【平均年収767.3万円】セイコーエプソン社員の給料は実際いくらもらっているのか？

2018年6月にお台場でオープンして以来、人気を呼んで行列の絶えない美術館があります。
プロジェクションマッピングが有名なこの美術館の名は、森ビル デジタルアート ミュージアム：エプソン チームラボ ボーダレスです。ここでは470万台ものプロジェクターで、1万平方メートルにも及ぶ広い館内の壁や床に立体的に映し出しており、これまでにないような体験型のデジタルアートが表現されています。

この美術館の名称からもわかるとおり、デジタルアートを映すプロジェクターの提供を行っているのが、セイコーエプソンです。従来ではプリンターのイメージが強いエプソンではありますが、一般的にあまり知られてこなかった面もあります。実は500ルーメン以上のプロジェクターの分野でも、エプソンは大きな実績を残しています。またプロジェクター会社としては、世界シェア首位の座を17年にも渡って築き上げてきた企業でもあるのです。

またセイコーエプソンは年収が高いことでも有名で、3000社を超える上場企業の中でも常に上位に位置しています。
では一体どれくらい高いのか、高い理由はなにか、年収の高さ以外のメリットやデメリットはあるのかなどに迫っていきましょう。

セイコーエプソンの収益構造から、高年収の背景を紐解いてみましょう。
全体の事業利益の約7割は、プリンターを含むプリンティングソリューションズ事業が占めています。とくに大容量インク搭載プリンターが好調で、2017年度に前年比7.5％増加した売上収益を牽引するほどです。このプリンターは世界約150の国と地域で広く受け入れられ、累計販売台数は3000万台を突破するという快挙を成し遂げています。

事業利益の残る約2割はプロジェクターを含むビジュアルコミュニケーション事業という構成で、比率のみで判断するとまだ低い割合ではありますが、利益の成長頭といえるでしょう。この事業の利益は2017年度で244億円という値を打ち出し、前期と比べて5割の増加を果たしました。プロジェクターの製品単独としての利益率は20％程度あるといわれており、非常に高い水準となっています。つまり、会社の代名詞でもあるプリンターの安定的な収益と、高利益率を出すプロジェクターの収益が一体となり、セイコーエプソンの高年収を支えているといえるでしょう。

セイコーエプソンの階級は係員、主任、主事、基幹社員にわかれており、いずれも昇進には試験が必要です。この昇進試験に合格して昇格するか否かによって、年収に差が出てくるようです。30歳位までは年功序列で毎年昇給しますが、要となる主任昇格試験をパスしなければ給与は頭打ちになるといいます。30歳前後で主任になれるかどうかで、その後の昇給の上り幅が決まると考えてよいでしょう。ただし、数年ほど前から試験合格者数が絞られるようになった点は注意が必要です。

なお40歳までに課長を経験し、基幹社員と呼ばれる幹部になれば、年収は1000万円超と大きく上昇します。これを目安として、1つの目標にするとよいでしょう。

年収の高さばかりに目を奪われがちですが、就職・転職を検討するにあたり気をつけなければならないことはないのでしょうか。

懸念点として挙げられるのは、勤務地について自分の希望を聞き入れてもらうことは難しい点です。原則として勤務地の指定はできず、仕事内容によって勤務先が決定します。セイコーエプソンの事業開発拠点は長野県に集中しているため、新卒で入社する人の多くが長野県配属となるようです。

長野県が出身地の人やそこに永住する希望がある際は利点となり得ますが、他県へ在住したいという願望を強く持っている場合には注意が必要となるでしょう。とはいえ、長野県は物価水準なども都心と比べて低く、また自然豊かでもあるため、その土地だからこその暮らしやすさもあるようです。

ここまでセイコーエプソンの年収面を見てきました。ただ就職先、転職先として年収の高さだけで決めることはできません。その他にメリットは無いのでしょうか？

先述で紹介した大容量インクタンク搭載プリンターは、ある意味これまでの消耗品で稼ぐビジネスモデルと相反する製品です。なぜセイコーエプソンがそれをあえて作り、売り出すのか、その理由は改訂された経営理念が大きく関わっています。

セイコーエプソンは2017年より「なくてはならない会社」という言葉を経営理念に加えました。競合他社に目を向けるのではなく、あくまでも顧客や社会のニーズに真摯に向き合うことを目指すという意志が込められています。大容量インクタンク搭載プリンターこそ、まさにそんなニーズにとことん向き合った末に生まれた製品なのです。

プリンター業界は、まさに今変革を迫られています。その変化の在り方として、しっかりと顧客に向き合い社会に対応するその姿勢は、顧客だけでなく社員のモチベーションにもつながるのではないでしょうか。