三菱電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三菱電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所(プライム市場)に上場し、重電システム、産業メカトロニクス、情報通信システム、電子デバイス、家庭電器などを展開する総合電機メーカーです。当連結会計年度の業績は、売上高が前期比5.0%増、営業利益が同19.3%増、親会社株主に帰属する当期利益が同13.7%増と、増収増益を達成しました。


※本記事は、三菱電機株式会社 の有価証券報告書(第154期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 三菱電機ってどんな会社?


社会インフラから家電、宇宙開発まで幅広い事業を展開し、バランス経営と社会課題解決を目指す総合電機メーカーです。

(1) 会社概要


1921年に三菱造船神戸造船所の電機製作所を継承し設立されました。1949年に東京証券取引所に上場し、重電、電子、機器、商品等の事業本部制を導入して拡大しました。2003年には委員会等設置会社(現 指名委員会等設置会社)へ移行しガバナンスを強化。2024年には自動車機器事業を分社化し、三菱電機モビリティを設立しました。

連結従業員数は約15万人、単体では約3.1万人を擁する巨大企業グループです。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)で、第2位も同様に資産管理を行う株式会社日本カストディ銀行(信託口)です。第3位は米国系のステート・ストリート・バンク・アンド・トラスト・カンパニーとなっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 15.49%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 5.33%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 4.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性18名、女性2名の計20名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表者は代表執行役 執行役社長 CEOの漆間 啓氏です。取締役会における社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
漆間 啓 取締役 代表執行役執行役社長CEO 1982年同社入社。常務執行役社会システム事業担当、専務執行役経営企画・関係会社担当などを歴任。2021年より代表執行役執行役社長CEO。2023年より取締役を兼務し現職。
加賀 邦彦 代表執行役専務執行役インダストリー・モビリティビジネスエリアオーナー、輸出管理担当 1990年同社入社。常務執行役CTO、CSOなどを経て、2023年代表執行役専務執行役インダストリー・モビリティビジネスエリアオーナーに就任。2025年より輸出管理担当を兼務し現職。
高澤 範行 代表執行役専務執行役CSO(経営企画、関係会社担当) 1986年同社入社。電力・産業システム事業本部副事業本部長、常務執行役インフラビジネスエリアオーナー、専務執行役を経て、2025年より代表執行役専務執行役CSOとして現職。
武田 聡 取締役 専務執行役CDO(DX、ビジネスイノベーション担当)、CIO(情報セキュリティ、IT担当)、デジタルイノベーション事業担当 1989年同社入社。FA海外事業部長、常務執行役インダストリー・モビリティビジネスエリアオーナー、CSO等を歴任。2025年より専務執行役CDO兼CIOとして現職。
増田 邦昭 取締役 1987年同社入社。半導体・デバイス業務部長、人事部長、常務執行役CFO兼CHROなどを歴任。2023年より取締役報酬委員を務め、2025年4月より現職。
藪 重洋 取締役 1984年同社入社。米国法人CEO、常務執行役生産システム担当、自動車機器事業担当などを歴任。2024年より取締役監査委員として現職。


社外取締役は、小坂 達朗(元中外製薬会長・CEO)、柳 弘之(元ヤマハ発動機社長・会長)、江川 雅子(成蹊学園学園長)、松山 遙(弁護士)、皆川 邦仁(元リコー常務執行役員)、ピーター D. ピーダーセン(大学院大学至善館専任教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「インフラ」「インダストリー・モビリティ」「ライフ」「ビジネス・プラットフォーム」「セミコンダクター・デバイス」および「その他」事業を展開しています。

インフラ


社会システム事業(鉄道車両システム、水処理監視制御等)、電力システム事業(発電・変電機器等)、防衛・宇宙システム事業(レーダー、衛星等)を提供しています。公共機関や電力会社などが主な顧客です。

