世界に誇れる日本企業の代表格として、ソニー株式会社(以下「ソニー」)を思い浮かべる人も多いでしょう。2017年時点で海外売上比率が70%を超えるグローバル企業です。
国内初のテープレコーダーや半導体素子のトランジスタを使用したラジオに始まり、従来品になかった明るさや発色の良さを実現した「トリニトロンカラーテレビ」、ポータブルオーディオプレイヤー「ウォークマン」など、ライフスタイルを変革するような目新しい製品を次々と世に送り出してきました。
ソニーの事業内容や年収、働きやすさ、面接対策など、転職者が気になる情報を細部まで深掘りしていきます。
ソニーの事業概要~どんな事業をしているのか
■子会社1500社超&リカーリングビジネスにシフト
ソニーは祖業のエレクトロニクス領域のみならず、映画や音楽、金融、ゲーム&ネットワークサービスなど多方面で事業を展開しています。子会社数が非常に多いことでも有名で、2019年3月末時点で1588社。子会社化を進めることで、責任の所在が明確になり、予算管理や人材採用、他社との提携といったさまざまな判断が早くなるというメリットがあります。
また、従来ソニーはBtoCビジネス(企業と消費者間の取引)の割合が高く、景気の動向に左右されやすいという問題点を抱えていました。そこで、電化製品などのハードの売り切り型ではなく、ハードに付随するソフトやサービスなどを継続的に提供し、安定した収益を上げる「リカーリングビジネス」を導入。例えば、デジタルカメラのレンズの追加購入や、PlayStationのオンラインゲーム上の課金などがリカーリングビジネスに相当します。リカーリングビジネスの割合は2018年3月末時点で、すでに売上高の約4割にも上っています。
ソニーの業績・財務状況~業績はどうか
■全体の業績と財務状況
続いて、全体の業績についてみてみましょう。ソニーの財務数値は、米国会計原則に則って算出されています。
業績が低迷して2012年3月期に巨額の赤字を計上した後、ソニーはトップ交代、人員削減、PC事業の売却など大規模な構造改革を断行。この改革が功を奏し、業績を回復させていきました。2019年3月期連結決算では、売上高は8兆6657億円(前年比1.4%増)、営業利益(本業の儲け)は8942億円(前年比21.7%増)、株主に帰属する当期純利益は9163億円(前年比86.7%増)で着地。20年ぶりに最高益となった前年度に続き、2年連続で過去最高益を更新しました。
PlayStation4関連のゲームソフトやオンラインサービス「PlayStation Network」(以下「PSN」)からの収益が増加するなど、ゲーム&ネットワークサービス分野が好調です。また、スマートフォン向けイメージセンサーを中心に半導体事業の増益も影響しました。
■セグメント別の業績と現在の取り組み
では、業績好調に大きく貢献した2018年度の2事業の業績について、より詳しくみていきましょう。
まず、ゲーム&ネットワークサービス事業は、売上高は前年比18.9%増の2兆3109億円、営業利益は前年比75.3%増の3111億円の増収増益となりました。PlayStation4の販売台数自体は減少しており、ハードウェア面では減収です。しかし、VR(仮想現実)技術なども活用しながらラインナップを充実させたことでユーザーの心をつかみ、ゲームソフトの売れ行きは好調。PSNも2019年3月末時点で月間アクティブユーザー数は9400万超となっています。なおPSNでは、特別コンテンツで遊んだり割引優遇が受けられたりする「PlayStation Plus」、オンラインストア、ダウンロードせずにゲームを楽しめるストリーミングサービス、動画・音楽関連のサービス等を提供しています。有料会員サービスであるPlayStation Plusの加入者数が増加したことで、業績拡大に貢献しました。
次に半導体事業は、イメージセンサーが好調です。2018年度の売上高は3%増加し、8793億円に。そのうち、イメージセンサーでの売上高は7000億円を超えています。イメージセンサーはデジタルカメラ、スマートフォン、PC、自動車、医療機器などさまざまなものに搭載されますが、昨今はイメージセンサーを多数搭載する高性能スマートフォンの生産が増加しており、ソニーにとっては追い風になりました。
ソニーの財務状況をもっとお知りになりたい方はこちらをお読みください。
ソニーの事業戦略~今後の展開は
