伊藤忠商事は三菱商事や三井物産、住友商事、丸紅とならんで5大商社のひとつに挙げられる、日本を代表する総合商社です。戦前は伊藤忠財閥を形成する中核企業でしたが、現在はみずほグループに属しています。
アメリカの著名な投資家、ウォレン・バフェット氏が2020年8月30日に伊藤忠商事を含む5大商社株を購入したことも記憶に新しい。
商社と言えば高給であるイメージがありますが、伊藤忠商事の年収はいったいどれくらい高いのか、その理由は、など様々な角度で探っていきましょう。
伊藤忠商事の平均年収は1579.7万円
まずはじめに伊藤忠商事の平均年収を見ていきましょう。伊藤忠商事の平均年収は1579.7万円です(伊藤忠商事有価証券報告書)。キャリコネに投稿された給与明細を参考に伊藤忠商事の年代別年収レンジを算出したところ、20歳代で930〜980万円、30歳代で1300〜1350万円、40歳代で1650〜1700万円という結果がでました。男女あわせた民間の正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)ですから、それと比較しておよそ3.19倍の額です。
■伊藤忠商事の平均年収推移
決算月 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数 |
---|---|---|---|---|
2022年3月期 | 1579.7万円 | 42.2歳 | 18.2年 | 4170人 |
2021年3月期 | 1627.8万円 | 42歳 | 17.9年 | 4215人 |
2020年3月期 | 1565.8万円 | 41.9歳 | 17.1年 | 4261人 |
2019年3月期 | 1520.8万円 | 41.7歳 | 17.5年 | 4285人 |
2018年3月期 | 1460.9万円 | 41.6歳 | 17.3年 | 4285人 |
出典:伊藤忠商事・有価証券報告書
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
伊藤忠商事の平均年収は前年を下回り1579.7万円でした。
過去5年間では2番目に高い額になりました。
伊藤忠商事の年代別平均年収と中央値
■伊藤忠商事の年収中央値は30代で1318.2万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
年代 | 平均月収 | 平均ボーナス | 年収中央値 |
---|---|---|---|
20代 | 63.7万円 | 152.9万円 | 779.7万円 |
30代 | 89.3万円 | 214.4万円 | 1093.5万円 |
40代 | 113.2万円 | 271.8万円 | 1386.3万円 |
50代 | 130.8万円 | 314.1万円 | 1601.8万円 |
※キャリコネの口コミ、有価証券報告書、厚労省・経産省・国税庁発表の調査資料を元に、編集部で独自に算出
伊藤忠商事と競合他社の平均年収を比較
伊藤忠商事の競合や同業界である双日、三菱商事、豊田通商、丸紅、住友商事、三井物産の7社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、伊藤忠商事が1579.7万円、双日が1038.2万円、三菱商事が1558.8万円、豊田通商が1114.1万円、丸紅が1469.2万円、住友商事が1406.3万円、三井物産が1549.1万円です。
この7社の中で最高額は伊藤忠商事の1579.7万円で、最低額が双日の1038.2万円。その差はおよそ542万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中では伊藤忠商事は1番目に位置します。
社名 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数(単体) | 売上高 |
---|---|---|---|---|---|
伊藤忠商事 | 1579.7万円 | 42.2歳 | 18.2年 | 4170人 | 33172.88億円 |
三菱商事 | 1558.8万円 | 42.8歳 | 18.5年 | 5571人 | 20173.1億円 |
三井物産 | 1549.1万円 | 42.1歳 | 18.2年 | 5495人 | 40535.87億円 |
丸紅 | 1469.2万円 | 42.3歳 | 17.6年 | 4379人 | 17556.53億円 |
住友商事 | 1406.3万円 | 43.1歳 | 18.5年 | 5150人 | 5184.95億円 |
豊田通商 | 1114.1万円 | 42.8歳 | 17.1年 | 2648人 | 15140.45億円 |
双日 | 1038.2万円 | 41.8歳 | 15.4年 | 2558人 | 6782.62億円 |
伊藤忠商事の競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください
伊藤忠商事の年収が高い理由
■純利益は単体で2864億円
まず収益と利益額が大きいことが挙げられます。
伊藤忠商事の2019年3月期の連結決算発表(IFRS)によると、収益は11兆6004億8500万円で、当期純利益は5456億8900万円でした。
単体で見ても、売上高は4兆9830億5100万円で、人件費を含む諸経費を抜いた純利益は2864億7900万円にも上ります。
伊藤忠商事は、三菱商事や三井物産などの5大商社の中では従業員数がもっとも少なく、2019年3月末現在で4285人です。営業利益をその従業員数で割ると一人あたり6685万円もの利益を出していることになり、他の大手商社と比べても極めて高い数値となっています。
また高い利益を昇給やボーナスとして社員に還元する仕組みが出来上がっていることが、高い年収であるもう一つの理由です。その年の業績にもよりますが、ボーナスは年間の基本給と同程度にも達します。
さらに住宅手当や出張手当、海外赴任手当などの「手当」が手厚いことも、平均年収を引き上げている大きな要因です。
伊藤忠商事社員の給与明細(キャリコネ)
20代ですでに大台にのり、30代でさらに〇〇〇万アップ!!
20代・海外営業(非管理職)の 給与明細
30代・海外営業(非管理職)の 給与明細
ボーナスの有無で、3倍もの差が!?
20代・営業管理・賞与なし(非管理職)の 給与明細
20代・営業管理・賞与あり(非管理職)の 給与明細
伊藤忠商事で働く上での課題・懸念点は
■商社勤務の宿命"激務"
伊藤忠商事に限らず商社全体に言えることですが、何と言っても「激務」であることが挙げられます。
残業が深夜にまで及ぶことは珍しくなく、休日出勤も恒常化しているため、これらの残業代の積み重ねも高年収である一つの理由です。
また国内、海外を問わず出張も頻繁にあります。世界を股にかけるダイナミックな仕事にやりがいがあることも確かですが、場合によってはテロ多発地域や山奥などの危険な場所へも行かなければいけません。
さらに「企業の安定性」でも、一点注意しておかなければなりません。
商社は「モノを右から左に動かすだけの仕事」で、利益率が非常に高いというイメージがありますが、実は「薄利多売」であることが多いです。総合商社はモノを大量に動かすことによって、「スケールメリット」で利益を得ています。そのため一つの事業がうまくいかなかった場合、業績への影響が非常に大きくなってしまうことが懸念材料と言えます。
結局伊藤忠商事は就職・転職先として選んでもいいのか
伊藤忠商事は他の総合商社と異なり、非資源系である食品の割合が大きいため、資源需要に左右されにくい体質であることが強みです。実際に2016年3月期決算では、他社が資源系の落ち込みで著しく業績が悪化したのを尻目に、伊藤忠商事は見事トップの純利益を上げています。
2018年3月期の連結最終利益も過去最高を更新し、いまだに右肩上がりの成長を続けていることも心強いところです。さらに中国市場でのビジネスにも強く、今後も成長が期待できます。
また「朝型勤務」や「残業抑制」など、働き方改革に力を入れているのも注目です。
そして資源や食品、インフラなど人の役に立つものを動かしているというやりがいがあります。
ここまで伊藤忠商事を見てきました。結局「就職・転職先として選んでもいいのか」なんですが、
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」
転職系アフィリエイトサイト・転職エージェントサイトらによる剽窃・模倣を禁止します。 もし剽窃・模倣を発見された方は「お問い合わせ」よりお知らせください。