大手SIerの電通国際情報サービス(ISID)は、ここのところ新技術の導入に躍起になっています。
ISIDは2018年5月20日に、みずほフィナンシャルグループや富士通とともに、スポーツイベントのキャッシュレス決済の実証実験を実施しました。これは金融とIT(情報技術)を融合させた、いわゆるフィンテックの用途を拡大させる狙いがあります。
また宮崎県綾町と組んで、仮想通貨の記述であるブロックチェーン技術を使って、有機農産物の品質を保証する実証実験も進めています。これは生産者や産地、生産履歴、流通情報などを見られるQRコードをつけることで、食の安全を求める消費者に対して保証をするための取り組みです。
ISIDは電通グループのうちの一社として知られており、グループ内ではコミュニケーションIT分野の拡大を図っています。その他、エンジニアソリューション部門では、電機・精密や機械業界向けのソフトウェアの販売も行っています。
またISIDは、東洋経済オンラインの「平均年収ランキング」ではトップ100にラインクインしており、平均年収が高いことでも有名です。
それでは、電通国際情報サービス(ISID)の年収はいったいどれくらい高いのか、またなぜそんなに高いのか、そして就職・転職先として適しているのかを探っていきましょう。
電通国際情報サービスの平均年収は1057.4万円
それでは、はじめに電通国際情報サービスの平均年収について見ていきます。電通国際情報サービスの平均年収は、電通国際情報サービスの有価証券報告書によると、1057.4万円です。キャリコネに寄せられた給与明細から算出した電通国際情報サービス年代別年収レンジは、20歳代で540〜590万円、30歳代で820〜870万円、40歳代で1060〜1110万円となっています。男女あわせた民間の正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)ですから、それと比較しておよそ2.14倍の額です。
■電通国際情報サービスの平均年収推移
決算月 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数 |
---|---|---|---|---|
2021年12月期 | 1057.4万円 | 41歳 | 12.3年 | 1697人 |
2020年12月期 | 1047.2万円 | 41歳 | 12.3年 | 1633人 |
2019年12月期 | 993.9万円 | 41.1歳 | 12.6年 | 1519人 |
2018年12月期 | 896万円 | 41歳 | 12.7年 | 1457人 |
2017年12月期 | 897.7万円 | 40.9歳 | 12.7年 | 1405人 |
出典:電通国際情報サービス・有価証券報告書
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
電通国際情報サービスの平均年収は前年を上回り1057.4万円でした。
過去5年間では最高額になりました。
電通国際情報サービスの年代別平均年収と中央値
■電通国際情報サービスの年収中央値は30代で844.5万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
年代 | 平均年収 | 平均月収 | 平均ボーナス | 年収中央値 |
---|---|---|---|---|
20代 | 560.3万円 | 31.6万円 | 141.4万円 | 504.27万円 |
30代 | 844.5万円 | 46.9万円 | 213.2万円 | 760.05万円 |
40代 | 1085万円 | 59.9万円 | 274.1万円 | 976.5万円 |
50代 | 1181万円 | 65.1万円 | 298.4万円 | 1062.9万円 |
※キャリコネの口コミ、有価証券報告書、厚労省・経産省・国税庁発表の調査資料を元に、編集部で独自に算出
電通国際情報サービスと競合他社の平均年収を比較
電通国際情報サービスの競合や同業界である伊藤忠テクノソリューションズ、日鉄ソリューションズ、NSDの4社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、電通国際情報サービスが1057.4万円、伊藤忠テクノソリューションズが941万円、日鉄ソリューションズが844.6万円、NSDが651.5万円です。
この4社の中で最高額は電通国際情報サービスの1057.4万円で、最低額がNSDの651.5万円。その差はおよそ406万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中では電通国際情報サービスは1番目に位置します。
社名 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数(単体) | 売上高 |
---|---|---|---|---|---|
電通国際情報サービス | 1057.4万円 | 41歳 | 12.3年 | 1697人 | 965.35億円 |
伊藤忠テクノソリューションズ | 941万円 | 40.8歳 | 13.5年 | 4597人 | 4586.56億円 |
日鉄ソリューションズ | 844.6万円 | 40歳 | 13年 | 3350人 | 2355.19億円 |
NSD | 651.5万円 | 39.3歳 | 15年 | 3106人 | 636.04億円 |
電通国際情報サービスの競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください
電通国際情報サービスの給与制度
■年功序列型の賃金体系 若手少なく
では電通国際情報サービスの年収はなぜ高いのでしょうか。それにはいくつか理由があります。
まず、大手シンクタンク系SIerは、一見かなり平均年収が高く見えますがその背景に共通点が2点あります。
・年功序列の賃金体系を設けていることが多い
・社員の平均年齢は30代後半で若手層が少ない
社員の平均年齢が高い理由は、採用人数の増減が深く関係しているようです。
ISIDは1975年に設立されましたが、この1980年前後に設立された多くの大手SIerは、日本におけるインターネットの著しい普及に伴って右肩上がりでした。この好調の波に乗り、従業員を増やし続けてきた経緯があります。
しかしその後、2001年のITバブル崩壊と2008年のリーマンショックの影響を大きく受けて、人材の採用を縮小した期間がありました。結果として現在は30歳前後の社員が少なく、40歳半ばから50歳くらいまでの社員が多くなっているのです。
電通国際情報サービス(ISID)社員の給与明細(キャリコネ)
やはり、20代と30代では差が!
20代・プロジェクトマネージャー(非管理職)の 給与明細
30代・プロジェクトマネージャー(非管理職)の 給与明細
賞与の有無は大きい!
20代・プロジェクトマネージャー・賞与なし(非管理職)の 給与明細
20代・プロジェクトマネージャー・賞与あり(非管理職)の 給与明細
年収の高さばかりに目を奪われがちですが、就職・転職を検討するにあたり気をつけなければならないことはないのでしょうか。
電通国際情報サービスで働く上での懸念点・課題
■課題は30代前後の労働力不足
経済産業省「平成28年企業活動基本調査確報―平成27年度実績ー」によると、情報処理・提供サービス業の売上高経常利益率は7.4%で、業界内で比較してみるとISIDの売上高経常利益率はやや低いとみられます。
先述でご紹介したように、現在のISIDは社員の平均年齢が30代後半で、30歳前後の若手層が少ない状況です。社員の年齢層が高めになってきていることから、組織が硬直化して昇進がしづらい可能性もあります。
さらに要員1人あたりの価格である「人月単価」の相場が年々下がっていることから、平均年齢上昇による人件費で原価がアップし、結果的に利益率は降下してきている状態です。
結局電通国際情報サービスは就職・転職先として選んでもいいのか
ISIDは平均年齢が高めですが、若手層が少ないからこそ期待される面があり、それがメリットであるとも言えます。
電通グループであることから、広告関連やコミュニケーション分野において、同業他社では経験できないプロジェクトを任せてもらえる可能性が高いです。
また巨大なシステムの構築や社会インフラの整備拡大など、社会的意義が大きい仕事に携わることができます。1案件につき何十億、何百億円もする巨大プロジェクトに関わり経験ができることも、大手でしか味わえない醍醐味です。
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」