PlayStation4は2019年度に累計販売台数1億台を突破する見込みで、2020年以降には次世代機を発売予定です。「イマーシブ(没入感)」と「シームレス(いつでも、どこでも切れ目なく)」をテーマに、ますますPlayStation関連事業を強化。また、音楽や映画などの映像分野でも定額ストリーミングサービスが急速に普及しているなか、それぞれの関連事業をもつソニーでは多くの強みがあります。それらをいかして収益の増大を目指しています。
好調が続く半導体事業のイメージセンサーに関しては、イメージング分野(カメラ機能)では既に世界No.1のシェア。それを維持しながら、車載などのセンシング分野(計測・数値化)でも世界トップシェアを目標としています。
また、ソニーは2019年5月に、クラウドサービスやAI(人工知能)、半導体等の分野で米マイクロソフト社との共同開発の検討を始めることを発表しました。特にゲーム分野では「競合」だったため話題となりましたが、協業することで世界のライバルと戦っていく構えです。
ソニーの年収~報酬はどれぐらいか
キャリコネに寄せられた給与明細から算出したソニーの年代別年収レンジは、20歳代で640〜740万円、30歳代で850〜950万円、40歳代で1070〜1170万円となっています。
ソニーでは、2015年から年功序列の要素を一切排除した新給与体系「ジョブグレード制度」を導入しました。専門性の高い「プロフェッショナル」としての役割を担うI(インディビジュアルコントリビューター等級群)と、管理職的役割を担うM(マネジメント等級群)のふたつに社員を分け、担当している役割に応じてグレードが決まり、給与も連動します。
社員の4割を超えていた管理職の半数が格下げされた。
とあるように大改革が行われため、社内でも衝撃が走りました。
しかし、降格になった人も多い一方で、若手社員や管理職ではない高度な技術力・専門性を持つ社員の給与アップが望めるようになっています。また、飛び級すれば給与が一気に跳ね上がるチャンスも。年齢を重ねただけでは給与は上がりませんが、実力のある社員にとっては高収入が期待できそうです。高評価の社員には自ら部署を選択できる「社内フリーエージェント(FA)権」が付与されるなど、成果を出せば目に見えるかたちで評価されるため、やりがいを持って仕事に取り組める環境といえるでしょう。
■ITエンジニアの年収実態(30代/男性/プログラマ)
年収口コミ
若い人であれば、実力があればすぐに800万円程度はいくと…(続きを見る)
具体的な年収額をお知りになりたい場合は、キャリコネの給与明細投稿をご覧ください。
ソニー社員の給与明細(キャリコネ)
同じ20代でも営業と管理部門で大きな差
20代営業(非管理職)の 給与明細
20代管理部門(非管理職)の 給与明細
同じ技術職でも年代で200万円以上の差
30代技術(非管理職)の 給与明細
40代技術(非管理職)の 給与明細
ソニーの年収について詳しく解説した記事も合わせてお読みください
ソニーの働く環境~働きやすさはどうか
ソニーの口コミには働く環境について様々な意見が届いています。その中でも特徴的な点を3つ挙げます。
自ら留学先やテーマを考える公募留学制度も
まずは人材育成制度についてみていきましょう。ソニーではグローバルに活躍できる人材を育成すべく、さまざまな制度を整えています。
私費留学のために休職できる制度(フレキシブルキャリア休職制度)があるほか、社費での留学希望者を10名程度公募する「公募留学制度」も。一定の条件を満たした社員は、上司から推薦を得たうえで社内選考に合格すれば、1年間留学できるという流れです。留学先や学習テーマ、学んだことを帰国後の業務にどういかすかなどの目的をしっかりと考えておく必要があります。
採用サイトによると、
主な留学先はカーネギーメロン大学、スタンフォード大学、スイス連邦工科大学等です。
とのこと。
異文化のなかで最先端技術や専門知識を学ぶことができ、口コミでもこの制度を評価する声が複数みられました。また、留学中は勉強に専念できる環境が用意されているようです。2019年時点ですでに計400名超を送り出しています。
男性社員の育休取得率も5割超 充実した両立支援制度
2点目として、ソニーでは柔軟な働き方ができる環境が整っています。
家庭と仕事の両立支援策として法定以上の取り組みを行っており、例えば以下のような制度があります。
・育児休職期間中に月額5万円が支給される「育児支援金制度」
