野村総合研究所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

野村総合研究所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており、コンサルティング、金融・産業向けITソリューション、IT基盤サービスを主軸に事業を展開しています。直近の業績は、売上収益7,648億円(前期比3.8%増)、営業利益1,349億円(同12.0%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社野村総合研究所 の有価証券報告書(第60期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 野村総合研究所ってどんな会社?


野村総合研究所は、コンサルティングからシステム開発・運用までを一貫して提供する、日本を代表する総合シンクタンク兼システムインテグレーターです。

(1) 会社概要


1965年に旧野村総合研究所が設立され、1966年に設立された野村コンピュータシステムと1988年に合併し、現在の体制となりました。2001年に東京証券取引所市場第一部に上場し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。近年では、豪州や北米でのM&Aを通じてグローバル展開を加速させています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は16,679名、単体では7,645名です。筆頭株主は同社の主要な顧客でもある事業会社の野村ホールディングスで、第2位、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。野村ホールディングスとは人材交流や取引関係があり、強固なパートナーシップを築いています。

氏名 持株比率
野村ホールディングス 20.16%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.40%
日本カストディ銀行(信託口) 5.43%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表取締役 社長は柳澤 花芽氏が務めています。社外取締役比率は21.4%です。

氏名 役職 主な経歴
柳澤 花芽 代表取締役社長 1991年同社入社。執行役員、常務執行役員として人事、事業戦略、IR等を担当。2024年4月より社長、同年6月より現職。
此本 臣吾 取締役会長取締役会議長 1985年同社入社。コンサルティング事業本部長などを経て、2016年代表取締役社長、2019年代表取締役会長兼社長に就任。2024年6月より現職。
江波戸 謙 代表取締役副社長金融部門管掌、IT基盤部門管掌 1987年同社入社。証券ソリューション事業本部長などを歴任。2021年取締役専務執行役員、2023年代表取締役副社長を経て、2024年4月より現職。
赤塚 庸 取締役副会長 1990年野村證券入社。野村ホールディングス執行役員、ノムラ・ホールディング・アメリカCEOなどを歴任。2022年6月より現職。
嵯峨野 文彦 取締役専務執行役員コンサルティング部門管掌、産業部門管掌 1990年同社入社。システムコンサルティング事業本部長などを経て、2024年取締役専務執行役員DX管掌等に就任。2025年4月より現職。
安齋 豪格 取締役 1989年同社入社。常務執行役員として経営企画等を担当。2021年代表取締役専務執行役員コーポレート部門管掌に就任。2025年4月より現職。


社外取締役は、坂田 信以(元住友化学代表取締役社長)、大橋 徹二(元小松製作所代表取締役社長兼CEO)、小堀 秀毅(元旭化成代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コンサルティング」、「金融ITソリューション」、「産業ITソリューション」、「IT基盤サービス」および「その他」事業を展開しています。

(1) コンサルティング


政策提言や戦略コンサルティング、業務改革を支援する業務コンサルティング、ITマネジメント全般にわたるシステムコンサルティングを提供しています。公共および民間企業が主な顧客です。

収益は、顧客に対するコンサルティングサービスの提供対価として得ています。運営は主に野村総合研究所が中心となって行っています。

(2) 金融ITソリューション


主に証券業、保険業、銀行業等の金融機関向けに、システムコンサルティング、システム開発・運用サービス、共同利用型システム等のITソリューションやBPOサービスを提供しています。

収益は、金融機関からのシステム開発・運用費や共同利用型サービスの利用料等から得ています。運営は野村総合研究所のほか、NRIプロセスイノベーション、だいこう証券ビジネス、DSB情報システム、日本証券テクノロジー、Australian Investment Exchange Limited等の関係会社が行っています。

(3) 産業ITソリューション


流通業、製造業、サービス業や公共向けに、システムコンサルティング、システム開発・運用サービス等のITソリューションを提供しています。企業のDX推進を支援するサービスも含まれます。

収益は、顧客企業からのシステム開発・運用費等から得ています。運営は野村総合研究所のほか、NRIネットコム、NRIシステムテクノ、NRIデジタル、NRI Australia Limited、SQA Holdco Pty Ltd、Convergence Technologies, Inc.等の関係会社が行っています。

(4) IT基盤サービス


主に金融ITおよび産業ITソリューション部門を通じて、データセンターの運営管理やIT基盤・ネットワーク構築等のサービスを提供しています。また、情報セキュリティサービスや先端技術の調査・研究も行っています。

収益は、データセンター利用料やIT基盤構築・運用費、セキュリティサービス料等から得ています。運営は野村総合研究所のほか、NRIセキュアテクノロジーズ、NRIデータiテック等の関係会社が行っています。

(5) その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、製品販売やその他のサービスを展開しています。

収益は、各種製品やサービスの販売対価として得ています。運営は野村総合研究所およびグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は第56期から第60期にかけて連続して増加しており、順調な成長傾向にあります。税引前利益も同様に増加基調を維持しており、利益率も10%台後半で安定的に推移しています。当期利益についても、各期で着実に利益を積み上げており、収益性の高さと安定成長が継続していることが読み取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 5,503億円 6,116億円 6,922億円 7,366億円 7,648億円
税引前利益 711億円 1,047億円 1,085億円 1,172億円 1,342億円
利益率(%) 12.9% 17.1% 15.7% 15.9% 17.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 529億円 714億円 763億円 796億円 938億円