製品・システムの販売や、保守・サービス等の対価を顧客から受け取ります。運営は主に三菱電機が担当するほか、三菱電機社会インフラ機器や三菱電機ディフェンス&スペーステクノロジーズなどの子会社が製造・販売を行っています。

インダストリー・モビリティ


FAシステム事業(シーケンサ、サーボモータ、加工機等)および自動車機器事業(電動化製品、ADAS関連等)を展開しています。製造業や自動車メーカーが主な顧客です。

FA機器や自動車用電装品の販売およびソリューション提供により収益を得ます。運営は三菱電機に加え、FA分野では海外販売会社、自動車機器分野では2024年に分社化された三菱電機モビリティなどが担っています。

ライフ


ビルシステム事業(昇降機、ビル管理システム)および空調・家電事業(空調冷熱システム、家電製品)を展開しています。ビルオーナーや一般消費者が顧客です。

製品販売のほか、昇降機や空調設備の保守・管理サービス料が重要な収益源です。運営は三菱電機、三菱電機ビルソリューションズ、海外の販売・製造子会社などが行っています。

ビジネス・プラットフォーム


情報システム・サービス事業(ITインフラ、ネットワークサービス、システムインテグレーション等)を提供しています。製造業や金融機関をはじめとする幅広い法人が顧客です。

システムの構築、運用保守、クラウドサービス提供などによる対価を受け取ります。運営は三菱電機および三菱電機インフォメーションシステムズ等の情報システム系子会社(2025年4月に三菱電機デジタルイノベーションへ再編)が行っています。

セミコンダクター・デバイス


パワーデバイス(SiCパワー半導体等)、高周波デバイス、光デバイス等を開発・製造しています。産業機器、鉄道、自動車、通信機器メーカー等が顧客です。

半導体・電子デバイス製品の販売により収益を得ます。運営は主に三菱電機が担当し、製造・設計面でメルコパワーデバイスなどの関係会社が連携しています。

その他


資材調達、物流、不動産、広告宣伝、金融などのサービスをグループ内外に提供しています。

サービス提供による手数料や賃料などが収益源です。運営は三菱電機トレーディング、三菱電機ライフサービスなどの機能別子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高、利益ともに増加傾向にあります。売上高は為替円安の影響や価格改善、各事業の伸長により5兆円台半ばまで拡大しました。利益面でも、部材価格高騰等の影響を受けつつも、価格転嫁や円安効果により増益基調を維持し、当期は過去最高水準の利益を計上しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 41,914億円 44,768億円 50,037億円 52,579億円 55,217億円
税引前利益 2,588億円 2,797億円 2,922億円 3,659億円 4,373億円
利益率(%) 6.2% 6.2% 5.8% 7.0% 7.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 1,931億円 2,035億円 2,139億円 2,849億円 3,241億円

(2) 損益計算書


直近2期間では、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しました。売上原価率は改善傾向にあり、販売費及び一般管理費は増加したものの、増収効果により営業利益率は向上しています。その他の損益における変動はありましたが、最終的な当期利益もしっかりと確保しており、収益性は向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 52,579億円 55,217億円
売上総利益 15,458億円 16,922億円
売上総利益率(%) 29.4% 30.6%
営業利益 3,285億円 3,918億円
営業利益率(%) 6.2% 7.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当・賞与が633億円(構成比5%)、研究開発費が1,398億円(同11%)を占めています。売上原価には、主に材料費や製造に関わる労務費が含まれます。