・全社員を対象に、在宅・サテライトオフィスなどで勤務可能な「フレキシブルワーク制度」
・求職中もキャリア形成が可能になる「休職キャリアプラス」
これらは一部であり、他にも数多くあります。
ちなみにソニーでは、男性社員も両立支援制度を積極的に活用。男性の育休取得率は50%を超え、厚生労働省実施の「イクメン企業アワード2017 グランプリ」も受賞しました。また、前述のフレキシブルキャリア休職制度は、配偶者の赴任同行の際も利用可能です。配偶者の転勤によって退職せざるを得ない……といった事態も避けられます。
口コミでも、男女の差別なく働きやすいという声が多くみられました。
社内交流の場にもなっている社員食堂
3つ目として、充実した社内環境を紹介します。
ソニーの本社は港区の品川駅そばにあり、新規事業について議論するために社外の人も含めて利用できるオープンスペースや、ユニークなミーティング・休憩スペース、カフェや社員食堂などが整備されています。社員が新しいアイデアを生み出しやすく、健康を保ちやすい環境です。
社員食堂はサッカーコートほどの広さがあり、2015年に大幅にリニューアル。ワンフロアにブュッフェコーナーやサラダコーナー、ベーカリーカフェ、おにぎり専門店などがあります。グローバル企業らしく、和洋中の各種メニューが用意されており、ベジタリアンメニューも。また、女子栄養大学監修のメニューも毎日食べることができます。食堂の奥にあるリラックスゾーンでは、個人の作業スペースや社内交流の場としても活用されています。
■マーケティングのワーク・ライフバランスの実態(50代/男性/調査・分析)
ワーク・ライフバランス口コミ
周囲をみていると、労働時間を短くしたり、在宅で週に数回の勤務から開始するなど…(続きを見る)
ソニーの職種~どんな職種があるのか
では、ソニーが中途採用で募集している職種についてもチェックしてみましょう。
2019年7月時点では、最も募集職種数が多いのは半導体事業です。世界最先端のイメージセンサーを開発している部門だけに会社も力を入れており、エンジニアから営業、経営戦略など幅広く募集中。その他にも、カメラ/放送用機器事業、テレビ事業、モバイル事業なども20以上の募集職種があり、いずれも技術職は多岐に渡るポジションが用意されています。
なお、グローバル企業だけあって、ソニーへ転職する際にはやはり「英語力」が条件に入ってくる点には留意が必要です。しかし、例えば次世代電動モビリティ研究開発エンジニアに求められる語学力は
TOEIC600点以上、または現在TOEIC500点以上だが入社後にTOEIC600点以上のスコアに挑戦できる方
となっており、入社時点ではあまり英語に自信がなくても、入社後の成長可能性を考慮してくれることもあるようです。
ソニーの採用試験~面接に合格する方法は
ソニーの経験者採用の選考プロセスは、エントリー後に書類選考があり、職場との1次面接、人事との2次面接・適性検査を経て、内定という流れが基本になっています。適性検査(SPI)の対策はしっかりしておくといいでしょう。
スピードが要求されるので初めてだと太刀打ちできないでしょう
という口コミもあります。
面接では、志望動機、自分の強みや弱み、自己PRなど一般的な内容を聞かれることが多いようです。
自らの研究内容について、ホワイトボードを使って説明した
急に英語で質問された
といった口コミもありますので、本番で慌てることのないよう、専門分野についての説明や英語での質疑応答も念頭に置いて臨みましょう。
■39歳男性/マーケティング【結果:入社】
ソニーの面接時の雰囲気や質問内容をまとめた記事もお読みください。
最後に~ソニーを転職先としておすすめする理由
ここまでソニーについて詳しくみてきましたが、転職先としておすすめしたい理由は以下の3点です。
・リカーリングビジネスが売上の4割を占めている安定性
・役割に応じて報酬が決まり、若手にもチャンスが豊富な環境
・グローバル企業ならではの充実した育成制度
ソニーはかつて赤字で苦しみましたが、継続的な収益が見込めるリカーリングビジネスに重きを置くようになったこともあって、安定的に収益を生み出せるようになりました。また、年功序列が廃止されており、任される役割に応じて報酬が決まります。公募留学制度などを利用すれば、海外で人脈を広げ、高度な専門知識を身に付けるチャンスも豊富。やりがいは十分です。グローバル企業で自身のキャリアを磨きたい人は、ぜひチャレンジしてみましょう。