成果を出しても「上司が認識できない」
パナソニックは2019年5月に発表した「新中期戦略」の中で、事業ポートフォリオを見直し、「基幹事業」「再挑戦事業」「共創事業」の3つに分けてマネジメントするとしています。
この理由について会社は、これまでは「原則、自社リソース中心の成長戦略」を推進してきましたが、今後は「自社リソースにこだわらず、他社協業等」を通じて事業の競争力を図るとしています。
この方向性を考えると、従業員についても「新卒生え抜き至上主義」ではなく、経営・事業課題の解決に必要な外部人材を積極的に中途採用する必要があるでしょう。人材の評価も新たな基準で行う必要があるかもしれません。
このような方向転換はうまくいくのでしょうか。企業口コミサイト「キャリコネ」には、現役社員・OBOGからの書き込みが寄せられています。30代のソフトウェア職の男性は、中途採用で入社。転職後のギャップについて次のように明かしています。
挑戦的なイメージがありましたが、かなり保守的です。難しい業務で成果を出しても、その難しさを認識できない上司が多いため、評価にはつながりません。20代、30代の社員や、キャリア入社で優秀な人が多いと感じましたが、昭和のような雰囲気があり、新しいことにチャレンジする人はあまりいません(2018.10.5)
パナソニックといえば、前身の松下電器産業以来、高度経済成長期に発展した典型的な日本企業のひとつ。バブル期に入社した人たちは50代でいまも数多く在籍しており、時代の変化に適応できていない上司もいるのかもしれません。
「異動」「転勤」の多さに退職する人も
パナソニックでは、どんな人が出世するのでしょうか。前出のソフトウェア職の男性は、次のように説明します。
仕事ができるからといって、出世できる訳ではありません。昇級試験でプレゼン資料がきちんと作れて、発表が上手くできれば昇進します(2018.10.5)
前出の口コミでも、成果を正しく評価できない上司の存在に言及されていました。プレーヤーとマネージャーに必要な能力は異なるのは当然ですが、仕事そのものより「プレゼンがうまい人」が出世しやすいとなると、ちょっと心もとない感じがします。
また、キャリコネには「異動」「転勤」に関する口コミが目に付きます。研究開発部門で働いていた20代の男性社員は、異動を理由に退職しています。
若手育成のためとはいえ、異動が多い。最初に配属された部署が最もやりたいことであったにもかかわらず、そこからどんどん離れて行ってしまった。もちろん自分の努力、実力不足もあったが、気づいた時には時すでに遅し(2017.11.22)
購買を担当していた40代男性も「毎年のように行われる組織の変更についていけなかった。受け入れることが出来なかった」と退職しています。
大企業の異動は、ときに転職に相当するほどの変化を伴うことも。やや古い口コミですが、こういった慣行がいまも残っていると転職志望者には受け入れられにくいかもしれません。
本体の状況が悪いのにそれを認めず、各地にある事業を吸収、分解。本体は痛みを伴わず、それを地方事業部に背負わせ、最終的には社員をあらゆる所へ転勤させる。転勤の名のもとの転職で当事者に掛かる心身への負担は莫大(2017.10.29)
ホワイト度は「5点満点の3.6点」だが
いろいろな問題はあるものの、入ってしまえば大多数の社員には安心と安定が保証されるのが日本の大企業。経営企画部門に所属する20代の男性社員は、自社の労働環境について「非常に恵まれた環境」と評します。
制度を熟知していれば、様々なライフステージで会社がバックアップしてくれるため、非常に働きやすい環境であると思う。出産や育児を理由に退社していく人材は、あまり見たことはなかった(2019.9.10)
マーケティング部門で働く20代女性も「福利厚生は非常に良い」と大満足です。
毎年12万円ほどの福利厚生ポイントが付与され、旅行などに使える。家賃補助は、転勤があればかなりの金額補助してもらえる(2019.8.4)
「キャリコネ」には業界平均との比較をしながら、会社の「ホワイト度」を測るコーナーがあります。パナソニックのホワイト度は5点満点の3.6点で、電気機器業界平均の2.8%を大きく上回っています。
パナソニック株式会社(Panasonic)のホワイト度・ブラック度チェック | 転職・就職に役立つ情報サイト キャリコネ
https://careerconnection.jp/review/7657/whiteblack/パナソニック株式会社のホワイト・ブラック度診断を掲載しています。労働時間の満足度が3.4、仕事のやりがいが3.3、ストレス度の低さが3.2、休日数の満足度が3.8、給与の満足度が3.5、ホワイト度が3.6
会社が大きな転換期を迎える中で、こういった居心地の良さが社員に危機感を抱かせていないとすると、ホワイト度が高いのも良し悪しのような気もしてきます。