1912年、早川電機として誕生し、シャープペンシル、ターンテーブル式電子レンジ、電卓の発明、高品質液晶テレビの開発など、日本の家電業界の歴史の一端をになってきたシャープ。
経営難に陥っていた2016年には台湾・鴻海精密工業の参加に入り再建を図り、2017年に東証一部に返り咲きを果たす。2020年11月にはNTTドコモ上場廃止により空きが出る日経平均株価の構成銘柄に採用されるにまでなりました。
紆余曲折あったシャープですが、社員の年収はどれくらいなのかを探っていきます。
シャープの平均年収は736.9万円
まずはじめにシャープの平均年収を見ていきましょう。シャープの平均年収は736.9万円です(シャープ有価証券報告書)。キャリコネに投稿された給与明細を参考にシャープの年代別年収レンジを算出したところ、20歳代で390〜440万円、30歳代で550〜600万円、40歳代で680〜730万円という結果がでました。正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)で、比較して約1.49倍の額です。
■シャープの平均年収推移
決算月 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数 |
---|---|---|---|---|
2022年3月期 | 736.9万円 | 45.5歳 | 22.7年 | 5674人 |
2021年3月期 | 743.2万円 | 45.7歳 | 23.1年 | 6419人 |
2020年3月期 | 737.3万円 | 44.9歳 | 22.8年 | 10862人 |
2019年3月期 | 759万円 | 44.6歳 | 22.7年 | 12518人 |
2018年3月期 | 754万円 | 44.6歳 | 22.8年 | 13261人 |
出典:シャープ・有価証券報告書
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
シャープの平均年収は前年を下回り736.9万円でした。
過去5年間では最低の額になりました。
シャープの年代別平均年収と中央値
■シャープの年収中央値は30代で566.1万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
年代 | 平均年収 | 平均月収 | 平均ボーナス | 年収中央値 |
---|---|---|---|---|
20代 | 409.7万円 | 26.6万円 | 76.2万円 | 368.73万円 |
30代 | 566.1万円 | 36.2万円 | 105.4万円 | 509.49万円 |
40代 | 703.4万円 | 44.7万円 | 131万円 | 633.06万円 |
50代 | 831.6万円 | 52.6万円 | 154.9万円 | 748.44万円 |
※キャリコネの口コミ、有価証券報告書、厚労省・経産省・国税庁発表の調査資料を元に、編集部で独自に算出
シャープの年収が高い理由
■賞与は部門と個人の評価によって、1~8ヶ月分!
シャープの年収の高さを実現しているのは、ユニークな賞与制度があるからと言えます。
かつては業績連動型で支給月数が決まっていましたが、現在の制度においては、所属する部門の業績と個々人の成果によって、支給月数が1~8ヶ月分というレンジの中で決定されます。また、支給回数についても、2019年8月に、2回(6・12月)から3回(4・6・12月)に変更されました。この狙いは、①業績をタイムリーに賞与へ反映すること、②社員が業績により関心を持つこと、③部門に対する社員の帰属意識の強化、の3点です。
1~8ヶ月分とはいっても、実際は、「極端に高い・低い、という人は聞いたことがない」「良くても5ヶ月分」との声が多く見られ、「平均4ヶ月分」のようです。また2019年夏賞与においては米中貿易摩擦による業績悪化のため、賞与自体は減額され、自社商品の購入が可能なクーポンを支給する、という事態も起こりました。業績次第で大きく変動する要素ではあるものの、一人ひとりの成果が賞与に直結する仕組みが、社員の成長を後押しするとともに、シャープの高い年収を実現していることは間違いありません。
シャープの給与体系・内訳
■役割と成果が給与に反映
シャープの給与体系は、基本給と時間外手当からなる月給と、賞与で構成されています。上述の通り、賞与は2019年8月に、支給回数が2回(6月・12月)から3回(4月が追加)に変更されました。
2016年の構造改革の結果、賃金制度は「役割等級制度」が導入され、各自の役割=業務のランクと、その成果によって月給の金額が決まります。例えば、ランク1は25~30万円/月、ランク2は27~32万円/月というレンジで設定されており、つまり、ランク1で好成績をとれば、ランク2の低成績の人より処遇がよくなるという仕組みです。この制度が導入される前は、いわゆる年功序列で昇進・昇級していく仕組みでしたが、成果主義へ大きく舵を切ったようです。
手当の類は時間外手当以外にはほぼ何も支給されませんが、住宅に関する補助は充実。寮社宅が完備されていることはもちろん、借り上げ社宅を利用する場合は家賃の60~70%程度が会社負担、という充実ぶりです。
シャープ社員の給与明細(キャリコネ)
入社10年で年収は2倍に!
