※本記事は、株式会社野村総合研究所の有価証券報告書(第61期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 野村総合研究所ってどんな会社?
コンサルティングとITソリューションを融合し、社会課題解決とビジネス変革を支援する総合シンクタンク・システムインテグレーターです。
■(1) 会社概要
1965年に国内初の総合シンクタンクとして旧野村総合研究所が設立され、1988年に野村コンピュータシステムと合併して現在の体制となりました。2001年に東京証券取引所市場第一部に上場し、現在はプライム市場に移行しています。近年は豪州や北米のIT企業を相次いで子会社化し、グローバルでの事業基盤拡大を進めています。
従業員数は連結で16,894名、単体で7,982名です。筆頭株主は野村ホールディングスで、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 野村ホールディングス | 20.14% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.85% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.38% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表取締役社長は柳澤花芽氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 柳澤 花芽 | 代表取締役社長 | 1991年同社入社。人事、人材開発等を歴任し、常務執行役員事業戦略等担当を経て、2024年より現職。 |
| 此本 臣吾 | 取締役会長取締役会議長 | 1985年同社入社。コンサルティング事業本部長等を経て2016年代表取締役社長に就任し、2024年より現職。 |
| 山﨑 政明 | 代表取締役専務執行役員コーポレート部門管掌、本社機構担当 | 1992年同社入社。証券ソリューション事業副本部長等を歴任し、2026年より現職。 |
| 赤塚 庸 | 取締役副会長 | 1990年野村證券入社。野村ホールディングス執行役員等を歴任し、2022年より現職。 |
| 江波戸 謙 | 取締役 | 1987年同社入社。証券ソリューション事業本部長、代表取締役副社長等を経て、2026年より現職。 |
| 嵯峨野 文彦 | 取締役 | 1990年同社入社。システムコンサルティング事業本部長、専務執行役員等を歴任し、2026年より現職。 |
| 稲田 陽一 | 取締役(監査等委員)(常勤) | 1988年同社入社。流通・情報通信ソリューション事業本部長、監査役等を経て、2025年より現職。 |
| 桧原 猛 | 取締役(監査等委員)(常勤) | 1991年同社入社。経営企画、事業戦略副担当、監査役等を歴任し、2025年より現職。 |
社外取締役は、大橋徹二(元小松製作所社長)、小堀秀毅(元旭化成社長)、浅井英里子(元GEジャパン社長)、小酒井健吉(元三菱ケミカルホールディングス副社長)、川﨑博子(元NTTドコモ取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「コンサルティング」「金融ITソリューション」「産業ITソリューション」「IT基盤サービス」および「その他」事業を展開しています。
■(1) コンサルティング
政策提言や戦略立案、業務改革をサポートする業務コンサルティングのほか、ITマネジメント全般にわたるシステムコンサルティングを提供しています。主に国内外の民間企業や官公庁、公共機関を対象としています。
収益は、顧客である民間企業や官公庁からのコンサルティング報酬や調査受託費用から得ています。運営は主に野村総合研究所が中心となって行っています。
■(2) 金融ITソリューション
証券業、保険業、銀行業などの金融機関向けに、システムコンサルティングから開発、運用、共同利用型システムの提供、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスまでを総合的に提供しています。
収益は、金融機関等からのシステム開発請負代金、システム運用・保守に係る利用料、およびBPOサービスの受託手数料から得ています。運営は同社や、だいこう証券ビジネス、DSB情報システムなどの子会社が行っています。
■(3) 産業ITソリューション
流通業、製造業、サービス業などの民間企業や公共機関向けに、システム開発や運用サービスなどのITソリューションを提供しています。顧客のDX推進やビジネスモデルの創出を支援しています。
収益は、各産業の顧客からのシステム開発請負代金や運用・保守サービスに係る継続的な利用料から得ています。運営は同社やNRIネットコム、NRIシステムテクノなどの子会社が行っています。
■(4) IT基盤サービス
金融および産業分野の顧客に向けたデータセンターの運営管理やIT基盤・ネットワークの構築を行うほか、幅広い業種の顧客に対して情報セキュリティサービスを提供しています。
収益は、データセンターの利用料、クラウドなどのインフラ環境構築費、およびセキュリティサービス等の継続的な利用料から得ています。運営は同社やNRIセキュアテクノロジーズなどの子会社が行っています。
■(5) その他事業
上記の報告セグメントに含まれないその他の事業や調整額に関連する活動が含まれます。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は直近5年間で継続的な増加傾向にあり、事業規模が着実に拡大していることがわかります。一方、税引前利益や当期利益は直近まで増加傾向にありましたが、当期において海外事業の減損損失を計上した影響により、大幅な減益となりました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 6,116億円 | 6,922億円 | 7,366億円 | 7,648億円 | 8,147億円 |
| 税引前利益 | 1,047億円 | 1,085億円 | 1,172億円 | 1,342億円 | 589億円 |
| 利益率(%) | 17.1% | 15.7% | 15.9% | 17.5% | 7.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 714億円 | 763億円 | 796億円 | 938億円 | 153億円 |
■(2) 損益計算書
売上高はシステム開発や運用サービスの好調により前期から順調に伸び、売上総利益も増加しています。しかし、営業利益は海外子会社の減損損失を計上した影響で大きく減少し、営業利益率も低下する結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7,648億円 | 8,147億円 |
| 売上総利益 | 2,031億円 | 2,331億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.6% | 28.6% |
| 営業利益 | 1,349億円 | 583億円 |