(3) セグメント収益


インフラ部門は防衛・宇宙システム等の伸長により大幅な増収増益となりました。ライフ部門も空調機器やビルシステムが堅調で増収増益です。一方、インダストリー・モビリティ部門はFAシステム事業の需要停滞や自動車機器事業の中国販売減により減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
インフラ 12,249億円 12,249億円 312億円 895億円 7.3%
インダストリー・モビリティ 16,448億円 16,448億円 1,188億円 826億円 5.0%
ライフ 21,852億円 21,852億円 1,157億円 1,573億円 7.2%
ビジネス・プラットフォーム 1,468億円 1,468億円 77億円 109億円 7.4%
セミコンダクター・デバイス 2,864億円 2,864億円 299億円 406億円 14.2%
その他 8,521億円 8,521億円 299億円 516億円 6.1%
調整額 -8,186億円 -8,186億円 -48億円 -406億円 -
連結(合計) 55,217億円 55,217億円 3,285億円 3,918億円 7.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 4,155億円 4,559億円
投資CF -941億円 -1,917億円
財務CF -2,401億円 -2,653億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「たゆまぬ技術革新と限りない創造力により、活力とゆとりある社会の実現に貢献します。」という企業理念を掲げています。これは社会における存在意義そのものであり、「成長性」「収益性・効率性」「健全性」のバランス経営と、「事業を通じた社会課題の解決」によるサステナビリティの実現を経営の根幹としています。

(2) 企業文化


コーポレートステートメント「Changes for the Better」のもと、常により良いものを目指して変革し続ける姿勢を重視しています。また、コンプライアンス・モットーとして「Always Act with Integrity(いかなるときも「誠実さ」を貫く)」を掲げ、倫理・遵法の徹底と風通しの良い組織風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画において、2025年度の目標として以下の数値を掲げています。
* 売上高:5兆4,000億円
* 営業利益率:8.0%
* ROE:8.6%
* キャッシュ・ジェネレーション:3兆1,000億円(5年累計)

(4) 成長戦略と重点施策


ROICを活用した事業運営による資産効率とキャッシュ創出力の向上、および事業ポートフォリオ戦略に基づくリソースシフトを推進しています。また、デジタル基盤「Serendie」を活用し、データを集約・分析して新たな価値を生み出す「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」への変革を進めています。

* インフラ:脱炭素コンポーネントや防衛・宇宙事業への重点投資、統合ソリューションの推進。
* インダストリー・モビリティ:FAデジタルソリューション構築やソフトウエア領域での価値創造。
* ライフ:空調・昇降機の設備事業に加え、保守・運用管理などの循環型事業を強化。
* サステナビリティ:カーボンニュートラル等の社会課題解決と事業成長の両立(トレード・オン)を追求。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「成長に繋がる適正評価の実現」と「自律的キャリア開発支援」をコンセプトに、従業員のキャリアオーナーシップに基づく自律的な成長を促進しています。マネジメント層にはグローバル基準のジョブグレード制度を適用し、ジョブ型人財マネジメントへの転換を図ることで、人的資本価値の最大化を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.3歳 16.3年 8,695,126円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.0%
男性育児休業取得率 96.9%
男女賃金差異(全労働者) 63.0%
男女賃金差異(正規雇用) 64.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 60.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメントスコア(60.0%)、障がい者雇用率(2.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済安全保障に関わるリスク


各国の関税強化や輸出規制、国際情勢の緊張等は、同社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。海外売上比率が5割を超える中、経済安全保障リスクによる社会・経済的混乱が製品需要の変化をもたらす恐れがあります。これに対し、政策動向の分析や機微技術管理、サプライチェーンの統合的なリスク制御を行っています。

(2) サプライチェーンの環境変化


感染症、自然災害、輸出管理強化、人権課題などによる供給混乱が事業に影響する可能性があります。特定地域への依存リスクに対し、調達複線化、在庫確保、代替品探索、新ルート開拓などを進め、サプライチェーンの強靭化を図っています。これにより調達リスクへ迅速に対応し、製品の安定供給を目指しています。

(3) サイバー攻撃等の増大


高度なサイバー攻撃がITのみならず製造現場等のOT環境にも及ぶリスクが拡大しており、情報漏洩や生産停止、納入製品の脆弱性による社会的影響が懸念されます。同社は関係機関と連携し、高度な攻撃への対応能力強化や製品のセキュリティ対策、人的な情報漏洩防止策を推進し、事業への影響最小化に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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