20代技術(非管理職)の 給与明細
20代技術(非管理職)の 給与明細
賞与は業績や評価によって大きく変動
30代(非管理職)の 給与明細
30代(非管理職)の 給与明細
シャープの職種別年収
■職種による違いはなし
シャープの職種は、「技術系」と「ビジネス系」の大きく2つに分類されます。「技術系」は、研究開発・設計、生産技術など、「ビジネス系」は法務、経理、営業などの職場で活躍します。
賃金制度は両職種において同一の制度(役割等級制度)が適用されており、役割に応じて賃金レンジが決められているため、職種によって処遇が異なるということはありません。
また、初任給についても職種による違いはなく、以下の通り、学歴別に設定されています。
<初任給(2019年度実績)>
●修士了:243,000円
●大学卒、高専 (専攻科) 卒: 218,500円
●高専 (本科) 卒 :191,500円
年代・役職別の年収目安としては、新入社員:350~400万円、主事:500~600万円、課長職:800万円、部長職1000~1200万円といったあたりです。
シャープ社員の給与明細(キャリコネ)
若手の間は評価は横並びか?
20代営業(非管理職)の 給与明細
20代管理部門(非管理職)の 給与明細
職種が違えど同年齢なら基本給は同じ
30代技術(非管理職)の 給与明細
30代広告宣伝(非管理職)の 給与明細
シャープで年収を上げる方法
■年功序列は崩れ、成果主義へ
前述の通り、シャープの賃金制度は「役割等級制度」が導入されているため、年収を上げるには、等級を上げる=昇格・昇級することが必要です。
評価は、「業績評価制度」と呼ばれる制度が運用されており、期初に設定した業務目標について、取り組みプロセスや達成度合いに基づいて評価が決定されます。「達成できたら100%、できなければ減点されていく」という減点方式であり、この結果が給与に反映されます。一方賞与については、前述のとおり、部門業績と個人業績の2つの要素で支給月数が決められます。
こうした成果主義に基づいた制度が運用され始めたことによって、「年功序列が崩れた」「若手を早期に管理職登用する傾向が色濃くなっている」という声が多くみられ、同時に「50歳代の大半の係長が主任に格下げされている」という現象も。とはいえ社員にとってはネガティブな印象はなく、「業績悪化後のポジティブな一面」と前向きにとらえられているようです。
シャープ社員の口コミ(キャリコネ)
評価は目標に対する達成度とプロセスで決定
「半期ごとに業績評価シートを作成して、目標と達成度を上長と確認 担当者はプロセス重視で、役職が上がると成果重視……」
賞与は評価によって1~8ヶ月分というレンジで決まる
「部門業績と個人業績の2つを加味して、査定が決まる 賞与は1~8ヶ月という制度だが、極端に高いor低い、という人は……」
シャープと競合他社の平均年収を比較
シャープの競合や同業界であるソニーグループ、日立製作所、東芝、日本電気、パナソニック、三菱電機の7社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、シャープが736.9万円、ソニーグループが1084.5万円、日立製作所が896.9万円、東芝が892.3万円、日本電気が814.4万円、パナソニックが758.6万円、三菱電機が806.7万円です。
この7社の中で最高額はソニーグループの1084.5万円で、最低額がシャープの736.9万円。その差はおよそ348万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中ではシャープは7番目に位置します。
社名 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数(単体) | 売上高 |
---|---|---|---|---|---|
ソニーグループ | 1084.5万円 | 42.6歳 | 16.7年 | 2839人 | 4062.47億円 |
日立製作所 | 896.9万円 | 42.7歳 | 19.3年 | 29485人 | 1623424億円 |
東芝 | 892.3万円 | 45.6歳 | 19.2年 | 3673人 | 864.42億円 |
日本電気 | 814.4万円 | 43.6歳 | 18.5年 | 21350人 | 16644.34億円 |
三菱電機 | 806.7万円 | 41.1歳 | 16.9年 | 36700人 | 25574.36億円 |
パナソニック | 758.6万円 | 45.7歳 | 22.5年 | 55088人 | 27559.67億円 |
シャープ | 736.9万円 | 45.5歳 | 22.7年 | 5674人 | 5630.3億円 |
シャープの競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」
東京大学卒業後、大手自動車メーカー入社。人事部門に配属。女性の働き方プロジェクトリーダーを担当。