| 営業利益率(%) | 17.6% | 7.2% |
販売費及び一般管理費(920億円)のうち、給料及び手当が273億円(構成比30%)、事務委託費が235億円(同26%)を占めています。売上原価(3,772億円)では、外注実績などを含むシステム開発や運用にかかる費用が大きな割合を占めています。
■(3) セグメント収益
金融ITソリューションやIT基盤サービス等の主要セグメントにおいて、顧客のDX投資や運用サービスが拡大し増収となりました。利益面では、金融ITなどが順調に推移したものの、産業ITソリューションにおいて海外事業の減損損失を計上したため同セグメントが赤字となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| コンサルティング | 654億円 | 687億円 | 184億円 | 192億円 | 28.0% |
| 金融ITソリューション | 3,726億円 | 4,052億円 | 616億円 | 743億円 | 18.3% |
| 産業ITソリューション | 2,760億円 | 2,800億円 | 243億円 | -746億円 | -26.6% |
| IT基盤サービス | 2,015億円 | 2,215億円 | 303億円 | 386億円 | 17.4% |
| 調整額 | -1,506億円 | -1,607億円 | 3億円 | 8億円 | - |
| 連結(合計) | 7,648億円 | 8,147億円 | 1,349億円 | 583億円 | 7.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
健全型のキャッシュ・フロー状況です。営業活動で安定した資金を生み出し、その資金をシステム開発などの投資活動や借入金の返済等の財務活動に充当している優良な資金循環の局面です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1,302億円 | 1,476億円 |
| 投資CF | -476億円 | -970億円 |
| 財務CF | -873億円 | -908億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、コーポレート・ステートメントである「Dream up the future. 未来創発」を掲げています。「新しい社会のパラダイムを洞察し、その実現を担う」「お客様の信頼を得て、お客様とともに栄える」ことを使命とし、活力ある社会や持続可能な社会、安全で安心に満ちた社会を創発することを企業理念の中に位置づけています。
■(2) 企業文化
1965年に国内・民間初の総合シンクタンクとして誕生したルーツを持ち、「産業経済の振興と一般社会への奉仕」を目的とする創業時の精神を受け継いでいます。経済価値と社会価値の一体的な追求を50年以上にわたり培っており、未来のありたい姿を洞察し、それをデジタル技術で実現するというユニークな強みを発揮する文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
長期経営ビジョン「NRI Group Vision 2030」の実現に向け、「中期経営計画(2026-2028)」を策定しています。AIやデータセキュリティなどの成長領域における価値共創を通じて持続的成長を目指し、最終年度には以下の数値目標を掲げています。
* 売上収益:9,500億円
* 営業利益:2,000億円
* 営業利益率:21.1%
* ROE:25%水準
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画では、「AIによるビジネス変革」「デジタルセキュリティサービスの拡充」「社会共創サービスの拡大」の3つの領域を成長の柱と位置づけています。AIを活用した包括的な支援や独自の高付加価値ソリューションを展開するほか、セキュリティ関連のコンサルティング強化や金融ビジネスプラットフォーム等の共同利用型サービスの拡大を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、社員のウェルビーイングを人的資本拡充を推進する原動力と位置づけ、「成長」「やりがい」「つながり」の3つの要素を実感できる環境づくりを推進しています。AI・セキュリティ領域における高度専門人材の採用やアップスキリングを強化するとともに、市場価値に応じた適正な処遇や、多様な価値観を持つ社員が挑戦し続けられる制度を整備しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.7歳 | 13.7年 | 13,326,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外給与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.7% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 73.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | - |
※パート・有期労働者の男女賃金差異は該当するデータがないため記載を省略しています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性への機会付与率(17%)、AI高度人材数(1,147名)、セキュリティ高度人材数(1,198名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 情報セキュリティに関する脅威
AIの進化やDX化の進展によりサイバー攻撃等の脅威が増大しています。同社は顧客の機密情報を扱う機会が多く、不正アクセスやランサムウェア等による情報漏えいが発生した場合、損害賠償請求や信用失墜等により業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 労務管理と長時間労働の課題
長時間労働や健康管理に関わる課題が適切に対応されない場合、職場環境の悪化や労働生産性・信用の低下を招くリスクがあります。同社は定期的なモニタリングによる業務調整や増員、AI活用による業務効率化を進め、労務環境の改善と未然防止に努めています。
■(3) 情報システムの運用およびプロジェクト監理
顧客の基幹システムや社会インフラとなるシステムの運用・開発において、人的ミスや機器の故障、想定以上の作業工数の増加等が発生するリスクがあります。安定稼働が実現できない場合や納期遅延が生じた際には、損害賠償や採算悪化につながる可能性があります。
■(4) コンプライアンスおよび法令・規制への対応
国内外の法令や規制の適用を受ける中、経済安全保障や輸出管理等の規制強化への対応が求められています。法令違反や規制対応の遅れが発生した場合、行政処分や取引制限等を受け、社会的信用の低下や事業戦略の変更を余儀なくされる可能性があります。



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