不適切な販売認めた日本郵政グループ 「新人が1年以内に半分辞める」職場も

不適切な販売認めた日本郵政グループ 「新人が1年以内に半分辞める」職場も

日本郵政は6月24日、傘下のかんぽ生命保険とゆうちょ銀行が、不適切な販売を繰り返していたことを明らかにしました。かんぽ生命では、保険料が従来よりも高くなるなど顧客の利益にならないような乗り換え契約を複数締結。ゆうちょ銀行では高齢者に健康状態や商品の理解度を確認しないまま、投資信託を販売していたようです。


かんぽ生命の業績悪化止まらず

日本郵政グループの不正販売や自爆営業の問題については、以前からネットで話題になっていましたが、NHK総合「クローズアップ現代+」が昨年4月に「郵便局が保険を"押し売り"!?」と題して現役郵便局員の声を取り上げ、大きな反響を集めました。

番組内では、日本郵政の常務が「加重ノルマ」の存在を否定しました。しかし今回の社長会見では、ノルマの問題を含めて「原因の根本」をきちんと調べたいと回答しています。これがきちんと着手されれば、問題解決に一歩前進することが期待されます。

不正の背景には、日本郵政グループ全体の業績不振がありそうです。

日本郵政グループは、2017年3月期に最終赤字となりました。翌期からは当期純利益は回復基調にあるものの、経常収益(売上高)の右肩下がりが継続。日本郵便が右肩上がりの中、ゆうちょ銀行が横ばい、かんぽ生命は一貫して減少しています。

かんぽ生命の経常利益は、2016年3月期には全体(連結処理調整前)の44.0%を占めていましたが、2019年3月期には32.4%にまで減少しています。

この目減り分を取り戻すために、必要な数字を本社が支社に機械的に割り振り、支社がブロックごとに振り分け、それが各郵便局や各社員に割り当てられているのでしょう。そこには市場性も顧客の視点もなく、あるのは会社の都合だけです。

「自爆営業」に追い込まれて退職する人も

企業口コミサイト「キャリコネ」には、2011年ころから日本郵便の現役社員・OBOGからの書き込みが急増しており、現在は1000件を超える情報が集まっています。

郵便局勤めといえば、来訪するお客様のために郵便や貯金の事務的な手続きをするイメージがありますが、実際には窓口にも重い「販売ノルマ」を課せられています。ノルマ達成のプレッシャーがきつく、耐えられずに退職する人も少なくないようです。

「郵便局の窓口でしたが、数字達成をガンガン言われるのが嫌で退職しました。来店した人に保険を売るのはなかなか厳しい。でも基本給が低いので、保険を売ってインセンティブをたくさんもらわないと生活できません」(2017.12.13)

「貯金商品も保険商品もグループ会社の商品なので、営業して手数料を稼ぐしかない。いつも来る年配の人に同じ毎回営業の話をしないといけません。あまりにも想像と違いすぎて、新人など1年以内に辞めていく人が半分ぐらいいます」(2017.9.3)

前述の番組でも、前年度実績の1.5倍から2倍もの目標が設定されていることが内部文書で裏付けられています。ある30代の男性は「近年、保険のノルマが上がってきており、精神的に持たなくなった」と退職を決めました。

「(職場には)伝統的に自爆営業を推進する土壌があり、はがきなら金券ショップに持ち込めばいいとし、保険にまでそれを求めようとする。保険だけでなく、ふるさとゆうパックや年賀はがきなど魅力の薄い商品を薦めなくてはいけない罪悪感に耐えられなかった」(2016.4.15)

「罪悪感を抱かず売れる人に向いた仕事」

重いノルマはカウンターだけではありません。ルートセールスで顧客を訪問する20代の男性は、自社の商品について「主観ではあるが加入いただくうえでメリットは少ない」「最近は保険料が高く基本的に損する商品」と厳しく評し、自分の仕事を自虐的に語っています。

「半分ギャンブルみたいな商品なので、罪悪感を抱かずに高齢者に売る自信がある人は向いている。しかしそのような商品なのでクレームも多い。入社しようと考えている方は商品を調べ、今後ニーズがあるかをよく考えた方がよい」(2018.1.29)

コンサルティング営業の40代男性も「保険の業務上、一日に一本の契約もないと詰められる。これが何日も続くと地獄と化します」と明かす。

「パワハラ指導を避けるため、先輩社員と一緒に営業に行き、数字を分けてもらう。代償は飲み会で酒を振舞うこと。お酒が飲めないと、とにかく辛い(2017.4.28)

市場性を無視して、会社都合の「必要な収益の確保」を最優先する限り、顧客視点との食い違いが消えることはありません。達成を現場に無理強いすれば、不正が起こりやすくなるのは当然です。経営者は不正の原因を、現場だけに押し付けないで欲しいものです。

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