(2) 損益計算書


直近2期間において、売上収益は増加しており、それに伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は35%前後で安定して推移しており、高い収益性を維持しています。営業利益および営業利益率も前期と比較して向上しており、効率的な事業運営が行われていることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 7,366億円 7,648億円
売上総利益 1,893億円 2,031億円
売上総利益率(%) 25.7% 26.6%
営業利益 1,204億円 1,349億円
営業利益率(%) 16.3% 17.6%


売上原価のうち、事務委託費が2,497億円(構成比51%)、従業員給付費用が2,466億円(同50%)を占めています。

(3) セグメント収益


全てのセグメントにおいて黒字を確保しており、特に金融ITソリューションが売上、利益ともに最大規模を誇ります。コンサルティングは高い利益率を示しており、IT基盤サービスも安定した収益源となっています。産業ITソリューションは売上が微減となりましたが、利益は確保しています。全体としてバランスの取れた収益構造となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
コンサルティング 548億円 654億円 139億円 184億円 28.1%
金融ITソリューション 3,557億円 3,723億円 547億円 615億円 16.5%
産業ITソリューション 2,825億円 2,749億円 234億円 242億円 8.8%
IT基盤サービス 1,855億円 2,013億円 282億円 305億円 15.1%
調整額 -1,420億円 -1,490億円 3億円 3億円 -0.2%
連結(合計) 7,366億円 7,648億円 1,204億円 1,349億円 17.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得たキャッシュを、投資活動や借入金の返済などの財務活動に充てている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。本業でしっかりと現金を稼ぎ出し、将来のための投資や財務体質の改善を進めている安定した状態と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1,423億円 1,302億円
投資CF -534億円 -476億円
財務CF -476億円 -873億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は22.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「Dream up the future. 未来創発」をコーポレート・ステートメントに掲げ、「新しい社会のパラダイムを洞察し、その実現を担う」、「お客様の信頼を得て、お客様とともに栄える」ことを使命としています。未来の社会を創発し、活力、持続可能性、安全安心に満ちた社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


1965年に民間初の総合シンクタンクとして誕生したルーツを持ち、創業時より「産業経済の振興と一般社会への奉仕」を目的としてきました。経済価値と社会価値を一体的に追求する姿勢が50年以上にわたり培われており、未来を洞察しデジタル技術で実現するという独自の強みを持っています。

(3) 経営計画・目標


「NRI Group Vision 2030(V2030)」の実現に向け、2026年3月期を最終年度とする中期経営計画「中計2025」を推進しています。2030年に向けて「創出する価値」「価値を生み出す資本」「経営基盤」の3層で8つのマテリアリティに取り組みます。

* 2026年3月期目標:売上収益8,100億円
* 海外売上収益1,500億円
* 営業利益1,450億円
* 営業利益率17.9%
* ROE20%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「中計2025」では、コアビジネス領域、DX進化、グローバル、マネジメントの4領域を柱としています。コア領域では深化と進化を同時実現し、DXではビジネスモデル変革や社会課題解決に挑戦します。グローバルでは北米・豪州・アジアでの体制を整備し、人的資本の拡充やサステナビリティ経営により経営基盤を盤石化させます。

* 2026年3月期連結業績見通し:売上収益8,100億円
* 同営業利益:1,500億円
* 同営業利益率:18.5%

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「中計2025」において人的資本の拡充を掲げ、DXやグローバル事業を推進できる人材の確保と育成を急務としています。新卒・キャリア採用の強化に加え、多様な価値観を持つ従業員が活躍できる風土醸成とエンゲージメント向上を推進。専門性を高め、自律的に挑戦・成長し続けるプロフェッショナル人材の輩出を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.9歳 13.9年 13,217,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外給与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.5%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 71.5%
男女賃金差異(正規雇用) 71.5%
男女賃金差異(非正規雇用) -%


※男女賃金差異(非正規雇用)については、同社には該当者がいないため記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、価値共創共感度(69%)、女性への機会付与率(16%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経営戦略に関するリスク


コンサルティングやシステム開発の競争激化により、収益機会が減少する可能性があります。また、技術革新への対応遅れや、ソフトウエア投資の回収不能、出資先の価値減少、予期せぬ契約解除などが業績に影響を及ぼす可能性があります。野村ホールディングスとの資本関係による利益相反の可能性もあります。

(2) 情報セキュリティに関するリスク


サイバー攻撃やランサムウェア等による情報漏洩の脅威が増大しています。同社はプライバシーマークやISMS認証を取得し厳重な管理を行っていますが、万が一被害が発生した場合、損害賠償請求や信用の失墜により、業績に悪影響が生じる可能性があります。

(3) 人材確保・育成に関するリスク


IT人材不足の中で、高度な専門性を持つ人材の獲得競争が激化しています。人材の確保・育成が計画通り進まない場合や、労務環境の悪化により労働生産性が低下した場合、同社の競争力や業績に影響を与える可能性があります。働き方や価値観の多様化への対応も重要です。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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