY用品、家庭用品、ペット・レジャー用品、食品などを提供しています。木材・建材からインテリア、日用品まで住まいと暮らしに関する幅広い商品を販売しています。
収益源は、店頭販売やインターネット通信販売による商品売上代金です。主にコーナン商事がホームセンターを運営するほか、建デポがプロ向け建築資材の卸売を、ホームインプルーブメントひろせやホームセンターみつわ等が各地域で小売事業を担っています。
■(2) 流通周辺サービス・その他事業
主力であるホームセンター等の小売事業を支えるため、物流業務や不動産賃貸、インターネットを主体としたインテリア用品の企画・販売などの周辺サービスを展開しています。商品の安定供給やEC販売の強化に貢献しています。
収益源は、不動産賃貸収入やインテリア用品のEC販売による商品売上代金などです。主な運営主体として、I'nTホールディングスやその子会社がインテリア・家具を中心としたEC専業事業を担い、サザンポートラインなどが物流事業をサポートしています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高は堅調に拡大しており、約4,412億円から直近では約5,198億円へと成長しています。一方で経常利益は200億円台で推移しており、積極的な出店やM&Aに伴う費用の増加もあり、利益率は緩やかな低下傾向にあります。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,412億円 | 4,390億円 | 4,727億円 | 5,014億円 | 5,198億円 |
| 経常利益 | 242億円 | 207億円 | 226億円 | 233億円 | 208億円 |
| 利益率(%) | 5.5% | 4.7% | 4.8% | 4.6% | 4.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 154億円 | 123億円 | 145億円 | 135億円 | 122億円 |
■(2) 損益計算書
直近2年間の収益構造を見ると、売上高と売上総利益はともに増加していますが、利益率は横ばいで推移しています。さらに、店舗網拡大や事業規模の成長に伴い販売費及び一般管理費が膨らんだ結果、営業利益および営業利益率は前年から低下しています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 5,014億円 | 5,198億円 |
| 売上総利益 | 1,795億円 | 1,855億円 |
| 売上総利益率(%) | 35.8% | 35.7% |
| 営業利益 | 250億円 | 224億円 |
| 営業利益率(%) | 5.0% | 4.3% |
販売費及び一般管理費のうち、賃借料が556億円(構成比30.7%)、給料及び賃金が483億円(同26.7%)を占めています。店舗展開に伴う不動産賃借の負担や、人員体制の維持・強化による人件費が主なコスト要因となっています。
■(3) セグメント収益
同社グループは「小売、建築資材等の販売及びこれらに付随する事業」の単一セグメントで事業を展開しています。新規出店やM&A効果により、同セグメントの売上高は着実に伸長しています。今後はECやリフォームなど周辺領域との連携による収益基盤強化が期待されます。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| 小売、建築資材等の販売及びこれらに付随する事業 | 5,014億円 | 5,198億円 |
| 連結(合計) | 5,014億円 | 5,198億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.4%で市場平均を上回っています。キャッシュ・フローの状況は、本業で稼いだ資金と借入による調達資金を併せて店舗等の投資に充てる積極型の傾向を示しています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 224億円 | 230億円 |
| 投資CF | -217億円 | -207億円 |
| 財務CF | -14億円 | 15億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「誰からも愛される存在となるとともに、日本を代表する住まいと暮らしの総合企業」になることを目指す姿として掲げています。社会環境や消費者ニーズの変化に対応しつつ、生活に密着した幅広い商品やサービスを提供することで、地域社会に貢献し続ける存在となることを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、すべての経営活動を「お客様視点」へ転換させることを最も重要な価値観としています。また、将来を担う社員には「チャレンジ精神」や「自律性」を求め、法令遵守の徹底やサステナビリティ(持続可能性)への配慮を通じて、社会や顧客と共創する姿勢を重視する企業文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2028年2月期を最終年度とする3カ年の「第4次中期経営計画」を推進しており、売上規模の拡大と高収益性の追求、財務体質のさらなる強化を目標としています。最終年度の具体的な経営指標は以下の通りです。
・売上高 5,600億円
・営業利益 290億円
・EBITDA 430億円
・親会社株主に帰属する当期純利益 165億円
■(4) 成長戦略と重点施策
目標達成に向け、同社はプロ向け業態を中心とした注力エリアへの出店戦略や、プライベートブランド商品の開発強化を進めています。さらに、自社アプリでのファン化、ネット販売と実店舗を連携させるEC×店舗戦略、本部・店舗の業務効率化(オペレーション戦略)など、複数の重点戦略に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「チャレンジ精神」や「自律性」を持った人材を育成するため、中長期的かつ計画的に社員の成長を支援しています。また、社員一人ひとりが能力を最大限発揮できるよう、心身の健康を保つ「健康経営」や多様な人材の活躍を促進する「ダイバーシティ」、仕事と私生活の両立支援などを積極的に進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 41.6歳 | 15.6年 | 5,369,561円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.4% |
| 男性育児休業取得率 | 58.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 54.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 77.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 116.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年間有給取得日数(12.1日)、中途採用数(76人)、新卒女性採用比率(32.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) プライベートブランド拡大に伴う過剰在庫
同社グループは収益力強化のためにプライベートブランド商品の販売拡大に取り組んでいますが、これに伴い在庫増加や商品回転率の低下リスクを抱えています。販売の予期せぬ変動等によって在庫が過剰となり、その削減が進まず廃棄処分や評価損が発生した場合は、業績に影響を及ぶ可能性があります。
■(2) 店舗投資等に伴う金利変動
同社グループは新規出店や改装などの設備投資資金を主に金融機関からの借入金により調達しており、有利子負債への依存度が比較的高い水準にあります。営業キャッシュ・フローとバランスの取れた設備投資を行い有利子負債の抑制に努めていますが、将来的な金利水準の変動が業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 新規出店に関する法規制等
企業規模の拡大と経営基盤確立を図るために積極的な新規出店を継続する方針ですが、店舗開発には立地や環境に関する様々な法規制が伴います。出店に関する法規制の変更等により、出店計画の延期や変更、あるいは計画の撤回を余儀なくされ、予定通りの店舗網拡大ができないリスクがあります。
■(4) 市場の競合状況及び店舗改廃
同社は関西や関東地区などの重要商圏へ積極出店する一方で、不採算店舗の閉鎖も行っています。同業のホームセンターや低価格を武器にする他業態との競争が激化して店舗の収益性が悪化した場合や、店舗閉鎖に伴って多額の損失が発生した場合、また出店コストが増加した場合には業績に影響が及ぶ可能性があります。



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